介護老健施設を病院に次ぐ主力事業とし、医業収益の拡大、経営安定化を―福祉医療機構
2016.12.20.(火)
医業収益が大きくなるほど赤字医療法人の割合は小さくなり、医業収益の拡大には「病院以外の事業(介護事業など)の実施」が関係すると考えられる。特に、介護老人保健施設を「病院に次ぐ主力事業」として展開しているケースでは、医療法人経営が安定する傾向にある―。
こうした状況が、福祉医療機構(WAM)が20日に公表したリサーチレポート「平成27年度 医療法人の経営状況について」から明らかになりました(WAMのサイトはこちら)。
医業収益の拡大が、病院経営安定化の鍵
今般のリサーチレポートは、WAMが貸し付けを行っている1335医療法人の2015年度財務諸表データを用いて分析したものです。
まず2015年度の医療法人の決算状況を見ると、▼医業収益対医業利益率は2.7%(前年度から増減なし)▼経常収益対経常利益率は3.2%(同0.1ポイント減)▼人件費比率は56.5%(同0.6ポイント減)▼医療材料比率は11.8%(同1.4ポイント減)―などとなっています。2015年度は診療報酬改定の中間年であるため、前年度から大きな変化はありません。
次に1335法人を医業収益の規模別に、(1)10億円未満:377法人(2)10億円以上20億円未満:370法人(3)20億円以上30億円未満:210法人(4)30億円以上40億円未満:120法人(5)40億円以上:258法人―に分けて見てみると、▼医業収益対医業利益率がマイナス(つまり赤字)の法人は、医業収益規模が小さいグループに多い▼収益規模の小さい法人では、経営状況にバラつき大きい(医業利益率が極めて高い病院もあれば、極めて低い病院もある)―ことなどが分かりました。WAMでは「医療法人においては、収益規模を拡大して、赤字になりにくい『安定した』経営基盤を築くことが重要」と指摘しています。
介護老健施設を病院に次ぐ主力事業とすることで、医療法人経営が安定
では、医療法人が収益を拡大するにはどういった方策をとるべきでしょう。WAMでは「事業の多角化と収益規模」の関係を分析し、このテーマについて考察しています。
この点、病院を主たる事業といている医療法人について、前述の5区分に沿って「病院以外に保有している施設数」を見ると、収益規模が大きな法人ほど、多くの「病院以外の施設」を保有していることが分かります(▼10億円未満では0.8施設▼10億円以上20億円未満では1.8施設▼20億円以上30億円未満では2.9施設▼30億円以上40億円未満では4.3施設▼40億円以上では7.8施設)。
さらに、「病院以外に保有している施設」の種類別に、医療法人の経営状況を見ると、次のような点も明らかになりました。
▼介護事業(病院を開設し、介護事業を実施している法人):赤字法人の割合が36.7%、医業収益対医業利益率は0.8%
▼介護老人保健施設(病院と老健施設を開設している法人):病院収益が50%以上55%未満では赤字法人の割合は12.6%、医業収益対医業利益率は5.8%、病院収益が55%以上では赤字法人の割合が20.7%、医業収益対医業利益率は2.2%
▼介護事業・老健施設(病院と老健施設を開設し、介護事業も実施している法人):老健収益がその他(介護)収益を上回る場合には、赤字法人の割合は21.0%、医業収益対医業利益率は4.7%、老健収益がその他(介護)収益を下回る場合には、赤字法人の割合は22.2%、医業収益対医業利益率は0.6%
この結果をもとにWAMでは「老健では収益性が高く、これを病院に次ぐ法人の主力事業とすることが、経営の安定につながる」とし、「例えば在宅強化型老健にするなど『病院事業と老健事業との相乗効果』を視野に入れた展開を行うことで、より事業多角化の効果が期待できる」を見通しています。
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