医療圏・基準病床数の設定、医療従事者の確保、すべての開業医に夜間・休日や公衆衛生対応など求める方針固める—第8次医療計画検討会(3)
2022.11.28.(月)
2024年度からの第8次医療計画に向けた「第8次医療計画に関する検討会」(以下、検討会)の論議が大詰めを迎えています。
11月24日には、これまでの検討会・ワーキング論議を踏まえた「意見のとりまとめ」案(たたき台)が提示されました。同日には▼地域医療支援病院等(関連記事はこちら)▼在宅医療提供体制の見直し(関連記事はこちら)—も議題としており、別稿で報じ済です。
医療圏や基準病床数設定、医療従事者確保などの方向を示す
Gem Medで繰り返し報じているとおり、2024年度から新たな「第8次医療計画」(2024-29年度の計画)が始まります。検討会や下部組織のワーキンググループでは、都道府県が医療計画を作成する(2023年度中に作成)際の拠り所となる指針(基本指針、2022年度中に都道府県に提示)策定論議を進めています。検討会で年内(2022年内)に意見を整理し、それをもとに厚労省で年度末(2023年3月頃)に指針(基本方針)を示します。
【これまでの検討会論議に関する記事】
在宅医療・介護連携、在宅における口腔・栄養・リハビリの一体的提供を強力に推進していく—第8次医療計画検討会(2)
地域医療支援病院と紹介受診重点医療機関、両者の違いはどこにあるのか今後明確化を図ってはどうか—第8次医療計画検討会(1)
訪問看護師・専門性の高い看護師など計画的に育成!病院薬剤師の「奨学金返済を免除する」仕組みを検討!—第8次医療計画検討会
脳卒中等の急性期対応では医療機関へのアクセスを最重視、精神疾患の慢性期入院患者減踏まえベッド数適正化を—第8次医療計画検討会
小児・周産期医療、「集約化・重点化」と「患者アクセスの確保」とのバランスを地域ごとに慎重に判断せよ—第8次医療計画検討会(2)
すべての開業医に地域で不足する医療機能(夜間対応など)への協力求める、外来機能報告データの利活用推進—第8次医療計画検討会(1)
平均在院日数の地域格差、「地域性があり容認すべき」と考えるか、「医療の標準化に向け解消すべき」と考えるか—第8次医療計画検討会(2)
医療提供体制の基礎となる2次医療圏は適正な規模・エリア設定が重要、他計画にも影響するため優先検討を—第8次医療計画検討会(1)
かかりつけ医機能は医師個人・医療機関の双方に、「制度化や登録制」に疑問の声も—第8次医療計画検討会
「病院・クリニック間の医師偏在解消」「ベテラン医師ターゲットに据えた医師偏在解消」など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
病院薬剤師や訪問看護師、特定行為研修修了看護師、医療計画に「ニーズ踏まえた確保策」規定へ—第8次医療計画検討会(1)
医療・介護サービスの一体提供可能とするため、在宅医療圏域は「市町村単位」が望ましいのでは—第8次医療計画検討会(2)
医療安全の向上に向け、例えば医療機関管理者(院長など)の「医療事故に関する研修」参加など促していくべき—第8次医療計画検討会(1)
2次救急と3次救急の機能分担、巡回医師等確保・オンライン診療によるへき地医療支援など進めよ—第8次医療計画検討会(2)
周産期医療・小児医療提供体制、医療の質確保や医師の負担軽減のため「集約化・重点化」を急ぎ進めよ—第8次医療計画検討会(1)
がん拠点病院が存在しない医療圏への対策、効果的な糖尿病対策、精神疾患対策の評価指標などが今後の重要論点—第8次医療計画検討会(2)
外来機能報告データ活用し、紹介受診重点医療機関の明確化だけでなく、幅広く「外来医療機能分化」論議を—第8次医療計画検討会(1)
高額医療機器の共同利用推進、「読影医・治療医配置なども勘案」した広範な議論求める声も—第8次医療計画検討会(2)
外来医師偏在の解消に加え、「かかりつけ医機能の明確化、機能を発揮できる方策」の検討も進める―第8次医療計画検討会(1)
人口減の中「2次医療圏」をどう設定すべきか、病床数上限である基準病床数をどう設定するか―第8次医療計画検討会
今後の医療提供体制改革では、「医療人材の確保」が最重要論点―第8次医療計画検討会
外来機能報告制度や紹介受診重点医療機関が「医師偏在」を助長しないよう留意を―第8次医療計画検討会
感染症対応では情報連携、看護師はじめ医療人材確保が最重要、課題検証し早急な改善を—第8次医療計画検討会
感染症対応医療体制を迅速確保できるよう、強制力持つ法令の整備を検討してはどうか—第8次医療計画検討会
集中治療認定医を専門医と別に養成し、有事の際に集中治療に駆け付ける「予備役」として活躍を—第8次医療計画検討会
2024年度からの医療計画に向けた議論スタート、地域医療構想と医師配置、外来医療など考えるワーキングも設置—第8次医療計画検討会
11月24日の会合には、これまでのワーキング・検討会論議を踏まえた「意見のとりまとめ」案が厚生労働省から示されました。大きく(1)医療計画全体(医療圏、基準病床数など)(2)5疾病・6事業および在宅医療(3)外来医療提供体制(4)医師確保計画—の4部構成になっており、このうち(1)と(3)を議題としました。
●意見取りまとめ案はこちら
まず(1)の「医療計画全体」では、▼医療計画の作成方針▼医療提供体制の在り方▼医療従事者の確保▼医療安全の確保▼2次医療圏▼基準病床数▼医療計画の作成手順(介護保険事業(支援)計画など他計画との整合性確保、住民への周知など)—について、これまでの議論を踏まえた「今後の方向性」を示しています。
このうち、医療提供体制のベースとなる医療圏設定について今村知明構成員(奈良県立医科大学教授)は「近隣県とのすり合わせが極めて重要である。平時より近隣県と協議することを強力に促してほしい」と要請しています。医療提供体制は「一般的医療は2次医療圏内で、特殊な医療も含めて3次医療圏(原則として都道府県)内で完結する」ことが求められますが、例えば県境近隣に居住する住民であれば「隣県の病院を受診する」ケースが少なくないでしょう。こうした流出・流入はもちろん、今般の新型コロナウイルス感染症対応の中では「県を跨いで医療提供体制を考えていく」ことの重要性が再確認されました。近隣県が実際に医療提供体制をどのように構築しようと考えているのかを把握したうえで(●●だろう、では困る)、自県の医療提供を構築していく必要があると今村構成員は強調しています。
関連して加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)や猪口雄二構成員(日本医師会副会長)は「2次医療圏と、地域医療構想区域とは、必ずしも一致させる必要はないのではないか」との見解を示しています。今後、いわゆる「ポスト地域医療構想」(現在の地域医療構想は2025年度をゴールにした機能分化・連携を目指しており、2025年度以降の機能分化・連携等は別に考えていく必要がある)に向けた議論の中で重要な視点の1つとなりそうです。
また「基準病床数」に関しては、「従前(第7次計画)どおり平均在院日数の短縮を進め、地域格差を是正していく」方針が明示されました。
▽病院報告データから「平均在院日数の短縮率」を計算し、「平均在院日数×地方ブロックごとの短縮率」を用いる
▼地方ブロックの平均在院日数が全国平均よりも短い場合には、当該ブロックの変化率を用いる
▼地方ブロックの平均在院日数がその全国平均よりも長い場合には、「全国値+α」と「当該ブロックの変化率」のうち、より高い変化率を用いる
平均在院日数の長い地域では、「現状」を認めるのではなく、「まず全国平均に近づくように、平均在院日数の短縮を目指す」ものと言えます。
この点、江澤和彦構成員(日本医師会常任理事)は「平均在院日数は単純に短ければ良いというものではなく、医療の質が十分に担保されているかとセットで考えていく必要がある」と述べ、今後、引き続き「平均在院日数の短縮・地域差是正」の在り方を検討していくべきとの考えを強調しています。
なお地域格差については「一般病床の中には、急性期一般病棟のほか、地域包括ケア病棟や回復期リハビリ病床、障害者施設病棟など在院日数が必然的に長くなるベッドも含まれているが、地域によって整備状況に差がある。そこも踏まえて地域差を是正するべきかな否かなどを考えていく必要がある」旨の指摘がありました(関連記事はこちら)。将来に向けた重要検討課題の1つに位置づけられます。
このほか、▼地域において「住民向けの概要版作成」を考えてほしい(山口育子構成員:ささえあい医療人権センターCOML理事長)▼有床診療所の在り方などを地域で検討していく必要がある(猪口構成員)—などの指摘も出ています。
すべての開業医に夜間・休日や公衆衛生対応などを求める方針固める
また(3)の外来医療提供体制に関しては、▼外来医師の偏在是正▼すべての開業医による「地域で必要な機能」(夜間・休日対応、公衆衛生対応など)▼医療機器の効果的・効率的な活用▼外来医療の機能分化(紹介受診重点医療機関の指定など)—を進めていく方針が示されています(関連記事はこちら)。
現在の「外来医療にかかる医療提供体制の確保に関するガイドライン」にも示されていますが、外来医療計画を地域の金融機関等にも周知することの重要性が確認されました。外来医療計画では「外来医師(開業医)が多数の地域に新規開業する医師に対し、適切な情報提供を行うとともに、地域で不足している機能(夜間・休日対応、公衆衛生対応など)への協力を呼び掛ける」ことなどが示されています。この点、「都道府県への申請があってから『この地域は外来医師が多く競争が激しい』などの情報提供があっても遅い。開業を検討する段階でそうした情報提供がなされることが重要である」との指摘があり、開業を検討する際に必ずと言っていいほど関与する「金融機関」にあらかじめ情報提供しておき、開業を検討する医師が、事前に「地域が外来医師多数区域で競争が激しいのか否か」などを把握できるようにしておくものです。なお、地域で不足している機能(夜間・休日対応、公衆衛生対応など)への協力は、今後「すべての開業医」が対象になります(関連記事はこちら)。
今後、(2)5疾病・6事業および在宅医療や(4)医師確保計画などの最終論議も行い、年内(2022年内)に検討会としての意見取りまとめが行われます。
【関連記事】
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