フェニルケトン尿症など43疾病、7月から医療費助成対象へ-厚労省検討委
2015.2.19.(木)
医療費助成対象となる難病(指定難病)の拡大に向けた議論が進んでいます。厚生労働省は18日、厚生科学審議会疾病対策部会の指定難病検討委員会に、先天性心疾患である「単心室循環症候群」や、先天性代謝異常症の「フェニルケトン尿症」など50疾病を新たな対象の候補に提示しました。検討委員会では「家族性Ⅲ型高脂血症」など7疾病について再検討を求めましたが、残る43疾病については特段の異論は出されておらず、7月から医療費助成対象に含められる可能性が高いと言えます。
今回検討された50疾病には、次のようなものが含まれています。
▽先天的に体循環(血液が心臓から全身の毛細血管を経て、心臓に戻る循環)と肺循環(血液が心臓から肺を経て、心臓に戻る循環)の双方が、機能的に一つの心室にのみ依存する「単心室循環症候群」
▽腎疾患の中で最も予後が悪く、治療も難しい「急速進行性糸球体腎炎」や「抗糸球体基底膜腎炎」
▽末梢気道である細気管支の不可逆的閉塞を各種の原因で来して呼吸不全を呈する「閉塞性細気管支炎」
▽天然型ビタミンD投与では完治しない「ビタミンD抵抗性くる病/骨軟化症」
▽先天性アミノ酸代謝異常症の一種である「フェニルケトン尿症」
ただし、3-43「レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症」、3-44「シトステロール血症」、3-45「タンジール病」、3-46「家族性Ⅲ型高脂血症」、3-47「原発性高カイロミクロン血症」、3-48「脳腱黄色腫症」、3-49「無βリポタンパク血症」の7疾病(先天性脂質代謝異常)については、委員から「指定難病の要件を満たしているのか」と疑問視する指摘があり再検討することになっています。
指定難病と認められるためには、(1)発症の機構が明らかでない(2)治療法が確立していない(3)希少な疾病である(4)長期の療養が必要で、日常生活・社会生活に支障がある(5)患者が国内で一定の人数に達しない(人口の0.1%程度以下)(6)客観的な診断基準か、それに準じる専門家の共通認識がある-という6つの要件を満たす必要があります。しかし、再検討が決まった7疾病では「長期間の服薬や食事制限」が必要ですが、「日常生活・社会生活の支障があるかどうか不明瞭」との指摘がなされたのです。
これに対し厚労省健康局疾病対策の担当者は、「生活習慣によって発症する高脂血症と異なり、先天性の脂質代謝異常では血中の脂質濃度が高く、治療も困難である。指定難病の要件は満たしていると考えている」と述べましたが、委員の指摘を踏まえ再検討することとしています。7疾病が医療費助成対象に追加されるかは微妙な状況です。
指定難病検討委員会は13日には、皮膚疾患、染色体異常などの43疾病について、指定難病に追加することを概ね了承しています。具体的には次のような疾病です。
▽精神発達遅滞、自閉症などの行動異常、上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫、顔面の血管線維腫などの過誤腫を全身に生じる「結節性硬化症」
▽高温・多湿の環境下でも発汗がみられず、熱中症・意識障害などを引き起こす「特発性後天性全身性無汗症」
▽特徴的な妖精様顔貌、精神発達の遅れ、心血管病変、乳児期の高カルシウム血症などを有する隣接遺伝子症候群である「ウィリアムズ症候群」
今月4日に41疾病、13日に43疾病、18日に50疾病の計134疾病を検討し、今回の7疾病を除く127疾病を医療費助成対象に追加する方向が固まったことになります(最終的に約200疾病を追加)。
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