通所介護、安定経営の条件は「事業規模拡大」と「利用時間・回数の増加」―福祉医療機構
2015.10.2.(金)
老人デイサービス(通所介護)事業所の安定経営には、(1)大規模化(2)長時間のサービス提供(3)利用率の向上(4)年間サービス提供日数の多さ―の4点がポイントとなる―。このような分析結果を、福祉医療機構(WAM)が9月30日にリサーチレポートとして公表しました。
通所介護の利用は急激に増加しており、2013年度末時点で利用者数は173万人で、「介護保険の利用者全体のおよそ3人に1人が通所介護を使っている」計算になります。このため、通所介護事業所数も増加を続けており、13年度末時点で3万9196か所となりました。
介護保険創設直後の01年度末時点から比べると、利用者数は2.6倍、事業所数は4倍になっているため、「競争」が激化していると考えられます。また15年度の介護報酬改定は「全体で2.27%」という大幅なマイナス改定となり、通所介護全体を取り巻く環境も厳しくなっています(関連記事はこちら)。
こうした状況を踏まえてWAMは、通所介護事業所の安定経営のポイントについて研究しました。
ところで、通所介護には「一般型」と「認知症対応型」(認デイ)がありますが、WAMは「収益性を見る指標である経常増減差額比率には、両者に大きな差はない」と分析しており、今回の研究は主に「一般型」に的を絞っています。
一般型の経営状況をさまざまな角度から分析すると、次のような状況が分かりました。
▽他事業との併設をしている施設のほうが、通所介護単独の施設よりも労働生産性が高く、労働分配率は低くなっており、併設型施設のほうが効率的な経営を行えている(特に規模の大きな介護保険施設などとの併設が効率的)。
▽事業規模が大きくなるほど「収益性」の指標となる経常増減差額比率が大きい
▽事業規模が大きくなるほど利用率が高く、年間実施日数も多い
▽サービス提供時間の長い施設のほうが、経営効率が高い(解釈が難しいが、従事者1人当たり人件費は高いものの、収益が大きいため人件費比率は低く抑えられている)
▽1日平均利用者数、利用率ともに、黒字施設(利用率73.2%)のほうが赤字施設(利用率66.6%)に比べて高いが、1人1日当たりサービス活動収益には大きな差はない
▽年間サービス提供日数が長い施設ほど、経常増減差額比率が顕著に高くなる
こうした分析結果を基に、WAMは通所介護事業所を安定的に経営するためには(1)大規模化(2)長時間のサービス提供(3)利用率の向上(4)年間サービス提供日数を多くする―ことが必要と提言しています。
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