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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

名称類似・外観類似の医薬品を薬剤師が取り違える事例が発生、調剤監査支援システム導入などの防止策検討を—医療機能評価機構

2024.5.28.(火)

名称が類似する薬剤・外観が類似する薬剤について、薬剤師が取り違えてしまう事例が発生している。再確認の徹底や、調剤監査支援システム導入などによる薬剤師サポートなどの防止策検討を進める必要がある—。

日本医療機能評価機構が5月24日に公表した、薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の「共有すべき事例」から、こういった重要知見が明らかになりました(機構のサイトはこちら)。

手術前に休止すべき薬剤が見落とされていたことに薬剤師が気付く好事例も

日本医療機能評価機構は、保険薬局(調剤薬局)における医療安全の確保・向上を目指した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業」も展開しています。全国の保険薬局から「患者の健康被害等につながる恐れのあったヒヤリ・ハット事例」(ヒヤリとした、ハッとした事例)の報告を求め、重要な事例の集積・解析・公表を踏まえて「再発防止」を目指すものです。

再発防止の一環として、ヒヤリ・ハット事例の中から、医療安全確保のために有益な情報を「共有すべき事例」として定期的にピックアップ・公表しています(最近の事例に関する記事はこちら)。今般、新たに3つのヒヤリ・ハット事例が紹介されました。

1つ目は「名称が類似する薬」を取り違えてしまった事例です。

患者にアレルギー性鼻炎等治療薬の「ベポタスチンベシル酸塩錠10mg『タナベ』」1回1錠・1日2回・28日分が処方されたが、薬剤師は誤ってメニエール病等によるめまいを抑える医薬品「ベタヒスチンメシル酸塩錠12mg『日医工P』を調製し交付してしまいました。患者から薬局へ「薬剤の服用を開始して2日経っても症状が改善しない」と連絡があり、薬剤を取り違えていたことがわかりました。

事例の背景には、「調剤時、薬局にいる薬剤師は1人で、名称類似の薬剤を誤った」ことがあると考えられます。

機構では、▼名称類似薬剤の取り違えを防ぐために「薬剤名を1文字ずつ指で差し、声を出して確認する」、「鑑査時や交付時に薬剤情報提供書などに印刷されている識別コードや薬剤の画像を調製された薬剤と照合する」ことが有用である▼薬剤師1人のみで調剤業務に従事する場合、焦りや思い込みなどによりヒューマンエラーが起きやすいため、調剤監査支援システムを導入するなどの対策が望まれる—とアドヴァイスしています。



2つ目は「外観が類似する分包品」を取り違えてしまった事例です。

小児患者に一般名処方でアレルギー性鼻炎等治療薬の「レボセチリジン塩酸塩シロップ用0.5%」1回0.25g・1日2回・10日分が処方されました。 薬剤師Aは「レボセチリジン塩酸塩DS0.5%『タカタ』0.25g/包(分包品)」20包を取り揃えるところ、誤って「0.5g/包(分包品)」20包を取り揃えてしまいました。鑑査を行った薬剤師Bも取り違えに気付かず交付してしまいました。薬剤交付してから2日後、薬剤師Bが未開封であるはずの「0.5g/包(分包品)」の箱が開封されていることを疑問に思い、薬剤師Aに確認したところ「患者に誤った分包品を交付していた」ことに気づきました。患者・家族に連絡し、正しい薬剤と交換しています。

事例の背景には、▼薬局で「0.25g/包(分包品)」と「0.5%の100gバラ包装品」を採用していたが、薬剤供給不安により「0.5g/包(分包品)」を新たに採用したが、薬剤師Aはそれを知らず、調製時の識別確認が不十分であった▼「0.25g/包(分包品)」と「0.5g/包(分包品)」の裏面は同じ外観であった—ことがあります。

機構では、▼散剤の分包品を調製・鑑査する際は、薬剤名のみならず「分包量」についても確認する▼薬剤を新規に採用する際は、朝礼や連絡ノートなどを活用し、薬局スタッフに薬剤名、規格・剤形、注意すべき事項などを周知する▼取り違えや規格間違いが起きる可能性がある場合は「調剤棚に注意を促す」掲示を行うなどの対策を実施する—ことをアドヴァイス。また、製薬メーカーに向けて「同成分で分包量が異なる薬剤の外観は、取り違えが起きないように配慮されたデザインであることが望まれる」と提言しています。



3つ目は、薬剤師により「手術前の服薬休止」を実現できた好事例です。

ある患者は医療機関Aで手術を受ける予定でしたが、別の医療機関Bから糖尿病治療薬「メトグルコ錠500mg」と同じく糖尿病治療薬「スーグラ錠25mg」が処方されていました。薬剤師は、患者から「メトグルコ錠500mgには休薬指示が出ていたものの、スーグラ錠25mgには休薬指示が出ていない」ことを聴取。疑問に思い、医療機関Bの処方医に確認を行ったところ、スーグラ錠25mgも術前に服用を休止することになりました。

手術前後に「休薬」が必要となる薬剤は少なくありません。機構では、▼手術前後に服薬を休止する可能性がある薬剤をリストアップし、それらの薬剤が処方された際の対応について業務手順を定め、薬局内で共有しておく▼薬剤師は、手術前後に服薬を休止する可能性がある薬剤が処方されている患者から「手術を受ける」予定を聴取した際は、服薬休止の判断が処方医・医療機関や手術内容により異なることを理解したうえで、処方医へ「休薬の必要」がないかを確認する—ことが重要とアドヴァイスしています。





薬局・薬剤師には「対物業務」から「対人業務」への移行が求められ、いわゆる「かかりつけ薬局・薬剤師」が▼服薬情報の一元的・継続的な把握と、それに基づく薬学的管理・指導▼24時間対応・在宅対応▼かかりつけ医を始めとした医療機関などとの連携強化—の機能を持つべきことが重要です(関連記事はこちら)。

あわせて、昨年(2022年)7月には「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」が、▼「対物業務のみ・対人業務に力を入れない」薬局経営が成り立たないような調剤報酬へ移管する必要がある▼「対物業務の効率化」のため、まず「一包化業務の他薬局」への外部委託認可を検討する▼「ICT化・DX対応」を進めるとともに、薬局薬剤師は「地域の多職種や、病院薬剤師と顔の見える関係」構築に努める必要がある—との考えをまとめています(関連記事はこちら)。

とりわけ高齢者においては多剤投与が健康被害を引き起こす可能性が高く(ポリファーマシー)、厚生労働省は「高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)」および「高齢者の医薬品適正使用の指針(各論編(療養環境別))」を取りまとめ、注意を呼び掛けています。とくに外来医療等では、患者のそばに常に医療従事者がいるわけではないことから、保険薬局(調剤薬局)のかかりつけ機能が極めて重要となります(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。3つ目の事例は、薬局薬剤師によるポリファーマシー対策実践の重要事例と言えます。



こうした考え方を先取りし、2018年度の調剤報酬改定では、▼薬剤師から処方医に減薬を提案し、実際に減薬が行われた場合に算定できる【服用薬剤調整支援料】(125点)の新設▼【重複投薬・相互作用等防止加算】について、残薬調整以外の場合を40点に引き上げる(残薬調整は従前どおり30点)—など、「患者のための薬局ビジョン」や「高齢者の医薬品適正使用の指針」を経済的にサポートする基盤が整備され、前回の2020年度改定での充実(例えば【服用薬剤調整支援料2】の新設など)、今回の2022年度改定での充実(例えば「調剤料の処方日数に応じた評価の見直し」や「調剤管理料の新設」など)も図られています。

「疑義照会=点数算定」という単純構造ではないものの(要件・基準をクリアする必要がある)、今回の事例のような薬剤師の素晴らしい取り組みが積み重ねられることで、「かかりつけ薬局・薬剤師」の評価(評判)が高まり、診療報酬での評価にも結び付くでしょう。

さらに、患者から「あの薬局、あの薬剤師さんは親身になってくれ、お医者さんに問合せまでしてくれる」との良い評判が立つことが、薬局経営の安定化に非常に効果的です。



なお、厚労省は2021年3月31日に通知「『病院における高齢者のポリファーマシー対策の始め方と進め方』について」を示しており、病院はもちろん、地域のクリニックや薬局と連携して「ポリファーマシー対策」を進めることの重要性を指摘しています。医療安全確保のためにも「地域連携」が極めて重要です。



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