消費税アップの負担増「診療報酬対応に限界」-日病協調査、「税制改正で抜本対応を」
2015.3.2.(月)
日本病院会や日本医療法人協会などが加盟する日本病院団体協議会が27日、記者会見を開き、303病院を対象に行った「医療機関における消費税に関する調査」の結果が報告されました。そこからは▽病院全体では消費税率引き上げのうち84.2%しか診療報酬改定で補てんしきれておらず、病院間でばらつきが著しい▽病床規模別にみると、大規模病院で補てんの割合が低い▽病院全体では344億円の補てん不足が生じていると推計できる-ことなどが明らかとなっています。
会見に臨んだ日本社会医療法人協議会の伊藤伸一副会長は、「診療報酬改定による補てん方式の限界があらためて浮き彫りとなった。税の問題は税の中で解決すべきであり、診療報酬への消費税課税が必要である」とコメントしています。
「医療機関における消費税に関する調査」には、四病院団体協議会や日病協に加盟する303の病院から有効な回答が寄せられました。
調査は、2013年度の事業実績に、「5%から8%への消費増税」と「14年度診療報酬改定による補てん」を加味して推計しています。改定による「補てん(収入増)」が、消費増税による「経費増」をどの程度カバーしているかを「補てん率」と考えています。
すると、消費増税分に伴う負担増を改定によって補てんしきれていない病院が全体の65.3%に上り、補てん率が50%に満たない病院も4.6%あります。一方で、消費増税分を超える収入増があった病院は全体の34.7%で、補てん率が150%を超える病院も13.9%あります。日病協では「補てん率の低い病院は、支出における給与費の割合が低い」という特徴があると指摘しています。補てん率の中央値は84.2%ですが、非常にばらつきが大きなことが分かります。
また、病床規模別に見ると、199床以下の病院では平均99.2%の補てんされていますが、200-399床では平均87.2%、400床以上では平均70.5%しか補てんされておらず、「規模の大きな病院では消費増税により厳しい状況となっている」と伺えます。また、400床以上の補てん率は、ほかの規模に比べて「ばらつきが著しく大きい」ことも分かりました。
さらに、この調査結果を国内の全8540病院に広げると、「総額344億円の補てん不足がある」と、日病協では推計しています。
日本医療法人協会の加納繁照副会長は、「政府は14年度診療報酬改定で診療所に600億円、病院に1600億円を配分し、消費増税対応を行うと説明していたが、実際には344億円の不足と考えられる」とし、消費増税への診療報酬上の対応が不十分であったことを訴えています。
また、日本社会医療法人協議会の伊藤副会長は、「特に大病院では、病院ごとの(補てん率の)ばらつきが大きく、診療報酬プラス改定では消費増税に適切に対応できないことが明らかになった」と強調。さらに会見終了後、メディ・ウォッチ編集部の取材に「税によって生じた不具合は、税の中で解決すべき。現在、診療報酬では消費税非課税となっているが、課税制度に改める必要がある」とコメントしました。
なお、この日の会見では、診療報酬改定の基礎資料にするため、中央社会保険医療協議会が実施する「医療経済実態調査」にもコメントしています。医療経済実態調査(医療機関等調査)では現在、全病院の3分の1を抽出して、改定前後の経営状況を調べています。しかし、有効回答率は3割程度にとどまっており、全体の10%程度という状況です。
国立病院機構の楠岡英雄理事は、「実態調査の結果は、これまで改定における参考資料に過ぎなかったが、今後、改定を反映させる指標の一つにしてはどうかという議論がある。しかし、病院の実態を正確に反映させるものではない」とし、将来的に(1)全数調査(2)毎年度調査(現在は隔年調査)-とすることを要望していく考えを表明しました。
なお、16年度の報酬改定に向けた実態調査については「会員病院に協力を要請し、有効回答100%を目指す」とも付言しました。
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