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ライター・三竦の「霞ヶ関ウォッチ」 「優遇税制勝ち取れ」 幻の“認定医療法人”に込めた熱意

2014.11.10.(月)

 全国に234ある社会医療法人(2014年10月1日現在)。都道府県知事の認定を受けるためには厳しい要件をクリアする必要があるものの、法人税の非課税措置という魅力的な優遇措置もあって、全国に広く普及してきた。

ライター・三竦

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 人口に膾炙(かいしゃ)した社会医療法人だが、この創設をめぐる議論の過程で厚生労働省が最初に提示した際の名称は「認定医療法人」だった。ところが、議論が煮詰まり省内の検討会による報告書の取りまとめ作業も大詰めの段階になって、この名称に対して厳しい批判が起きた。主な批判は、「認定医療法人」だと、認定を受けない医療法人は都道府県から「認められなかった」と受け止められ、事情をよく理解していない患者から、「認定医療法人」の病院、診療所との治療に差があると誤解されかねないという危ぐである。

 この、単純でしかし的を射た指摘に対し、厚労省側は当初、既に十分に議論された名称で、ある程度関係者にも浸透しつつあることを理由に、変更は不要という受け止め方で、「認定医療法人」の名称で関係団体と調整に入った。ところが、これへの反応は予想以上に厳しく、結局、変更を約束することとなった。その後、代替案の提示は難航し、医療法人制度改革の細部の設計を優先し、新しい法人類型に合った名称を後回しにしたため、「公益性の高い医療法人」という言葉を当てざるを得なくなった。

 しかし、単に都道府県知事から認定を受けるという手続きを表すだけではなく、この「認定医療法人」には制度設計者の強い願いが込められていた。 実は、医療法人制度改革の細部を検討会で議論していた当時、厚労省も含む関係者の最大の関心事は、「公益性の高い医療法人」への税制上の優遇措置をどれだけ担保できるか、にあった。厳しい内容の認定要件を提示して議論を急いだ背景には、これを勝ち取ることを最優先にしようという暗黙の了解があった。ところがこの段階では、優遇措置は税制当局からの裏付けの全くない「絵に描いた餅」に過ぎなかった。

 そこで、将来はこれを必ず勝ち取ろうという夢を込めて関係者たちが提案したのが、「認定医療法人」の名称だった。彼らが参考にしたのは、既に税制上の優遇措置を国税庁長官から受けていた「認定NPO法人」だった。

 結果として幻となった「認定医療法人」だが、大切な税制上の優遇措置が関係者の熱意で実現したことの方が、より有意義だと言えるだろう。

 

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