Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 DPC特定病院群への昇格・維持のために今やるべきこと

病院対象のヘルスケアリート、ガイドラインに「経営介入禁止」などを規定せよ―日医総研WP

2015.4.16.(木)

 日本医師会総合政策研究機構(日医総研)はこのほど、医療・介護分野への「ヘルスケアリート」の導入について考察したワーキングペーパーを公表しました。そこでは、▽病院に投資するリートでは、一般リートよりもさらに徹底した情報開示を義務付けるべき▽ガイドラインに「賃借料の上限」「経営介入禁止」「病院側の意向を最大限に尊重した修繕・改築などの実行」などの規定を設けるべき―といった提言を行っています。

 国土交通省の「病院等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン検討委員会」報告書にも一定の影響を与えそうです。

ヘルスケアリート、投資家側の意向を反映

 ヘルスケアリートとは、多くの投資家から募った資金を元に高齢者住宅や病院などを建設して病院経営者などに賃貸・売却し、そこで得た利益を投資家に分配する投資商品です。2015年3月末現在、ヘルスケア施設を対象としたリート商品は既に2ファンドあり、ほかに投資資産の一部にヘルスケア施設を組み込んだリートもあります。

リートの基本的な構造

リートの基本的な構造

 アベノミクスの「三本の矢」の1つである成長戦略(日本再興戦略)では、「民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用に向け、高齢者向け住宅等の取得・運用に関するガイドラインの整備、普及啓発などを行う」と打ち出しており、高齢者向け住宅(サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム)を対象とするヘルスケアリート活用ガイドラインを国交省の検討会が14年6月、既にまとめています。

 同省では、病院を対象としたヘルスケアリート活用に関するガイドラインの議論も進めており、近く報告書が取りまとめられる予定です。高齢者向け住宅とは別枠で検討している背景には「病院の価値は、不動産にとどまらず、提供している医療サービスの評価が極めて重要になる」「病院をヘルスケアリートの対象とすることは、医療法の『非営利原則』に馴染むのかといった懸念が病院・医療関係者等に根強い」という点があります。

病院と高齢者向け住宅には、施設の特性上、非常に大きな違いがある

病院と高齢者向け住宅には、施設の特性上、非常に大きな違いがある

 この点に関連して日医総研は、ヘルスケアリートは「医療・介護の世界が望んだものではなく、投資側の視点や意向を反映したもの」で、「できるだけ高い分配金を投資マネーに還元すること」が使命だと指摘します。

ヘルスケアリートにはメリットとデメリット

 日医総研の分析によれば、ヘルスケアリートには、投資側に▽不動産の流動化・証券化やリートの投資に適合している▽リート市場の拡大を実現できる▽投資先の選択肢が増える▽超高齢化に伸展と政策の後押しにより着実な成長が期待できる▽銀行などのビジネス戦略上も好都合な存在である―といったメリットがあるといいます。

 また、病院側には▽資金調達の多様化▽不動産所有の財務コストや関連するリスク負担の軽減▽財務的な資金制約などをあまり受けない形での事業展開の可能性―といったメリットがあると指摘されていますが、日医総研は「資金調達などのメリットを享受できるのはチェーン展開を図る一部病院に限られるのではないか」と見通しています。

 一方、病院側のデメリットとして次のようなものを挙げ、「経営介入を可能な限り防止する必要がある」と日医総研は強調しています。

▽賃借のコストは自己所有に比べて理論上、割高でり、それを患者に転嫁できない

▽市場によっては、賃借料が上昇するリスクがある

▽自己所有ではないため、建物の修繕や設備投資などが、病院の現場の意向通りに実行されない恐れがある

▽投資家保護が最優先されるため、経営が束縛される恐れがある

病院経営への介入禁止などをガイドラインに規定せよ

 さらに日医総研は、「投資家は病院を対象としたヘルスケアリートに過大なリターンを期待している」「病院経営は『制度』に大きな影響を受け、そのリスクの認識が不十分である」などと指摘し、次のように提言しています。

(1)病院に投資するリートは「社会貢献型ファンド」と位置付け、高リターンを追わず、経営介入を行わない運営とすべきである

(2)高リターン追求を防止するために「投資家への分配金について、上限規制を設ける」ことを検討すべきである

(3)すべて上場リートとし(私募リートは認めない)、一般リートよりもさらに徹底した情報開示を義務付けるべきである

(4)地域の医療関係者、患者、住民、行政などがチェックできるよう、リートに情報開示させるべきである

(5)「賃貸料の上限などの規定」「リートやグループ会社による病院経営への介入を防止する規定」「病院側の意向を最大限尊重した修繕・改築などを可能とする規定」「転売などによって施設利用者・患者に不利益が発生しないような規定」をガイドラインに設ける

【関連記事】

病院を対象としたヘルスケアリート、医療側は「病院経営への介入」を強く懸念-国交省検討会

診療報酬改定セミナー2024