病院や特養ホームの建設単価は最高水準、東京五輪まで施設整備は厳しい状況続く―福祉医療機構
2016.6.7.(火)
医療・福祉施設の「1平方メートル当たりの建設費」(平米単価)を見ると、2015年度には病院27万1000円、介護老人保健施設23万6000円、特別養護老人ホーム26万2000円などとなっており、東日本大震災以降の復興事業や東京オリンピックに向けた公共工事による需要増を受け、ここ数年における最高水準となっている―。
このような状況が、福祉医療機構(WAM)が6日に公表したリサーチレポート「平成27年度 福祉・医療施設の建設費について」から明らかになりました。
医療施設などでは、建て替え・新築に対して向かい風がきつくなっているようです。
目次
病院全体で見た「定員1人当たり建設単価」は5年間で48.9%も上昇
まず病院の建設費について見てみると、平米単価は、2010年度には全体で15万9000円、一般病院(全病床に占める一般病床の割合が5割以上の病院)で17万3000円でしたが、15年度には全体・一般病院ともに27万1000円に上昇。全体では11万2000円・70.4%、一般病院では9万8000円・56.6%の上昇幅となっています。
一方、定員1人当たりの延べ床面積を見ると、ここ5年間で大きな変動はないことから、「定員1人当たり建設単価」も上昇傾向にあります。2010年度には全体で万187万9000円、一般病院で1369万6000円でしたが、15年度には全体1768万2000円、一般病院1777万7000円となりました。上昇幅を見ると、全体では580万3000円・48.9%、一般病院では408万1000円・29.8%となっています。
したがって300床の病院を新築する場合には、建設費のみに着目しても5年前とくらべて17億円超(一般病院であれば12億円超)のコスト増になる計算です。
老健施設の「定員1人当たり建設単価」は5年間で52.1%の上昇
老健施設についても同様に見てみると、平米単価は2010年度に16万2000円であったものが、15年度には23万6000円で、7万4000円・45・7%増。定員1人当たり建設単価は、2010年度に845万3000円でしたが、15年度には1285万9000円となり、440万6000円・52.1%の増加となりました。
100床の老健施設を新築すると仮定すると、5年前と比べて建設費だけに限っても4億円超のコスト増となる計算です。
特養ホームの「定員1人当たり建設単価」、首都圏では5年間で48.1%上昇
さらに特養ホームについて、(1)首都圏(2)全国―の地域別に見てみると、首都圏で特に建設単価が高騰していることが分かります。
(1)首都圏
【平米単価】2010年度:21万7000円→15年度:29万7000円(8万円・36.9%増)
【定員1人当たり建設単価】2010年度:869万8000円→15年度:1287万2000円(418万円・48.1%増)
(2)全国
【平米単価】2010年度:19万9000円→15年度:26万2000円(6万3000円・31.7%増)
【定員1人当たり建設単価】2010年度:1003万5000円→15年度:1287万8000円(284万3000円・28.3%増)
なお、都道府県別に特養ホームの平米単価を見ると、最高は神奈川県の32万5000円、最低は香川県の17万9000円となっています。
WAMでは、2020年に開催予定の東京オリンピックに向けた公共工や東北大震災以降の復興事業により、建設需要が増加していることが影響していると分析。ただし、東北3県における特養ホームの平米単価は横ばい(2010年:20万9000円→13年度:28万円→15年度:26万9000円)となっており「高止まり」しているとも見ています。
医療施設・福祉施設に限らず、「建設費は東京五輪までは高止まりする」という見方があることを紹介し、WAMは「医療施設・福祉施設の整備は厳しい状況が続く」とコメントしています。
【変更履歴】
定員1人当たりの単価について誤りがありました。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済です。
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