【コンサルに聞く】原価計算は万能ではない―CPAホルダーでGHCマネジャーの湯浅が「原価計算至上主義」に警鐘(2)
2015.6.9.(火)
米国公認会計士(CPA)であるGHCマネジャーの湯浅大介は、診療科や病院の全体像を把握するために「原価計算」を用いることには危険が伴うとして、「原価計算至上主義」に強い警鐘を鳴らしていることをお伝えしました。
今回は、「原価計算」によらず、何を指標に病院経営を考えればよいかについて、GHC湯浅の考えを詳しく紹介しましょう。
では、原価計算では至らないこのような論点に対し、何を指標として病院経営を考えればよいのでしょう。湯浅は「生産性」に着目した指標が重要であると強調しました。
これは、病院において「どの程度の人員配置が妥当なのか」など、これまで誰にも分からなかったテーマに対して、FTE(full-time equivalent、常勤職員1人当たりがどの程度の生産を行っているのか)という指標を診療科別・部門別・病棟別に設定し、適正な答えを導き出そうというGHCの考え方です。
病院・病床の機能分化・連携が進むなど、医療提供体制の再編が進もうとしています。急性期から回復期や慢性期へのシフト、病床規模のダウンサイジング、合併・統合による増床などを含め、病院の体制はこれから大きな変化を余儀なくされることでしょう。また、現状と体制を変えないという意思決定をしたとしても、現状の人員配置が妥当なのか、立ち止まって考える必要性が必ず生じます。
そうした中では、「原価計算の結果をじっくり眺めていても、病院の全体像やイシューの把握には限界がある。生産性を把握し、他病院とベンチマークを行うことで、この規模でこういった医療を行う病院であれば、スタッフを何人抱え、どの程度の収益性を期待する、そういった考え方をしていかなければならない。GHCは今後、生産性に着目した新たなKPI(Key Performance Indicators)を提供していく」と湯浅は強調しました。
ところで、米国などで導入されるDRG/PPSでは収益が一定のため、病院自らが入院期間の短縮や、外来へのシフトを極めて積極的に行うなど、コストコントロールを厳格にすることが病院経営を左右するので、原価計算の考え方が有用です。
しかし、わが国で導入されているDPC/PDPSは、入院期間に応じて収益が変化するため、厳密なコストコントロールができていません。
また、DPCにおいては、入院期間を短くしても「コスト割れ」してしまうために、不必要に在院日数を長くしているケースがあり、中央社会保険医療協議会でも問題となっています。
こうした状況を踏まえて、医療経済学の世界的権威であるGHC会長のアキよしかわは「在院日数の短縮や外来シフトが十分に進んでいない日本では、原価計算は本質的ではない。日本では『生産性』に着目することが重要である」と強調しています。
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