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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

深く示唆に富むデータ分析による戦略的病院経営、PFMなど重要論点をGHC渡辺が日病学会で解説

2018.7.4.(水)

 日本病院会が6月28、29日に石川県金沢市内で開催した「第68回日本病院学会」で、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン(GHC)代表取締役社長の渡辺幸子は、「2025年から2035年に備える戦略的病院経営~深く示唆に富むデータ分析とは」と題して講演(座長はGHCマネジャーの冨吉則行)しました。

 急性期病院にとっての深く示唆に富むデータ分析について、(1)外来から入院、退院から在宅支援までをマネジメントする「PFM(Patient Flow Management)」(2)病床機能適正化(3)機能評価係数II向上――の3つに論点を絞り、事例も交えながら具体的な対策方法を示しました。データ分析はGHCが開発した多機能型経営支援ツール「病院ダッシュボードχ(カイ)」を用いています。

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 PFMは、東海大学病院が起源で社会的入院や入院未収金の患者対策を目的に始まったとされています。組織は、医療資源(経営資源)であるヒト・モノ・カネ・情報・時間・(知的財産)の確保とこれらのマネジメントが重要ですが、より質の高い医療介護の提供と医療資源の効率・効果的運用のためには、医療資源に加え、患者のフローマネジメントという概念が更に重要になります。

 PFMの最小単位は、入院してから退院するまでの治療とケアを計画した「クリティカルパス」です。最も広義のPFMは、「医療」から「介護・生活支援まで見据えた地域包括ケアシステム」の「ケアサイクル」をマネジメントする概念と言えるかもしれません。

 2018年度の改定で導入された「入院時支援加算(退院時1回200点)」(図表)は、入院前つまり外来から入院と退院後を見据えた支援を行った場合の評価で、病院からみた一連の患者フローマネジメントへの期待です。

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 ただ、入院時支援加算の対象が予定患者かつ入退院支援加算を算定する患者(退院困難な要因を有している患者)であることを考えると、退院時に1回200点では投資対効果はそれほど大きくないように見えます。

 しかしこの「入院時支援」は「入院の予定が決まった患者に対し、入院中の治療や入院生活に係る計画に備える」という考え方であり、渡辺は、「外来時点で、入院と退院に向けて患者情報を事前にしっかりと把握して院内スタッフと共有することで、入院中の患者に必要なケアや支援を行うことができ、医療の質向上と経営(加算項目)にプラスの効果が期待できる」と話しています。

 例えば、図表にあるように、外来介入時に把握すべき6つの質問から、入院~退院に向けてやるべきケアや支援を事前に計画するというものです。

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 つまり、外来の時点で「入院医療」と「退院後」を“予測”するのです。“段取り八分”という言葉がありますが、外来介時点で退院までを段取りするという考え方なのです。

 GHCがコンサルティングで支援をしたある病院の入院サポートセンター開設事例を紹介します(図表は病院ダッシュボードχ)。薬剤指導管理、特別食、リハビリテーション総合計画評価、摂食機能療法、総合評価、認知症ケアなどの加算で大きく算定率が飛躍的に向上しました。外来介入時に計画を立てる“段取り八分”の効果です。

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 急性期病院が自院の今後の最適な病床機能を判断する上で、重症患者割合は最も重要な指標の一つです。2018年度診療報酬では、この重症患者割合を決める「重症度、医療・看護必要度」のデータ提出方法を見直し、新たにDPCのEF統合ファイルデータを用いる「看護必要度II」が加わりました(看護必要度の評価票を用いる従来型は「看護必要度I」)。看護師による評価票への記録負荷軽減や、看護必要度データとDPCデータとの間に生じるデータ格差を解消することなどが狙いです。

 渡辺は「重症患者割合に余裕があれば、いち早く看護必要度IIでの提出を検討した方がいい」としました。近い将来、看護必要度Iが廃止になり、看護必要度IIに統一される可能性を否定できないためです。

 また仮に2年後の次の改定で看護必要度IIへの統一があった場合、看護必要度データの精度に問題があれば、現状の施設基準をクリアできないことにもなりかねないためデータ精度の向上は急務です。またデータ精度に問題があれば、病床機能の適正化も目指せません。図表の第二象限は看護必要度データがあるのにDPC請求データがない、つまり過剰評価または請求漏れ、第四象限は看護必要度データがないのにDPC請求データがある、つまり必要度チェック漏れ。これらのデータ精度を上げていくことが求められます。

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 渡辺は、A項目は他病院や病棟同士のベンチマークによって、C項目は完全一致、B項目はB項目同士の相関関係によって、データ精度のカイゼンが可能であることを話しました。さらに、疾患別ベンチマークから、A項目やB項目の漏れの可能性が検証できるという事も示唆しました(図表)。

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 機能評価係数IIについては、渡辺は「急性期度を評価する指標に等しい」と指摘。その上で、中でも改善しやすい「効率性係数」「複雑性係数」「カバー率」「救急医療係数」の4つについて、具体的な改善方法を病院ダッシュボードχを用いて解説しました(図表)。

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解説を担当したコンサルタント 冨吉 則行(とみよし・のりゆき)

tomiyoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
早稲田大学社会科学部卒業。日系製薬会社を経て、入社。DPC分析、人財育成トレーニング、病床戦略支援、コスト削減、看護部改善支援などを得意とする。金沢赤十字病院(事例紹介はこちら)、愛媛県立中央病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う(関連記事「病院が変化の先頭に立つために今できるたった3つのこと」)。
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