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「患者に永久気管孔を造設している」旨の情報は、電子カルテの「決まった場所」に記載し、院内で適切に情報共有せよ—医療機能評価機構

2024.11.15.(金)

「患者に永久気管孔を造設している」旨の情報が共有されず、その状況を知らない医療スタッフが鼻・口からの換気を試みたが、当然「無効」(永久気管孔は、「鼻・口」と「気管から肺」が完全に分離しており、鼻・口からの換気はできない)であり、患者が呼吸困難な事態に陥ってしまった—。

日本医療機能評価機構が11月15日に公表した「医療安全情報 No.216」から、こうした事例(医療事故)が2018年1月1日から本年(2024年)9月末までの間に11件も報告されていることが分かりました(機構のサイトはこちら)。

ベッドサイドに「永久気管孔のある患者の緊急時の対応方法」を掲示することも有用

日本医療機能評価機では、全国の医療機関から医療事故やヒヤリ・ハット事例(事故には至らなかったものの担当医療スタッフ等が「ヒヤリ」とした、「ハッ」とした事例)の報告を受け、背景等を詳しく分析して「事故等の再発防止に向けた提言」等を定期的に行っています【医療事故情報収集等事業】(国立病院や特定機能病院などでは事故等の報告が義務付けられている、本年(2024)年4―6月を対象とした第76回報告書に関する記事はこちら)。

さらに事故事例などの中から「特段の注意が必要と考えられる事例」(繰り返し発生している医療事故など)を毎月ピックアップ。簡潔に整理し「医療安全情報」として公表しています。医療現場に「こうした事故が頻発しているので最大限の注意を払ってほしい」と強く呼びかけるものです。

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人工呼吸器の再接続を誤り、患者が呼吸困難に陥る事例
薬剤の投与経路を誤る事例
医療関連機器圧迫創傷」(MDRPU)を生じさせてしまう事例
手術時に誤って高濃度のアドレナリンを局所注射してしまう事例
静脈穿刺前の血管拡張や温罨法のため「温めたタオル」を使用した際、患者に熱傷を負わせてしまった事例



11月15日に公表された「医療安全情報No.216」では、「永久気管孔のある患者への無効な換気」事例がテーマに取り上げられました。

ある病院の集中治療室に入院した患者には「永久気管孔」が造設されていましたが、ICUのスタッフにはその情報が共有されていませんでした。患者の呼吸状態が悪化したため、担当看護師は集中治療科の医師に対応を依頼。集中治療科医師は鼻・口からバッグバルブマスクで換気を試みました。しかし、駆け付けた担当医が「患者は永久気管孔が造設されており、鼻・口からは換気ができない」ことを指摘。その後、永久気管孔から気管切開チューブを挿入して人工呼吸管理を開始することができました。



また別の病院の入院している患者は、喉頭気管分離術後で、永久気管孔から人工呼吸管理中でした。人工呼吸器のアラームが鳴ったため看護師が訪室したところ、気管切開チューブが抜けていました。看護師は永久気管孔であることを知らず、鼻・口からバッグバルブマスクで換気を試みたものの、当然、SpO2は改善しませんでした。駆け付けた当直医が「換気ができていない」ことに気付き、永久気管孔から気管切開チューブを挿入し、換気を行うことができました。



これらも適切な対応が行えなければ、生命の危険する重大事故です。永久気管孔は、気管切開と異なり「鼻・口」と「気管から肺」が完全に分離しているため、鼻・口からの換気はできません。事故事例の背景には、述べるまでもなく「重要な情報が院内で共有されていない」ことがあげられます。

永久気管孔のある患者へ、無効な「鼻・口からの換気」を行う事故事例が散発(医療安全情報216 241115)



機構では、▼「患者が永久気管孔造設後である」ことを電子カルテの「決められた場所」に記載し、医療者間で情報共有できるようにする(てんでばらばらの場所に記載したのでは、情報の共有が適切に行えない)▼「永久気管孔のある患者の緊急時の対応方法」についてベッドサイドに掲示する(医療スタッフが適切に対応できるようにしておく)▼永久気管孔の構造と換気方法について、医師・看護師に周知する(医療スタッフの知識・技術を向上する)—ことなどを提案しています。こうした提案内容も参考に、各医療機関において、自院にマッチした対策を早急に立て、また全スタッフに周知し、全スタッフが院内ルールを遵守する環境を整えることが重要です。



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