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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

複数人によるダブルチェックでは「1人1人の責任感が希薄になる」点に留意!「確認」とは「原本との照合」である!―医療機能評価機構

2023.3.29.(水)

昨年(2022年)10-12月に報告された医療事故は1159件、ヒヤリ・ハット事例は7028件であった。医療事故のうち8.6%では患者が死亡しており、8.9%では死亡にこそ至らないまでも「障害残存」の可能性が高い—。

こういった状況が、日本医療機能評価機構が3月27日に公表した「医療事故情報収集等事業」の第72回報告書(昨年(2022年)10-12月が対象)から明らかになりました(機構のサイトはこちら)(前四半期(2022年7-9月)を対象にした第71回報告書に関する記事はこちら)。

また報告書では「ダブルチェックに関連した事例」を取り上げて詳しく分析。複数人によるダブルチェックでは「1人1人の責任感が希薄になる」点、ダブルチェック・複数人チェックにおいても「確認」とは「原本との照合」を意味する点等に留意が必要と訴えています。

2022年10-12月、「療養上の世話」に関する医療事故が最多に

昨年(2022年)10-12月に報告された医療事故は1159件でした。今夏には、新型コロナウイルス感染症の影響により「低めの件数」となっています。

事故の程度別に見ると、▼死亡:100件・事故事例の8.6%(前四半期に比べて1.0ポイント増)▼障害残存の可能性が高い:103件・同8.9%(同2.2ポイント減)▼障害残存の可能性が低い:313件・同27.0%(同0.5ポイント減)▼障害残存の可能性なし:340件・同29.3%(同0.9ポイント減)―などとなりました。前四半期に比べて死亡事故が増加していますが、「中長期的に動向を見ていく」必要があります。

医療事故の概要を見ると、最も多いのは「療養上の世話」の377件・32.5%(前四半期に比べて0.7ポイント増)。次いで、「治療・処置」の358件・30.9%(同4.9ポイント減)。「薬剤」82件・同7.1%(同1.1ポイント増)、「ドレーン・チューブ」74件・同6.4%(同2.1ポイント減)などと続きます。項目の順位・シェアが大きく変動しており、コロナ禍での医療現場の混乱状況が伺えます。今後も中長期的に動向を見守る必要があります。

医療事故の状況(2022.10-12、医療事故情報収集等事業・第72回報告書1 230327)

ヒヤリ・ハット事例、依然として「様々な場面で発生している」点に留意を

ヒヤリ・ハット事例に目を移すと、昨年(2022年)10-12月の報告件数は7028件。内訳を見ると、依然として「薬剤」関連の事例が最も多く2807件・ヒヤリ・ハット事例全体の39.9%(前四半期と比べて0.9ポイント増)を占めています。次いで「療養上の世話」1602件・同22.8%(同4.9ポイント増)、「ドレーン・チューブ」899件・同12.8%(同0.2ポイント減)などと続いています。医療事故に比べてシェアや順位の変化などが小さい、という点は従前と同様です。

ヒヤリ・ハット事例のうち、医療機関での実施がなかった4074件について、「仮に実施してしまっていた場合の患者への影響度」を見ると、「軽微な処置・治療が必要、もしくは処置・治療が不要と考えられる」事例が87.8%(前四半期から6.0ポイント減)と、ほとんどを占めている状況にも変化はありません。

しかし、「濃厚な処置・治療が必要と考えられる」ケースも11.1%(同5.8ポイント増)、さらに「死亡・重篤な状況に至ったと考えられる」ケースも1.1%(同0.2ポイント増)あります。一部にとどまってはいますが、「一歩間違えば重大な影響が出ていた」事例が生じ、またその割合が増加している点を重く見て、「すべての医療機関において院内のチェック体制を早急に点検しなおす」必要があります。

ヒヤリ・ハット事例の状況(2022.10-12、医療事故情報収集等事業・第72回報告書2 230327)



なお、その際には、Gem Medで繰り返しお伝えしているように「個人の注意だけで医療事故やヒヤリ・ハット事例を防止することはできない」点に留意しなければなりません。どれだけ注意深く業務を行っても、人は必ずミスを犯します。とりわけ、極めて多忙な業務環境にある医療従事者はミスが生じやすい状況に置かれており、こうした中では、「ペナルティの導入」などには意味がなく(効果がない)、かえって弊害のほうが大きくなると危機管理の専門家は指摘します。

「人はミスを必ず犯す」という前提に立ち、「必ず複数人でチェックする」「ミスが生じる前に、あるいは生じた場合には、すぐに気付ける仕組みを構築する」「また包み隠さず報告できるような、院内のルールを遵守し、医療安全を確保し、医療の質を向上させようという、風土を作り上げる」など、医療機関全体で対策を講じることが必要です。

ただし、「複数人でのチェック」には大きな落とし穴がある点にも留意が必要です。A・Bの2人でチェックをする際に、Aさんは「Bさんがチェックをするので『だいたい』で良かろう」と、Bさんは「Aさんがチェックをしているので『だいたい』で良かろう」と考えてしまうことが少なからずあります。この場合には「1人でのチェック」よりも甘くなってしまいます。こうした点も十分に認識したうえで、慎重に「複数チェック」を導入する必要があるでしょう(関連記事はこちら)。後述するように、今回の報告書でも「複数人チェック」を含めたダブルチェックについて分析しています。

ダブルチェック・複数人チェックでも「原本との照合」が重要であること再認識せよ

報告書では毎回テーマを絞り、医療事故の再発防止に向けた詳細な分析を行っています。今回は、「ダブルチェックに関連した事例」と、「シリンジポンプの単位の選択に関連した事例」を詳細に分析し、改善策を提示しています。

本稿では「ダブルチェックに関連する事例」、中でも事故事例に注目してみます。ダブルチェックに関連するヒヤリ・ハット事例は、例えば「Aさんのミスを、Bさんが気づき、事故に至ることを防止できた」ものが多くなっています。

2020-22年のうち「ダブルチェック」に関連する医療事故は165件報告されています。発生場所としては病棟(83件)、手術室(23件)、外来(15件)などが多く、内容としては薬剤(101件)、治療・処置(20件)、療養上の世話(9件)などが多くなっています。

また、165件の中には「ダブルチェックを行ったが誤りに気付かなかった」ものと、「ダブルチェックを行うべきところ行わなかった」ものとがおよそ半数ずつ含まれています(前者が84件、後者が81件)。

前者の「ダブルチェックを行ったが誤りに気付かなかった」としては、▼手元の「モノ」(正しい情報)と照合しなかった(35件)▼手元の「モノ」(正しい情報)と照合したが誤りを見落とした(7件)▼手元に「モノ」(正しい情報)がなく照合にならなかった(10件)—などがあります(不明が32件ある)。

手元の「モノ」(正しい情報)と照合しなかった実事例を見ると、次のような状況です。

▽薬剤師Aが緊急入院患者の病室を訪問し、持参薬について聴取するとともに、現在使用している薬剤が記載されているお薬手帳のページをコピー。聴取内容とお薬手帳のコピーを基に電子カルテに持参薬の状況を入力したが、その際に「誤入力」があった。薬剤師Bがダブルチェックを行ったが、焦りなどがあり誤りに気付かなかった(結果、誤った内容に基づく不適切な投薬が行われてしまった)

▽人工膝関節置換術予定のある糖尿病患者に対し、輸液を準備する際、看護師Aが投与量の計算を誤った。看護師Bにダブルチェックを依頼したが、Bは経験が浅く、誤りに気付けなかった(結果、誤った量の薬剤が投与されてしまった)

▽分子標的薬の効果について、病理診断医Aが「1+(陰性)」と判定し、プレパラート上に「1+」とマジックで記載したが、システムに入力する際、誤って「3+」(陽性)と仮登録してしまった。病理診断医Bが最終登録を行う際に、プレパラート上の記載を確認したものの、誤入力(「1+」→「3+」)に気付かず本登録してしまった。



また、手元の「モノ」(正しい情報)と照合したが誤りを見落とした事例としては、次のようなものが報告されています。

▽患者の手術後に医師から「膀胱灌流」の指示が出ました。看護師Aが灌流用生理食塩液 を準備しました。その際、看護師Bとともに「処置箋と現物とのチェック」を行い、生理食塩液のバッグに患者の氏名と流量を記入しましたが、「灌流」とは記入しませんでした。看護師Aは1人でベッドサイドに赴き、当該生理食塩液の「点滴」を開始。看護師Aは「点滴」に違和感をもちましたが、「このような方法もあるのか」を思い込んだようです。その後、夜勤看護師Cが血尿の有無を確認するため膀胱留置カテーテルをみたところ、膀胱留置カテーテルの灌流接続部に灌流用生理食塩液が接続されておらず、輸液の側管に接続されていることを発見しました。



他方、手元に「モノ」(正しい情報)がなく照合にならなかった事例としては、次のようなものが報告されています。

▽小児患者に骨髄検査のための鎮静を行うことになりました。同院では、小児の鎮静・検査時には(1) 全身麻酔剤の「ラボナール注射用」1A+溶解液20mLを作成(2)(1)の薬液のうち4mLと生食16mLを混合し、合計20mLとする(3)(2)の調製液のシリンジに患者名と「5倍希釈」と記載する(4)(1)の残りの薬液のシリンジに患者名と「原液」と記 載する—手順が定められていました。今回、看護師Aが(1)(2)の手順の後、シリンジに無記載のまま看護師Bに確認を依頼。看護師Bがシリンジを確認し、看護師Aにシリンジを戻しました。看護師Aの手元には、いずれも無記名の▼(1)の作業を行った残りの16mL(原液)が入った 20mLシリンジ▼(1)(2)の作業を行った5倍希釈液20mLが入った20mLシリンジ—がありました。看護師Aは、それぞれのシリンジに「原液」「5倍希釈」と記載しましたが、両者を取り違えてしまいました。もっとも、処置室で「調整液の色が濃い」ことに気づき、患児への投与は防げています。



こうした事例を分析すると、事故の背景には▼定められた手順を遵守していない▼照合を実施していない▼一部情報しか確認していない▼照合する情報を誤っていた(修正・変更前の指示書などと照合していたなど)▼誤りを誘導する形になってしまっていた▼先入観・思い込み▼チェック者の知識等が不足していた▼分からない者同士が確認していた—など複合的な要因が複雑に関係していることが分かりました。

機構では事例分析結果を踏まえて、次のような「ダブルチェックを行う場合のポイント」を整理しています。

▽ダブルチェックを際、スタッフが共通した認識を持ち、決められた方法で正しく行う

▽ダブルチェックにおいても、確認とは「基本となる正しい情報があり、対象となるモノを比較して、照合する」ことである点をしっかりと認識しなければならない(【照合】がいずれの場面でも極めて重要である、関連記事はこちら

▽ダブルチェックを2人で行ったことにより「1人1人の責任感が希薄となる」可能性があることを認識する必要がある

▽上級者や先輩が準備したものをダブルチェックする場合は、「上級医が間違うはずがない」「先輩看護師だから正しいはず」などの先入観が入り、確認が甘くなったり、確認を省略してしまったりすることがある点に留意する

▽重要な内容を確認する場合、「表層的照合(形式的なレベルでの照合)」だけでなく 「構造的照合(医療上の判断レベルでの照合)」の両方が必要な場面がある
→例えば、「指示内容とシリンジに吸引した薬液の量の照合」にとどまらず、「この患者への投与量として適切かどうか」という点での確認・照合が必要となる場面がある
→ダブルチェックを行う際、この場面では「表層的照合」だけでよいのか?「構造的照合」が必要なのか?を区別し、「構造的照合」が必要な場合は、その照合ができる者がチェック者になる必要がある

▽チェック者は「確認のための環境」を整えてダブルチェックを実施する必要がある
→別の業務をしながら、遠くから、斜めから覗き見では確認にならない

▽普段から「分からないこと」「疑問に思うこと」を口に出せるよう職場の心理的安全性を高めておく



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