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事業の多角化や規模拡大で経営の安定化を、23.9%が赤字の社会福祉法人を分析―福祉医療機構

2016.5.6.(金)

 2014年度に、社会福祉法人の23.9%が赤字となり、その主要因は「サービス活動収益」の低さにある。サービス活動収益を上げる(つまり経営を好転させる)ためには、複数の事業を展開することなどが1つの方策と考えられる―。

 福祉医療機構(WAM)は先ごろ、こういった分析レポートを公表しました。

複合型の社会福祉法人、スケールメリットを活かして経営を安定化

 WAMは新会計基準を採っている4419の社会福祉法人を対象に、2014年度の経営状況を分析しました。前年度の分析では2540法人が対象でしたが、新会計基準の導入が小規模法人にも進んでおり、より信頼性の高いデータが得られていると言えそうです(関連記事はこちら)。

 法人の主たる事業について見てみると、介護保険主体が45%、保育主体が31%、障害福祉サービス主体が16%、老人福祉主体が2.9%、複合型が2.5%などとなっています。主たる事業別に経営状況を比較すると、赤字法人の割合は▽介護保険主体で27.4%▽老人福祉主体で29.1%▽保育主体で23.1%▽障害福祉主体で14.7%▽複合型で20.9%―という状況。

 WAMでは「複合型の法人では、従事者数が平均300.3人と突出して多く(介護保険主体で140人、保育主体で53.9人など)、複数施設を経営することで規模を拡大し、スケールメリットを活かして経営の安定化を図っている」と見ています。

主たる事業別に社会福祉法人を分類すると、「複合型」が際立って規模(従事者数)が大きく、赤字法人割合も比較的少ないことが伺える

主たる事業別に社会福祉法人を分類すると、「複合型」が際立って規模(従事者数)が大きく、赤字法人割合も比較的少ないことが伺える

黒字法人ではサービス活動収益が高く、従事者に還元することで人材も確保

 次に、社会福祉法人全体を赤字(全体の23.9%)・黒字(同76.1%)に分けて見てみると、赤字法人には▽規模がやや小さい▽人件費比率が高い―といった特徴がありますが、これらの根底には「従事者1人当たりサービス活動収益が低い」ことがあるようです。

 このためWAMは、▽現在実施している事業の拡大▽他事業への展開などを図る―ことにより「サービス活動収益を増加」することが、経営安定化の1方策であると強調しています。

 「サービス活動収益」の大きさに着目して社会福祉法人を4分類してみると、収益の大きなグループほど赤字法人の割合が少なく、複数事業を実施している法人の割合が高いということからも、WAMの分析の正しさが伺えます。

 

 また、収益の大きなグループでは従事者1人当たり人件費が高く、WAMでは「スケールメリットで得られた経常増減差額(いわば利益)を、従事者に還元し、従事者の確保・離職防止を図っている」と分析しています。「1人当たり収益が高い」→「人件費を高く設定できる」→「良い人材が集まる」→「さらに収益が高まる」という好循環が生じていると言えそうです。

サービス活動収益の大きなグループでは、▽規模(従事者数)が大きい▽人件費比率が小さい―という一方で、1人当たり人件費は高い(つまり高い給与が保障されている)ことが分かる

サービス活動収益の大きなグループでは、▽規模(従事者数)が大きい▽人件費比率が小さい―という一方で、1人当たり人件費は高い(つまり高い給与が保障されている)ことが分かる

地域性などから収益増加が困難な法人、他事業者との連携が重要

 調査の翌年度にあたる2015年度には、全体でマイナス2.27%の介護報酬改定が行われており(関連記事はこちらこちらこちら)、さらに、社会福祉法人制度の改革(地域公益事業の実施義務など)なども控えていることから、今後、社会福祉法人の経営状況も厳しくなると予想されます。

 WAMこうした状況を踏まえ、事業の拡大などによって「サービス活動収益の増加」を図り、経営を安定化させることが重要と指摘。

 一方、地域性などによりサービス活動収益の増加が困難な法人に対しては、「他事業者との連携を素早く意思決定」するなどし、地域に必要とされる経営の安定化を図ることを提案しています。

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