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「名称類似薬の誤り」事例の散発を踏まえ、「一般名とブランド名の類似」事例、「ブランド名同士の類似」事例を整理—医療機能評価機構

2024.11.26.(火)

医薬品医療機器総合機構(PMDA)が11月25日に、「PMDA医療安全情報No.69(名称類似による薬剤取り違えについて(その2)—一般名とブランド名類似、ブランド名類似—)」を公表しました(PMDAのサイトはこちら)。

「名称類似薬の誤り」事例が医療機関・薬局で散発している事態を踏まえて、「一般名とブランド名の類似」事例、「ブランド名同士の類似」事例の具体例を提示し、対策ポイントを示しています。

「名称が類似し、誤りやすい」事例を医療機関・薬局内でまず情報共有せよ

一般名間・ブランド(銘柄)名間・一般名-ブランド名間の「名称類似薬の誤り」(医師によるオーダの誤り、薬剤師による調剤の誤り)事例が散発しています。医療機関で薬剤をオーダ入力する際、薬局で処方内容を入力する際には、「薬剤の規格と一般的名称、もしくはブランド名の読み仮名数文字」を入力して薬剤を検索することが一般的で、その際「名称の類似した複数の薬剤」が表示され、選択を誤ってしまうことなどがままあると考えられます。

述べるまでもなく、医薬品の取り違えは重大な健康被害につながりかねません。

このためPMDAでは今般、(1)一般名とブランド名が類似する医薬品(2)ブランド名同士が類似する医薬品—の2ケースについて、▼具体的な事例▼薬剤取り違え防止の具体的ポイント▼名称類似の薬剤例—を提示し、再発防止を呼び掛けています。

まず(1)の「一般名とブランド名が類似する」事例としては、医師が入院処方で高リン血症治療剤の「カルタン錠」をオーダする際、「カルタ」と入力したが、当院では「カルタン錠」が採用されておらず、前立腺がん治療剤「ビカルタミド錠」が候補としてあがり、患者に不要な抗がん剤を処方してしまった、ことが示されています。

名称が類似した薬剤の取り違えが散発している



PMDAでは、▼医薬品には一般名とブランド名があること、様々な組み合わせ(一般名同士、一般名とブランド名、ブランド名同士)で取り違えが発生していることを認識する▼自院のシステムの検索方法が「部分一致」なのか「前方一致」なのか確認し、把握する—ことが取り違え防止で重要ポイントになると指摘しました。

さらに、取り違えが生じやすい「一般名とブランド名の類似例」を次のように掲げており、これらも参考に院内・薬局内で「情報共有」することが重要です。

▽持続性アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤の一般名「カンデサルタン シレキセチル」(販売名:ブロプレス)と、α1遮断性血圧降下剤の販売名「カルデナリン」(一般名:ドキサゾシンメシル酸塩)(関連記事はこちら

▽可溶性の非イオン型鉄剤の一般名「クエン酸第一鉄ナトリウム」(販売名:フェロミア)と、アルカリ化療法剤(酸性尿・アシドーシス改善)の販売名「クエンメット」(一般名:クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤)

▽血糖降下剤の一般名「グリベンクラミド」(販売名:オイグルコン)と抗悪性腫瘍剤(チロシンキナーゼインヒビター)の販売名「グリベック」(一般名:イマチニブメシル酸塩)

▽抗アルドステロン性利尿・降圧剤の一般名「スピロノラクトン」(販売名:アルダクトンA)と、持続性気管支拡張剤 ・腹圧性尿失禁治療剤の販売名「スピロペント」(一般名:クレンブテロール塩酸塩)

▽ループ利尿剤の一般名「トラセミド」(販売名:ルプラック)と、胆汁排泄型選択的DPP-4阻害剤の販売名「トラゼンタ」(一般名:リナグリプチン)

▽抗プラスミン剤の一般名「トラネキサム酸」(販売名:トランサミン)と、αβ遮断性降圧剤の販売名「トランデート」(一般名:ラベタロール塩酸塩)

▽前立腺がん治療剤の一般名「ビカルタミド」(販売名:カソデックス)と、高リン血症治療剤の販売名「カルタン」(一般名:沈降炭酸カルシウム)

▽不眠症治療薬の一般名「フルニトラゼパム」(販売名:サイレース)と、チアジド系降圧利尿剤の販売名「フルイトラン」(一般名:トリクロルメチアジド)

▽めまい・平衡障害治療剤の一般名「ベタヒスチンメシル酸塩」(販売名:メリスロン)と、抗悪性腫瘍剤の販売名「べスタチン」(一般名:ウベニメクス)

▽めまい・平衡障害治療剤の一般名「ベタヒスチンメシル酸塩」(販売名:メリスロン)と、副腎皮質ホルモン・抗ヒスタミン配合剤の販売名「ベタセレミン」(一般名:ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩配合剤)

▽葉酸代謝拮抗剤の一般名「メソトレキセート」(販売名:メトトレキサート)と、抗リウマチ剤の販売名「メトトレキサート」(一般名:メトトレキサート、リウマトレックスの後発品)



また、(2)の「ブランド名同士が類似する医薬品」事例に関しては、▼糖尿病の現病歴はない患者の28日分の処方中に2型糖尿病治療剤の「アクトス錠」1錠・起床時・4日分の記載があったが、用法と処方日数から骨粗鬆症治療剤「アクトネル錠」の誤りが疑われ、処方医に疑義照会したところ訂正が行われた▼20代女性に過活動膀胱治療剤の「ベタニス錠」が処方されていたが、添付文書には「生殖可能な年齢への投与は避ける」よう記載されており、疑義照会の結果、同効薬の「ベオーバ錠」へ訂正された—ことなどが紹介されました。

PMDAでは、▼「ブランド名が類似する医薬品が存在する」ことを認識した上で名称を確認する▼後述する類似例や、自施設で取り扱っている医薬品のうち「名称が類似している医薬品」の情報を施設内で共有し、注意喚する—ことが取り違え防止で重要ポイントになると指摘しました。

さらに、取り違えが生じやすい「ブランド名同士の類似例」を次のように掲げました。上述のよう、これらも参考に院内・薬局内で「情報共有」することが重要です。

▽インスリン抵抗性改善剤(2型糖尿病治療剤)の「アクトス」(一般名:ピオグリタゾン塩酸塩)と、骨粗鬆症治療剤・骨ページェット病治療剤(17.5mgのみ)の「アクトネル」(一般名:リセドロン酸ナトリウム水和物)

▽鎮咳剤の「アストミン」(一般名:ジメモルファンリン酸塩)と、乳がん治療剤の「フェアストン」(一般名:トレミフェンクエン酸塩製剤)

▽抗精神病剤の「インヴェガ」(一般名:パリペリドン)と、注意欠陥/多動性障害治療剤の「インチュニブ」(一般名:グアンファシン塩酸塩)

▽持続性アンジオテンシンII受容体拮抗薬/利尿薬配合剤の「エカード配合錠LD/HD」(一般名:カンデサルタン シレキセチル・ヒドロクロロチアジド)と、選択的DPP-4阻害薬/ビグアナイド系薬配合剤の「エクメット配合錠LD/HD」(一般名:ビルダグリプチン/メトホルミン塩酸塩)

▽選択的DPP-4阻害剤の「グラクティブ」(シタグリプチンリン酸塩水和物)と、チアプリド製剤(特発性ジスキネジア、パーキンソニズム等)の「グラマリール」(一般名:チアプリド塩酸塩)

▽肝臓疾患用剤・アレルギー用薬の「グリチロン」(一般名:グリチルリチン酸一アンモニウム・グリシン・DL-メチオニン配合錠)と、スルホニルウレア系血糖降下剤の「グリミクロン」(一般名:グリクラジド)

▽甲状腺機能亢進症治療剤の「チウラジール」(一般名:プロピルチオウラシル)と、甲状腺ホルモン製剤の「チラーヂンS」(一般名:レボチロキシンナトリウム水和物)

▽持続性選択H1受容体拮抗・アレルギー性疾患治療剤の「デザレックス」(一般名:デスロラタジン)と、選択的SGLT2阻害剤の「デベルザ」(一般名:トホグリフロジン水和物)

▽選択的DPP-4阻害剤の「トラゼンタ」(一般名:リナグリプチン)と、抗プラスミン剤の「トランサミン」(一般名:トラネキサム酸)

▽抗血小板剤の「プラビックス」(一般名:クロピドグレル硫酸塩)と、ニューキノロン系抗菌剤の「ラスビック」(一般名:ラスクフロキサシン塩酸塩)(関連記事はこちら

▽選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤の「ベオーバ」(一般名:ビベグロン)と、選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤の「ベタニス」(一般名:ミラベグロン)

▽精神神経用剤の「ベタナミン」(一般名:ペモリン)と、選択的β3アドレナリン受容体作動性過活動膀胱治療剤の「ベタニス」(一般名:ミラベグロン)

▽低リン血症治療剤の「ホスリボン配合顆粒」(一般名:リン酸二水素ナトリウム一水和物・無水リン酸水素二ナトリウム)と、高リン血症治療剤の「ホスレノール顆粒分包」(一般名:炭酸ランタン水和物)

▽抗精神病薬の「レキサルティ」(一般名:ブレクスピプラゾール)と、精神神経用剤の「レキソタン」(一般名:ブロマゼパム)

▽鎮咳・気道粘液溶解剤の「レスプレン」(一般名:エプラジノン塩酸塩)と、うつ病・うつ状態治療剤の「レスリン」(一般名:トラゾドン塩酸塩)

▽循環機能改善剤の「ロコルナール」(一般名:トラピジル)と、HMG-CoA還元酵素阻害剤の「ローコール」(フルバスタチンナトリウム)



なおPMDAでは、「製薬企業からのお知らせ(注意して確認するポイント、処方オーダリングシステムを活用した防止対策など)」を整理したサイトを準備しており、非常に参考になります。



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