難病患者への医療提供体制や療養環境整備の基本方針、今夏に告示へ―厚労省
2015.3.26.(木)
社会保障・税一体改革の一環として「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が2014年5月に成立しました。難病法は、「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」(以下、基本方針)を定めるよう厚生労働相に指示しています。
これを受けて厚生科学審議会・疾病対策部会の「難病対策委員会」で、基本方針の策定に向けた検討が始まっています。委員会では、関係者からのヒアリングを含めた議論を進めており、今年夏ごろには基本方針が告示される見込みです。
基本方針に定める事項は次の8つ。
(1)難病の患者に対する医療等の推進の基本的な方向
(2)難病の患者に対する医療を提供する体制の確保に関する事項
(3)難病の患者に対する医療に関する人材の養成に関する事項
(4)難病に関する調査および研究に関する事項
(5)難病の患者に対する医療のための医薬品および医療機器に関する研究開発の推進に関する事項
(6)難病の患者の療養生活の環境整備に関する事項
(7)難病の患者に対する医療などと難病の患者に対する福祉サービスに関する施策、就労の支援に関する施策その他の関連する施策との連携に関する事項
(8)その他難病の患者に対する医療等の推進に関する重要事項
26日に開かれた委員会では、(6)の「療養環境の整備」、(7)の「福祉サービスや就労支援」、(8)の「その他の重要事項」を検討しました。
このうち(6)の「療養環境の整備」について、難病法では▽難病相談支援センター事業▽難病患者等ホームヘルパー養成研究事業▽在宅人口呼吸器使用患者支援事業―が位置付けられています。
難病相談支援センターは都道府県に設置され、保健所と連携して難病患者に対して▽ピアサポート(難病患者自身によるサポート)などの日常生活・療養生活に関する相談・支援▽地域交流活動の促進▽就労支援―などを行います。佐賀県では、センターの運営が患者団体の「NPO法人佐賀県難病支援ネットワーク」に委託されており、年末年始と月曜を除いて、多くの難病患者の相談に対応しています。同センターで患者支援を行っている伊藤佳世子参考人(相談支援事業所こすもす・相談支援専門員)は「13年度には年間7332件、1か月当たり611件の相談が寄せられている」と紹介しました。この驚異的な数字には委員からも感嘆の声が寄せられましたが、伊藤参考人は「患者同士が支援し合うピアサポートに特に力を入れている。わたしもかつて難病に罹患していたが、同じ患者なので相談しやすいのではないか」と分析しています。
一方、島根県では、難病法の制定前から、個別の難病患者に対し▽訪問相談▽医療相談▽訪問指導―の3つの支援を積極的に展開しています。さらに、個別支援で得られた情報や課題をセンターや保健所、県の担当者らの「難病医療連絡協議会」に持ち寄り、そこで共有することによってさらなる支援の充実を図るというサイクルを回しています。
中でも人工呼吸器を使用する在宅患者への支援が充実しており、11年度には「在宅における人口呼吸器安全使用のガイドライン」を既に作成していました。これは、地域の在宅療養患者が人工呼吸器を使用する中で、▽適切な保守点検の実施と日常点検の充実▽家族への指導の充実▽緊急時などにおける事故予防対策―などが求められているという実態に着目し、病院、医師会、訪問看護ステーション協会、患者団体、行政が一丸となって検討した結果をまとめたものです。こうした先進的な取り組みに対し、委員からは賛嘆の声が相次ぎました。
医療提供体制などに関する議論は、指定難病の拡大(7月から306疾患になる見込み)の大枠が固まるのを待って本格化する予定です。
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