医療費助成の指定難病を概ね決定、胆道閉鎖症など7月から約200疾病
2015.3.10.(火)
7月から新たに医療費助成の対象となる指定難病がほぼ固まりました。9日に開かれた厚生科学審議会疾病対策部会の指定難病検討委員会では、「胆道閉鎖症」や「ポルフィリン病」「骨形成不全症」など44疾病を指定難病に追加することを概ねで了承。逆に、「NK(ナチュラルキラー)細胞白血病」や「肝細胞がん」など390の疾病については、ほかの医療費助成制度があるなど、指定難病の要件を満たさないものとして7月からの助成対象に含めないことも決まりました。
次回19日の会合に厚生労働省から最終案として約200疾病が提示され、その後、パブリックコメントなどを経て、7月1日から医療費助成対象疾患が大幅に拡大(1月からの110疾病と合わせて約300疾病に拡大)されることになります。
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今回検討された44疾病には、次のようなものが含まれています。
▽発作性の発熱や随伴症状として漿膜炎による激しい疼痛が特徴の「家族性地中海熱」
▽全身の骨脆弱性による易骨折性や進行性の骨変形に加え、さまざまな程度の結合組織症状を示す先天性疾患の「骨形成不全症」
▽酵素の活性低下によってポルフィリン体かはその前駆体が蓄積することで発症する「ポルフィリン症」
▽腸管からの葉酸吸収不全と脈絡膜における取り込み障害により、乳児期早期から巨赤芽球性貧血や免疫不全、精神発達障害などを来す「先天性葉酸吸収不全症」
▽新生児期から乳児期早期に発症する難治性の胆汁うっ血疾患の「胆道閉鎖症」
▽40歳未満の若年で発症する両側性感音難聴の「若年発症型両側性感音難聴」
これらの疾患は、いずれも要件を満たすものとして指定難病に追加することが概ね了承されました。
検討委員会では615の疾患について、次のような指定難病の要件を満たすかどうかを検討してきました。
▽発症の機構が明らかでない
▽治療法が確立していない
▽長期の療養が必要で、日常生活・社会生活に支障がある
▽患者が国内で一定の人数に達しない(人口の0.1%程度以下と希少である)
▽客観的な診断基準か、それに準じる専門家の共通認識がある
▽ほかに医療費助成制度がない
これまで、2月4日に「先天性ミオパチー」など41疾病、同13日に「結節性硬化症」など43疾病、同18日に「フェニルケトン尿症」など50疾病、さらに今回3月9日に「胆道閉鎖症」など44疾病の合計174疾病について検討を行い、先天性脂質代謝異常の7疾病を除く167疾病を指定難病に追加することを了承しています。
このほか「紀伊ALSPDC」や「ミトコンドリア遺伝性難聴」「周期性血症板減少症」「筋強直性ジストロフィー」「早期ミオクロニー脳症」など47の疾病については、独立した診断基準が十分に確立されていないことから、▽1月から既に指定難病となっている110疾病▽既に検討された174疾病(上記)-のいずれかに含めて指定難病とできないかを検討することとなっています。
例えば「紀伊ALSPDC」の患者については、「筋委縮性側索硬化症(ALS)」か「パーキンソン病」のいずれかの基準に合致すれば指定難病患者として医療費助成する方向で調整されます。詳細は、19日の最終案の中で示されます。
なお、千葉勉委員長(京都大学大学院医学研究科消化器内科学講座教授)らから「指定難病の疾病名は可能な限り、国際疾病分類に合わせるべきだ」との指摘があったことなどを受け、「疾病を細分化や統合」といった調整も行われます。そのため、最終的には約200の疾病が指定難病の最終案に盛り込まれる見通しです。
一方、指定難病の上記の要件に照らして検討すると、615疾病のうち390の疾病は要件を満たさないことも分かりました。例えば、「NK(ナチュラルキラー)細胞白血病」や「悪性黒色腫」「肝細胞がん」などの腫瘍性病変は「がん対策基本法」に基づく支援制度があるため、指定難病からは除外されました。また、「肝内結石症」については破砕術という治療法が確立していることから、「Naxos病」や「グリセロール尿症」などは全世代に共通する診断基準が十分に確立していないことから除外される方向です。
ただし除外候補に入っている「Perry症候群」については、委員から「確立した診断基準がある」との意見も出されており、再度調整されます。