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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

小規模多機能型居宅介護、登録率の上昇が経営安定化の最重要ポイント―福祉医療機構

2016.4.8.(金)

 2014年度における小規模多機能型居宅介護の経常増減差額比率は0.0%となり、非常に厳しい経営状況が続いている。このため、「登録率の上昇」や「小多機のメリットの周知によるニーズの掘り起し」によって業績を回復する必要がある―。

 福祉医療機構(WAM)は、このほど公表したリサーチレポートの中で、このような提言を行いました。

小多機全体では、収益と赤字の比率が2014年度0.0%に

 小規模多機能型居宅介護(小多機)は、「通い(通所サービス)」「訪問(訪問サービス)」「泊まり(短期宿泊サービス)」を一体的に提供する、公的介護保険の地域密着型サービスの1類型です。

 要介護度が高くなってもできるだけ施設に入所せず、住み慣れた地域での在宅生活を維持できるように3つの機能を複合的に提供しており、今後の地域包括ケアシステムの中で重要な位置を占めることになります。

 しかしWAMの調べでは、その経営状況は非常に厳しいことが分かりました。2014年度のサービス活用収益対経常増減差額比率(いわば収益と費用の比率)は0.0%。2012年度には2.5%、13年度には0.7%でしたので、年々悪化し手いる状況です。

 小多機は、事前に登録した利用者のみが利用できますが、2014年度の登録率は78.4%で、前年度から1.5ポイント下がっています。また、利用者の平均要介護度を見ると、2012年度2.29→13年度2.21(0.8ポイント低下)→14年度2.17(0.4ポイント低下)と、こちらも低下傾向にあります。小多機でも介護報酬は要介護度に応じて設定されているため、平均要介護度の低下は収益減に繋がります。WAMでは「登録率・平均要介護度の低下」「人件費の高止まり」が経営悪化の要因になっていると見ています。

2014年度(平成26年度)に、小多機の費用・収益バランスは全体で0.0%にまで落ち込んでおり、大変厳しい経営状況にあることが分かる

2014年度(平成26年度)に、小多機の費用・収益バランスは全体で0.0%にまで落ち込んでおり、大変厳しい経営状況にあることが分かる

赤字と黒字の事業所比較、登録率は黒字事業所のほうが9.3ポイント高い

 事業所を赤字・黒字に分けて見ると、赤字施設は全体の48.9%とほぼ半数を占めています。

 赤字事業所と黒字事業所を比較すると、次のような違いが明らかになりました。

▽経常増減差額比率:黒字11.4%、赤字マイナス14.1%

▽活動収益:黒字5553万円、赤字4694万円(黒字のほうが859万円高い)

▽登録率:黒字89.2%、赤字74.6%(黒字のほうが9.3ポイント高い)

▽平均要介護度:黒字2.20、赤字2.13(黒字のほうが0.07ポイント高い)

▽従事者1人当たり人件費:黒字325万円、赤字343万円(黒字のほうが18万円低い)

 こうした状況から、WAMは「収益の差は登録率の差が要因である」と見ています。また、登録率が低下した事業所は経常増減差額比率が低下し、逆に登録率が上昇した施設は経常増減差額比率が高まっていることも分かりました。

赤字の小多機と黒字の小多機を比較すると、「登録率」が大きなポイントになっていることが分かる

赤字の小多機と黒字の小多機を比較すると、「登録率」が大きなポイントになっていることが分かる

「通い」「訪問」の充実が登録率上昇に効果的

 では、どのようにして登録率を上げればよいのでしょうか。

 WAMの調査・分析によれば、▽通いの利用者数が一定以上▽訪問の利用者数も一定以上―の双方を満たすことで、高い登録率を維持できることが分かりました。

登録率が上昇した事業所と下降した事業所を比較すると、訪問(青い棒グラフ)と通い(黄色の棒グラフ)で大きな違いがあることが分かる

登録率が上昇した事業所と下降した事業所を比較すると、訪問(青い棒グラフ)と通い(黄色の棒グラフ)で大きな違いがあることが分かる

 こうした状況を総合し、WAMは小多機の経営改善に向けて次のような取り組みを行うよう提言しています。

(1)登録率を上昇させる

(2)「通い」「訪問のニーズ」に対応できる体制の整備(登録率の維持につながる)

(3)訪問強化のために、職員の経験値を高める

(4)地域での小多機認知向上に向けて、小多機のメリットを利用対象者・関係機関に積極的に訴求していく

 

 なお、小多機については2015年度の介護報酬改定で、基本報酬の引き下げが行われ、経営環境が厳しくなっています。その一方で、▽訪問体制強化加算(1か月につき1000単位)の新設▽登録定員人数の緩和(25人→29人)▽看取り連携体制加算(1日につき64単位)―といった評価充実も行われています。

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