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病院リハスタッフの6割「高齢者への維持期外来リハ継続」を希望―介護給付費分科会・研究委員会

2015.3.20.(金)

 病院などで働くリハビリテーションスタッフの6割が「維持期リハビリ患者は医療保険の外来リハビリを継続すべき」と考えており、その理由として「介護保険のリハビリでは機能を改善・維持することが難しい」ことを挙げていることが、厚生労働省の調査で分かりました。

 これは、2012年度の介護報酬改定による効果の検証調査から明らかになったもので、20日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」で報告されました。調査分析を行った川越雅弘委員(国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部長)は、「要介護者に対する維持期の外来リハビリを16年度で廃止することは難しい。今回の調査で医療保険リハビリを介護保険リハビリに移行するための課題が明らかになったので、一つひとつ対処していく必要がある」との考えを述べています。

3月20日に開催された、「第7回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会」

3月20日に開催された、「第7回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護報酬改定検証・研究委員会」

12年度介護報酬改定の影響・効果を検証し、15年度改定に反映

 診療報酬と同じく、介護報酬でも改定の影響・効果を調査分析し、その結果を次回改定に反映させるという仕組みが09年度から導入されています。20日に報告された調査結果は前回12年度改定の影響・効果に関するもので、速報が昨年秋に示されており、その内容は既に今回の15年度介護報酬改定に反映されています。

 調査は、改定の影響が出る時期によって▽12年度▽13年度▽14年度―の3段階に分けて行われており、14年度の調査項目は次の7つです。

(1)介護保険制度におけるサービスの質の評価

(2)集合住宅の入居者を対象としたケアマネジメントの実態

(3)複合型サービスにおけるサービス提供実態

(4)介護老人保健施設の在宅復帰支援

(5)介護サービス事業所における医療職の勤務実態、医療・看護の提供実態

(6)リハビリテーションにおける医療と介護連携

(7)中山間地域などにおける訪問系・通所系サービスの評価のあり方

 このうち(6)のリハビリについて調査分析結果を見てみましょう。

 なお、20日の研究委員会では調査結果が概ね了承されており、25日の介護給付費分科会に報告されます。

病院リハスタッフの多く「介護保険リハの効果」を疑問視

 高齢者リハビリについては、▽維持期・生活期のリハビリは医療保険から介護保険に移行すべきではないか▽介護保険のリハビリは身体機能改善だけでなく活動や社会参加も目標に加えるべきではないか―など、さまざまな課題が指摘されています。

 後者については、今回の介護報酬改定に向けた論議でも重要テーマの一つとなり、「リハビリマネジメントの強化」「リハビリ機能の特性を生かしたプログラムの充実」を柱とする大きな見直しが行われました。

 一方、前者については診療報酬の側面から「要介護被保険者に対する運動器・脳血管疾患の維持期リハは、介護保険に移行する」という視点で検討が重ねられています。直近の14年度診療報酬改定では、次のような見直しが行われました。

▽過去1年間に介護保険の通所リハなどの実施実績のない医療機関では、入院以外の患者に対する維持期リハ(運動器、脳血管疾患など)を90%に減額する

▽要介護被保険者に対する維持期の運動器、脳血管疾患などのリハは、介護保険リハの状況を勘案した上で、医療保険給付を16年度までとする

 そのため、今般の調査には「高齢者への維持期リハを介護保険に移行できるのか」という視点も盛り込まれています。

 まず医療保険の外来リハビリを受けている患者が「医療保険リハビリの継続」を希望する理由(複数回答)としては、「身体機能を治したい」が最も多く85.5%ですが、次いで「担当のリハビリ職にこれからも診てもらいたい」が76.2%に上っています。

 一方、リハビリを提供するスタッフは、「状態の改善が期待できない」患者に医療保険の外来リハビリを継続する理由(複数回答)として、「家族が希望している」(39.4%)、「患者の心理的抵抗感が大きい」(38.4%)、「患者がリハビリの質が下がると思っている」(30.6%)ことなどを挙げています。

 さらに、リハビリスタッフの60.2%は「高齢者への維持期外来リハビリをできるだけ継続すべき」と考えていることも分かりました。その理由(単数回答)としては、「介護保険のリハビリでは機能を改善・維持することが難しい」が最も多く41.7%を占めています。

16年度診療報酬改定でのリハ移行に「待った」

 調査結果について、今村知明委員(奈良県立医科大学教授)は「高齢者の維持期リハビリを、16年度から介護保険へ移行すると大きな混乱を招くのではないか」と指摘。

 また調査研究を行った川越委員は、「高齢者の維持期リハビリを医療保険から全面移行するのではなく、今回浮かび上がった課題に一つひとつ対処していくことが重要ではないか」と強調しました。

 川越委員が指摘する課題の一つに「リハビリの説明」という点があります。川越委員は病院などのリハビリスタッフの4割が「介護保険リハでは機能改善・維持が困難」と考えているとの調査結果を受け、「病院のリハビリスタッフには、介護保険リハビリの目的や実態を正確に把握していない人も少なくない」と分析。その上で、「患者のニーズを満たすためには、医療保険と介護保険の双方のリハビリを理解し、患者に選択肢を提示しなければならない。患者へのリハビリの説明者を誰にするかも含めて大きな課題と感じている」と述べています。

複合型サービス、利用者の状態に合わせた報酬に改定

 また(3)の複合型サービス(小規模多機能型+訪問看護、15年度改定で看護小規模多機能型居宅介護に名称変更)については、「訪問看護を利用する人」と「訪問看護は利用せず、小規模多機能型だけ利用する人」が混在している実態が浮き彫りとなっています。

 しかし従来、介護報酬上は複合型サービスのほうが小規模多機能型よりも高い単位数が設定していたため、「複合型サービスの小規模多機能型部分だけを利用する人」で不均衡が生じていました。

 そこで今回の報酬改定では、訪問看護利用者が少ない場合の「訪問看護体制減算」(925-2914単位の減算)を設け、不均衡の是正措置が図られています。

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