7月から医療費助成対象の難病を196疾病追加、計306疾病に―厚労省検討会
2015.3.20.(金)
7月から新たに医療費助成対象(第二次実施分)となる難病(指定難病)が196疾病にほぼ固まりました。厚生労働省は196疾病についてパブリックコメントを募集し、その結果を踏まえて5月初旬に正式決定します。
既に1月から医療費助成対象となっている110疾病と合わせて、306疾病の患者(約150万人と推計)に7月から医療費が助成されます。
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新たな難病対策については、医療費助成対象となる難病(指定難病)の拡大を最重要事項の1つに据えています。1月から既に110疾病が助成対象となり(第一次実施分)、7月から対象疾病をさらに拡大する(第二次実施分)こととなっています。
指定難病の要件は大きく次の5つ。
(1)発病の機構が明らかでない
(2)治療法が確立していない
(3)長期の療養を必要とし、日常生活・社会生活に支障がある
(4)患者数が人口の0.1%程度に達しない
(5)客観的な診断基準などが確立している
厚生科学審議会疾病対策部会の指定難病検討委員会では、比較的研究の進んでいる615疾病(これに56の包括病名も加わる)についてこれら5要件を満たすかどうかを1月から検討してきました。
その結果、先天性ミオパチーや筋ジストロフィー、結節性硬化症、フェニルケトン尿症、胆道閉鎖症など225疾病が要件を満たすことを確認。その上で、病名の整理などを行い、最終的に196を7月からの助成対象とする方針が固まりました。
残りの390疾病(615-225)については、現時点では5要件のいずれかを満たしていませんが、今後の検討によって指定難病に別途追加される可能性があります。
厚労省は今年秋から、ほかの疾病についての情報収集や、1月から対象となっている110の疾病の診断基準や重症度分類について精査を行い、指定難病のさらなる拡大(第三次実施)に向けた議論も2015年度中に開始される見込みです。
1月からの指定難病(第一次実施分、110疾病)と、今回固まった196疾病(第二次実施分)を合わせて、7月から306疾病の患者に医療費助成が行われます。対象患者数は約150万人(第一次実施分が約120万人、第二次実施分が約30万人)と推計されています。
ところで、これまでの検討委員会の議論では、▽レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ欠損症▽シトステロール血症▽タンジール病▽家族性Ⅲ型高脂血症▽原発性高カイロミクロン血症▽脳腱黄色腫症▽無βリポタンパク血症―の7つの疾病(先天性脂質代謝異常)については、委員から「長期間の服薬や食事制限は必要だが、日常生活・社会生活の支障があるかどうか不明瞭である」との指摘があり、再検討することになっていました。
この点に関連して厚労省は、「診断時点では必ずしも日常生活に支障のある症状を認めないが、次の2つの条件をいずれも満たす場合」には、5つの要件のうち(3)「長期の療養を必要とし、日常生活・社会生活に支障がある」に含まれることを明確にしました。
▽致死的な合併症を発症するリスクが、若年で通常より著しく高い
▽致死的な合併症を発症するリスクを軽減するための治療として、侵襲性の高い治療(例えばアフェレーシス治療)を頻回かつ継続的に必要とする
その結果、再検討となっていた7疾病のうち「家族性Ⅲ型高脂血症」を除く6疾病を指定難病に追加することが認められています。なお「家族性Ⅲ型高脂血症」については、さらなる研究を行い、要件を満たすかどうか再検討される見込みです。
また、進行性のパーキソニズムや精神症状、低換気障害などを特徴とする「ペリー症候群」についても、要件を満たしていることが19日の検討委員会で確認され、指定難病に追加されています。
ところで、個々の疾病を見ると、軽症から重症までさまざまな状態の患者がいます。この点、難病対策では、疾病ごとに「重症度」基準を設け、その基準を満たす患者について医療費を助成することとしています。
検討委員会では、196疾病の「診断基準」と「重症度分類」についても取りまとめています。ただし、この基準・分類を一律に適応すると「必要な支援を受けられない」ケースが出てくることが予想されますので、次のような「診断基準・重症度分類の適応にあたっての留意事項」も明確にされています。医療現場で柔軟な対応を取れるようになると期待できます。
(A)病名診断に用いる臨床症状、検査所見などに関して、診断基準上に特段の規定がない場合には「いずれの時期のもの」を用いても差し支えない。ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状などであって、確認可能なものに限る。
(B)治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で「直近6か月で最も悪い状態を医師が判断する」こととする。
(C)症状の程度が重症度分類で一定以上に該当しないが「高額な医療を継続することが必要な者」については、医療費助成の対象とする。
留意事項(A)は、例えば小児慢性疾患の対象疾病として小児期に診断され、成人後に新たな指定難病の助成を受ける際に、確認可能であれば「小児期の診断」を用いることを可能にするというものです。
また留意事項(B)は難病患者の状態には「波」があるという指摘を踏まえた留意事項です。