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介護療養から医療療養などへの転換進むが、人件費増などで利益率は低下―福祉医療機構

2016.10.11.(火)

 近年、介護療養病床が大きく減少しており、医療療養や回復期リハへの転換が進んでいると考えられる。転換後は、収益が増加するものの、人件費増などの費用増がそれを上回り、利益率は低下している―。

 福祉医療機構(WAM)が7日に公表したリサーチレポート「療養型病院の近年の状況と病床転換の状況について」から、このような状況が明らかになりました。ただし、医療療養への転換は経営悪化を意味するものではなく、WAMは「コストコントロールによる収益向上の余地がある」ともコメントしています(WAMのサイトはこちら)。

 介護療養については、新たな転換先に関する議論が厚生労働省の社会保障審議会で進んでいます。今回のレポートも含め、今後の動きに要注目です(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

介護療養から医療療養や回復期リハへの転換進む

 まず療養病床の推移について見てみましょう。WAMでは426の同一病院を対象に2010年度から14年度にかけて、どのような病床構成になっているかを調査しています。

 そこでは、2010年度には介護療養病床が1万6674床あり、総病床数(10年度:7万260床)に占める割合は23.7%でした。これが14年度には、4310床減少し1万2364床となり、総病床数(14年度:6万9868床)に占める割合も6.0ポイント低下し17.7%となりました。

 この介護療養病床がどうなったのか(別の病床に転換したのか?廃止したのか?)が気になります。この点、同じ調査からは▼医療療養が2422床増加(2010年度:3万4895床→14年度:3万7317床)▼回復期リハビリが1286床増加(2010年度:7119床→14年度:8405床)▼地域包括ケアが231床新設―されていることも分かっており、WAMでは「廃止や転換の措置を講じているものと思われる。転換先として医療療養や回復期リハが考えられる」と見ています。

介護療養病床は2010年度(平成22年度)から14年度(平成26年度)にかけて大きく減少しており、医療療養や回復期リハへの転換が進んでいるとみられる

介護療養病床は2010年度(平成22年度)から14年度(平成26年度)にかけて大きく減少しており、医療療養や回復期リハへの転換が進んでいるとみられる

療養病床の割合が高い病院、経営は安定

 次に総病床数に占める療養病床の割合が50%を超える「療養型病院」の経営状況の推移を見てみましょう。

 医業利益率(医業収益対医業利益率)は、▼2010年度:6.7%▼11年度:6.7%▼12年度:5.9%▼13年度:5.4%▼14年度:5.7%―と徐々に低下しています。医業収益が2010年度の13億3900万円から、14年度には14億4300万円に増加(7.8%増加)したものの、医業費用がこれを上回る8.9%増(10年度:12億4900万円→14年度:13億6000万円)となったためです。

療養型病院の経営状況を経年比較すると、収益は増加しているが、それを上回って費用が増えており、利益率は低下している

療養型病院の経営状況を経年比較すると、収益は増加しているが、それを上回って費用が増えており、利益率は低下している

 この背景には、100床当たり従事者数の増加(2010年度:91.5人→14年度:100.7人で、9.2人の増加)があると考えられ、人件費は、2010年度の7億4700万円から、14年度の8億3500万円に11.8%の増加となっています。

 また、さらに細かく分析すると、次のような状況も明らかになりました。

(1)療養病床の割合が高いほど利益率が高く、赤字割合も小さい

療養病床の割合が高くなるほど、療養型病院の利益率は上がり、経営が安定化していることが分かる

療養病床の割合が高くなるほど、療養型病院の利益率は上がり、経営が安定化していることが分かる

(2)総病床の50%超を占める病床を「主たる病床機能」と考えると、医療療養では赤字の割合が多く、介護療養と回復期リハでは赤字の割合が少ない

主機能が回復期リハの病院では、医療療養・介護療養が主機能の病院に比べて利益率が高い

主機能が回復期リハの病院では、医療療養・介護療養が主機能の病院に比べて利益率が高い

(3)赤字の病院では、患者1人1日当たりの入院医業収益が小さい

(4)赤字の病院では、黒字の病院に比べて病床規模が小さい

黒字の療養型病院と赤字の療養型病院を比較すると、赤字病院では病床規模がやや小さく、療養病床の割合が低く、病床利用率が低いことなどがわかる

黒字の療養型病院と赤字の療養型病院を比較すると、赤字病院では病床規模がやや小さく、療養病床の割合が低く、病床利用率が低いことなどがわかる

 (1)についてWAMでは、療養病床の割合が高い病院では「高額な機器や薬剤を使用する機会が少なく、費用が低く抑えられているために経営が安定している」と分析。また(3)の結果から、経営好転の鍵は「利用率や入院単価の上昇によって入院収入を上げること」にあるとWAMは見ています。

介護療養から医療療養への転換で利益率は減少、コストコントロールが重要

 さらに、介護療養から医療療養への転換が経営にどのような影響を与えているのかを見てみましょう。WAMは、「2012年度に介護療養から医療療養に完全に転換した病院」(転換病院)と「2011年度から14年度まで介護療養をまったく転換しなかった病院」(未転換病院)とを比較し、次のような点をポイントとしてあげています。

▼転換病院の病床利用率は、未転換病院よりも低く、かつ差が広がっており、利用者確保・ベッドコントロールに苦労している

▼転換病院は、転換後に医業収益が増加(2011年度から14年度にかけて3.4%増)したものの、医業費用がこれを上回る増加(人件費増や医薬品費など)を示し、医業利益は減少している(2011年度から14年度にかけて1.8ポイント減少)

介護療養から医療療養に転換すると、人件費の増加などで利益率が低下していることが伺える

介護療養から医療療養に転換すると、人件費の増加などで利益率が低下していることが伺える

 こうした点を踏まえながらWAMでは、「医薬品や医療材料のコストコントロールによる費用の抑制」などによって、今後収益を向上させる余地があると見通します。また「転換後の経過年数が短い」ことから、途中経過として捉えるべきとも付言しています。

 

 冒頭に述べたように、介護療養(および医療法の看護配置4対1などを満たさない医療療養)については設置根拠が2017年度末(2018年3月)で消滅するため、現在、新たな移行先の具体化に向けた議論が、社会保障審議会「療養病床の在り方等に関する特別部会」で進められています(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 介護療養を設置している病院では、こうした制度改正の動きや、今般のレポートを含めた経営動向を注視し、今後の方針を見定める必要があります。

 
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