7月から医療費助成となる196の指定難病を正式決定―厚科審の疾病対策部会
2015.5.1.(金)
厚生科学審議会の疾病対策部会が1日、新たに医療費助成の対象となる196の指定難病を了承しました。今月中旬の告示などを経て、7月1日から医療費助成が開始されます。
厚生労働省はホームページなどで196の疾病について、医療費助成が新たに行われることを積極的にPRしますが、いずれも希少な疾病で対象となる患者のほとんどは専門の医師が把握していることから、助成は着実に行われると見られます。
指定難病の拡大については、同部会の下部組織である指定難病検討委員会で対象の選定や検討が行われ、4月28日に196疾病とすることを固めました。この日の部会では、原案通り196疾病を指定難病とし、新たに7月から医療費助成を行うことが了承されました。
196疾病には、例えば次のようなものが含まれています。
▽骨格筋の先天的な構造異常によって、新生児期・乳児期から筋力や筋緊張の低下が生じ、さらに呼吸障害、心合併症、関節拘縮、側弯、発育・発達の遅れなどを認める疾患群「先天性ミオパチー」
▽骨格筋の障害に伴う運動機能障害を主症状とし、ほかに関節拘縮・変形、呼吸機能障害、心筋障害、嚥下機能障害、消化管症状、骨代謝異常、内分泌代謝異常、眼症状、難聴、中枢神経障害などを合併することも多い全身性疾患の「筋ジストロフィー」
▽てんかんや精神発達遅滞、自閉症などの行動異常や上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫、LAM(リンパ脈管筋腫)、顔面の血管線維腫などの過誤腫を全身に生じる「結節性硬化症」
▽特徴的な妖精様顔貌、精神発達の遅れ、大動脈弁上狭窄および末梢性肺動脈狭窄を主な特徴とする心血管病変、乳児期の高カルシウム血症などを有する隣接遺伝子症候群の「ウィリアムズ症候群」
▽特発性もしくはさまざまな原因によって末梢気道である細気管支の不可逆的閉塞を来すことによって呼吸不全を呈する「閉塞性細気管支炎」
▽フェニルアラニンの代謝経路の障害によって、過剰なフェニルアラニンが体内に蓄積され、新生児・乳児期では脳構築障害による精神発達遅滞を代表とする臨床症状を引き起こし、成人期にもさまざまな精神症状を引き起こす遺伝子疾患の「フェニルケトン尿症」
▽原因不明な無菌性・非腫瘍性の骨・骨髄の炎症性疾患で、骨痛およびその部位に一致した皮膚の熱感と発赤が生じる「慢性再発性多発性骨髄炎」
▽1万-1万5000人に1人の割合で発生し、主に肝門部で胆管が閉塞して難治性の胆汁うっ滞が生じる「胆道閉鎖症」
政府は難病対策を1972年から行っていますが、制度の根拠となる法律がありませんでした。このため「安定的な難病患者への支援」を求める声が高まり、制度開始から45年を経て、難病対策の基本法が2014年6月に成立しています。
基本法は、(1)効率的な治療方法の開発と医療の質の向上(2)公平・安定的な医療費助成の仕組みの構築(3)国民の理解の促進と社会参加のための施策の充実―の3つの柱で構成され、(2)の医療費助成では▽患者負担を3割から2割に軽減する▽所得などに応じた負担上限を設ける―などのほか、医療費助成の対象となる疾病を大幅に拡大することが打ち出されました。
医療費の助成対象となる疾病については、従来の56疾病(特定疾患治療研究事業)から約300疾病に拡大することとされ、具体的な検討が指定難病検討委員会で進められました。
約300疾病への拡大にあたって、疾病選択の「基準」は次のように定められており、がんや感染症などほかの施策によって患者支援が行われるものは対象となりません。
▽発病の機構が明らかでない
▽治療方法が確立していない
▽希少な疾病で、患者数がおおむね人口の0.1%以下(当面は約18万人未満とする)
▽長期の療養を必要とし、日常生活・社会生活に支障がある
▽客観的な診断基準や、それに準ずるものが確立している
この基準に適合する疾病に罹患(りかん)し、かつ重症であることが医療費助成の要件ですが、疾病の拡大は今年1月から110疾病(第1次実施分)、7月からさらに196疾病(第2次実施分)の2段階に分けて行われます。
厚労省健康局疾病対策課の担当者は「拡大された疾病などの積極的な周知に、ホームページなどを通じて努める」と強調しています。ただし、「希少疾病」であることから、拡大される196の指定難病に罹患している患者のほとんどは研究を行っている専門医が把握しているとみられ、医療費助成は円滑・着実に行われると考えられます。
1日の部会では、伊藤たてお参考人(日本難病・疾病団体協議会代表理事)から「指定難病の基準などに合致しなかった疾病も今後、検討対象にしてほしい」と要望しました。これに対し、指定難病検討委員会の千葉勉委員長(京都大学大学院総合生存学館思修館特定教授)は「今回の拡大にあたっては、検討のための時間が限られていたこともあり、既に研究班が設置されるなど研究が進んでいる615の疾病を対象に、基準の該当性などを中心に検討した。しかし、研究班のない難病もあり今後、医療費助成の対象とするべき検討していく必要がある」と強調しました。
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