【コンサルに聞く】介護倒産が過去最多、人材確保できずマイナス改定直撃か
2015.10.6.(火)
民間調査会社の調べによると、直近の介護事業者の倒産件数が過去最多を更新したと報じられています。
◆介護事業者倒産、過去最多…報酬引き下げが影響か(2015年10月1日読売新聞※10月5日時点で掲載確認)
記事では、15年4月から介護報酬が2.27%引き下げられたことや、人手不足で人件費が上がっていることなどが影響していると分析しています。
医療介護連携が進む中、介護事業所は現在、どのような課題を抱えているのか。人手不足は解消されるのか。GHCコンサルタントで、介護行政の情報にも明るい湯原淳平・アソシエイトマネジャーに聞きました。
―報道にあるように、介護事業者の倒産はマイナス改定の影響が大きいと感じますか。
現時点で詳細な分析まではできていないのですが、例えば、新設された加算を取れない場合に、マイナス改定の影響が大きく出ると感じます。
新設された加算は人、特に看護師を確保できるかどうかが重要な算定ポイントになるので、人さえ確保できればマイナス改定の影響を少なくすることができます。その「人の確保」は小規模事業所ほど難しいので、小規模なほどマイナス改定の影響を大きく受け、倒産などにつながったのではないかとは感じています。
―景気回復が人手不足に拍車を掛けているとの指摘もあります。
景気回復が原因かどうかまでは分かりません。ただ、都会ほど人の確保は難しい。若者が介護分野での就職を選ばない理由としては、以下のことが考えられます。
(1)職業選択の幅が大きい
(2)都会では他業種のアルバイトと比べて見劣りしてしまう
特に(2)の理由は大きいと思います。地方で時給が安いアルバイトでも、都会では時給が高い業種は多い。しかし、介護報酬では地方と都会の時給差をカバーできるほどの地域加算が用意されていません。
また、15年は経団連が就職活動の長期化を是正するため、選考開始を4か月繰り下げ、8月スタートという指針を出しました。そのため、真面目に8月まで待っていた介護事業者は、外資系やフライングをする国内企業に人材を持っていかれてしまったのではないかという関係者の声も聞こえてきます。
―今後もこうした流れは続きそうですか。
地方と都会の賃金差を埋める対策、他業種との賃金差を埋める対策など、人の確保に対する抜本的な対策が打たれない限り、この流れは続くと予想されます。
―現状を打破するには、どのようなことが必要と感じていますか。
現在、介護事業者単位で、介護現場の魅力を訴えるさまざまな対策が打たれています。
例えば、全国20の社会福祉法人が、介護の仕事の理解を促す「介護男子スタディーズ」という活動を共同で行っています(ホームページはこちら)。中学、高校への出前授業などを通して、学生に介護の魅力を伝える活動なども、幾つかの社会福祉法人によって実施されています(詳細は関連記事『鳥取県立米子東高等学校で出前授業 -介護老人福祉施設よなご幸朋苑-』)。
EPA(経済連携協定)などを通じて外国人研修員を育成する動きもありますが、なかなか定着には至っていません。さまざまな切り口で人の確保を試みていますが、課題も多いのが現状です。人の確保は医療も含めて、非常に難しい課題です。