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薬剤師が患者・介護者と積極的にコミュニケーションとり、専門知識を活かして「適切な医薬品使用」を実現せよ—医療機能評価機構

2025.1.2.(木)

一般の患者や介護者には医薬品の併用注意・禁忌などを正しく判断することが難しい。薬剤師が患者や介護者と積極的にコミュニケーションをとり、また専門知識を活かして「適切な医薬品使用」を実現することが重要である—。

何らかの事情により「分包されるはずの薬剤が分包機内に残ってしまう」ことがある。分包作業の前後に分包機の内部に薬剤が残っていないか確認することが重要である—。

日本医療機能評価機構が12月25日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

「分包されるはずの薬剤が分包機内に残ってしまう」ことがある点に留意せよ

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「一包化調剤の間違い」事例です。

ある薬局で薬剤師が、患者Xに2型糖尿病治療薬の「グリメピリド錠1mg『トーワ』」を含む4種類の薬剤30日分を一包化調剤し、交付しました。その後、別の薬剤師が患者Yの薬剤を一包化調剤した際、患者Yには処方されて いない「グリメピリド錠」が1錠混入していることに気付きました。混入したグリメピリド錠1mgは、患者Yの前に一包化調剤を行った患者Xの薬剤である可能性があり、患者X宅を訪問して薬剤を回収し確認したところ「グリメピリド錠が入っていない薬包」を発見。その後、正しく分包した薬剤を患者Xに渡しました。静電気などにより分包機の内部に錠剤が残ってしまった可能性があります。

機構では、▼一包化調剤の間違いは「複数の患者に影響を与える」可能性があり、正しい薬剤が過不足なく分包されているかを確認することは「間違いの連鎖」を防ぐうえで重要である▼一包化調剤を行う際は「分包されるはずの薬剤が分包機内に残ってしまう」可能性を常に考慮し、分包作業の前後に分包機の内部に薬剤が残っていないか確認することが重要である▼特に「分包機に残りやすい薬剤」がある場合は、一覧表にまとめて薬局のスタッフに周知し、調製や鑑査の際により一層注意する▼機器の不具合による誤調剤が起きた際は、発生した状況を機器メーカーに報告し、必要な対応や予防対策を行い、機器メーカーによるメンテナンスを受けることも検討する▼一包化調剤を行う際は、分包した薬剤の刻印や錠数を一包ずつ確認することが基本である。その際、PTPシートなどの計数調剤に比べ確認作業が煩雑で時間がかかるため、「薬剤の調製から交付までに時間がかかる」ことを患者に伝え、調製者や鑑査者が分包した薬剤を確認する時間を十分確保することが望ましい(事例でも混雑時であり、誤りに気づけなかった)▼分包機の構造や特徴、操作方法、分包した薬剤の確認手順、薬局の湿度管理などの環境整備、機器のメンテナンスなどについて手順書を作成し、随時見直しを加えながら周知・遵守することが重要である—とアドヴァイスしています。



2つ目は薬剤師が患者に副作用の可能性に気づき、処方医に連絡したうえで事前に服用中止を実現できた好事例です。

ある患者が医療機関Aを受診したところ、帯状疱疹と診断されバラシクロビルが処方されました。薬局で薬剤師が患者のお薬手帳を確認したところ「医療機関Bから関節リウマチ等の治療に用いる『オルミエント錠4mg』が処方され、服用している」ことがわかりました。オルミエント錠の添付文書には「ヘルペスウイルスを含むウイルスの再活性化(帯状疱疹等)が報告されている。症状発現が認められた場合には、患者に医療機関を受診するよう説明し、本剤の投与を中断し速やかに適切な処置を行う」ことが記載されています。オルミエント錠を処方した医療機関Bの医師に「患者に医療機関Aからバラシクロビルが処方された」ことを伝えたところ、バラシクロビルの服用が終わるまでオルミエント錠の服用を中止することになりました。

機構では、▼オルミエント錠のように「服用により重篤な副作用が発現する可能性がある薬剤」を交付する際は、製薬企業が作成している患者向け資材などを活用し、患者に副作用の症状などを具体的に説明したうえで、症状が現れた時は速やかに医師や薬剤師に相談するよう伝えておく▼交付後の患者フォローアップは、副作用の早期発見と早期対応を可能にし、重篤化の回避につながるため、積極的に取り組む必要がある—とアドヴァイスしています。



3つ目は医療用医薬品と一般用医薬品との併用に問題がある点に薬剤師が気付き、一般用医薬品の使用を事前に止め、適切な医薬品の使用につなげることができた好事例です。

パーキンソン病の患者が、鼻閉症状が出現したため、介護者に一般用医薬品の購入を依頼しました。介護者は「鼻づまりに効果がある」と外箱に記載されているナシビンMスプレーを購入しましたが、使用に問題がないか気になり、パーキンソン病治療薬の調剤で利用している薬局に相談しました。薬剤師がナシビンMスプレーの添付文書を確認したところ「モノアミン酸化酵素阻害剤等を服用している人には使用しない」旨の記載があり、「患者はエフピーOD錠2.5を服用しているため、ナシビンMスプレーは使用しない」よう介護者に説明し、購入した薬局に返品するよう伝えました。さらに、薬剤師が主治医に症状を伝えて往診を依頼した結果、ナゾネックス点鼻液50μg56噴霧用が処方されました。

機構では、▼購入者が「薬剤師や登録販売者に相談せずに第2類医薬品を購入することがある」点に留意する▼「購入者には、服用している医療用医薬品名と照らし合わせて、一般用医薬品の使用の可否などを判断することが難しい」場合があり、薬剤師や登録販売者は一般用医薬品の購入者に積極的に関わり、必要な情報を伝え、使用が適切であるかを確認することが重要である▼パーキンソン病治療薬で選択的モノアミン酸化酵素B(MAO-B)阻害薬であるセレギリン塩酸塩(エフピー OD錠2.5など)は、併用禁忌の薬剤が多く、一般用医薬品にも該当する薬剤がある。薬剤師は、セレギリン塩酸塩を服用している患者、家族および介護者に「一般用医薬品を含む他の薬剤を服用・使用する際は薬剤師に相談する」ようあらかじめ説明しておき、定期的に併用薬を確認することが重要である—とアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、2022年7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。



こうした考え方も踏まえて、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は昨年(2024年)7月22日に▼「病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」の改訂▼「地域における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方」の策定—を行っています。病院、クリニック、薬局が連携して「地域ごとに、関係者が面でポリファーマシー対策を進める」ことの重要性を強調しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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