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ライター・三竦の「霞が関ウォッチ」 「社会医療法人」誕生! 優遇税制を実現させたアイデアとは?

2014.12.8.(月)

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 前回に続き、「社会医療法人」の誕生をめぐる舞台裏である。

 医療関係者の危ぐによって名称が固まらなかったため、「公益性の高い医療法人」という呼び名で、新しい医療法人制度の趣旨を仮に表していた。しかし、いよいよ法案を作成する段階になって、こうした趣旨を端的に表す名称を明確にしなければならなくなった。その際、関係者の間で上がっていた論点は2つだ。一つは、「公益性の高い」という趣旨を一言で表す名称は何か、そしてもう一つは、そもそもこの医療法人はほかの一般的な医療法人と何が違うのか、だ。結局、名称を決めるためにも、一般的な医療法人との違いを明らかにすることを優先することになった。

 社会医療法人は、今でこそ5つの事業(救急医療、災害医療、へき地医療、小児医療および周産期医療)のどれかを行うことが法律上、義務付けられている。しかし検討段階では、この新しい医療法人がカバーすべき公益性の高い事業とは何かをめぐって関係者の間でさまざまな議論があった。実際、検討会の報告書では、難病や感染症への対応、臨床研究など多様な例が盛り込まれ、ちょっとした百家争鳴の状況だった。

 医療関係者にしてみれば、患者に提供する医療はすべて大事である。しかし、すべての医療の提供を要件にしてしまうとほかの一般的な医療法人と何も変わらない。医療の中で公益性の有無という線を自ずと引かなければならないが、医療関係者の意見を聴けば聴くほど、物事が決まらないという状況だった。

 こうした中、画期的なアイデアが出された。それが、都道府県の医療計画とこの医療法人の役割を連動させ、都道府県が希望する医療を民間にカバーしてもらうというものだ。「都道府県が希望する医療」が、すなわち国や都道府県が補助金を出して確保しようとしている医療となり、現在の5事業に結び付いていく。

 さらにこのアイデアは、副次的な効果ももたらす。当時、難航していた税制上の優遇措置を得るための経済的な根拠となったのである。つまり、民間にカバーしてもらうことで国や都道府県による補助金の支出や自治体病院への繰り入れが減るのだから、それと優遇措置による税収減が釣り合うという理論であった。

 一つのアイデアから次々と構想がまとまり、いよいよこの医療法人の特徴を端的に表す名称を詰める段階になった。12月も中旬を過ぎ、法案の骨格を固めなければならない押し迫った状況の中、関係者による打ち合わせで決まったのが「社会医療法人」である。結果的に、関係者たちが最優先と捉える優遇税制の担保を目指すにふさわしい名称になったのではないか。

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