医薬分業「費用対効果の検証を」-規制改革会議が公開討論
2015.3.12.(木)
政府の規制改革会議は12日、医薬分業をめぐる規制の見直しをテーマに公開討論を開き、日本医師会や健康保険組合連合会などの関係者らが参加しました。医薬分業の推進に伴う患者負担の増加に見合うだけの効果があるのかや、医療機関と薬局を分離した形で運営する形態が利便性を妨げていないかが主な論点になり、参加者からは医薬分業の費用対効果を検証すべきだという意見が出ました。
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公開討論に参加したのは、日医の今村聡副会長、健保連の白川修二副会長、日本薬剤師会の森昌平副会長、東京医科歯科大学大学院の川渕孝一教授、日本在宅薬剤師会のほか、厚生労働省の成田昌稔・大臣官房審議官らです。
同会議では、医療など各分野の規制見直しの方向性を6月にまとめる「第3次答申」に盛り込む方針で、医薬分業の取り扱いもここに向けて具体化を進めます。ただ、岡素之議長は公開討論後の記者会見で、「議論に着手したばかりで結論が見えているわけではない」と、6月以降に結論を先送りする可能性も示唆しました。
医薬分業は、医師(医療機関)が診療を、薬剤師(薬局)が調剤をそれぞれ担当する仕組みで、患者は医師が処方した処方せんを薬局に提示して、薬剤師から薬を受け取ります。医療機関と薬局を「一体的な構造」にしたり、一体的に経営したりすることは認められていません。
医薬分業のメリットとして厚労省では、医師と薬剤師がそれぞれの専門性を発揮することで薬物療法の有効性や安全性が高まる点を挙げているほか、医療機関の薬剤管理コスト削減など医療保険財政の効率化にもつながるとしています。
しかし、内閣府がインターネット上で実施したアンケート調査では、医薬分業のメリットに関する質問に「分からない・特にない」と答えた人が最多でした。また、医薬分業に伴う処方せん料と調剤基本料の支払いによって患者の負担はむしろ増えるため、コスト削減の効果を疑問視する声もあります。
12日の公開討論で白川氏は「われわれは基本的には、医薬分業を推進すべきだという立場だ」と述べる一方で、「院外処方でコストが増えているのは間違いない」「それに見合うほど調剤薬局の機能は十分ではない」などと指摘しました。今村氏は「処方せんには病名が書かれていないので、処方せんだけを使ってできる指導には限界がある。医師と薬剤師の連携が最も大事」と述べました。
川渕氏は、医療機関からの機能面と経済面の独立性を担保した上で、病院の敷地内に薬局を開業する「院内薬局」を、患者の選択肢を増やす観点から認めるべきだと提言しました。患者に情報提供しやすくなるほか、土地取得費などのコストが不要なため安定経営を見込めるという主張ですが、厚労省側は「医療機関内に薬局を置くと、その医療機関からの処方せんが誘導される」などと難色を示しました。