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介護費4.8%増の9兆1734億円、制度開始時の3倍弱に―13年度年報

2015.6.10.(水)

 2013年度の介護保険・介護予防サービスの費用は、前年度に比べて4164億円・4.8%増加して9兆1734億円になったことが、厚生労働省が5日に公表した介護保険事業状況報告(年報)で明らかになりました。

 介護保険制度が始まった2000年度と比べて、介護費用は3倍弱に増加しています。

高齢化と要介護認定率の上昇で、利用者が増加

 介護費用が増加する要因には、大きく(1)利用者の増加(2)1人当たりの費用の増加―の2つがあります。

 (1)の利用者は、まず高齢者数の増加と大きく関係します。65歳以上の第1号被保険者数は、00年度には2242万人でしたが、13年度には3202万人となり、1.4倍に増加しました。このうち、主に介護サービスを受けている75歳以上の人は、00年度には923万人でしたが、13年度には1549万人で、1.7倍に増加しています。

介護保険の第1号被保険者数は、2013年(平成25年度)には3202万人に増加

介護保険の第1号被保険者数は、2013年(平成25年度)には3202万人に増加

 介護保険サービスを受けるには、市町村で要介護状態であると判定されなければいけません(要介護・支援認定)。認定者の数は、13年度には584万人で、その内訳は、▽要介護5が10.4%▽要介護4が12.1%▽要介護3が13.1%▽要介護2が17.6%▽要介護1が19.0%▽要支援2が13.7%▽要支援1が14.0%―となっています。

介護保険サービスを利用する資格である「要介護・要支援」認定を受けた人は、2013年度(平成25年度)には584万人に増加

介護保険サービスを利用する資格である「要介護・要支援」認定を受けた人は、2013年度(平成25年度)には584万人に増加

 制度開始時の00年度には256万人が要介護・要支援と認定されており、第1号被保険者に占める割合(認定率)は11.0%でした。つまり65歳以上の10人に1人程度に介護保険を利用する資格があったことになります。

 これが13年度になると584万人が要介護・要支援と認定され、認定率は17.8%になりました。10人のうち2人弱が介護保険を利用する資格がある計算です。

第1号被保険者に占める要介護・要支援認定者の割合(認定率)も2013年度(平成25年度)には17.8%に上昇した

第1号被保険者に占める要介護・要支援認定者の割合(認定率)も2013年度(平成25年度)には17.8%に上昇した

 このように、高齢者数が増加するだけでなく、そのうち介護保険を利用できる要介護度の重い人の割合が増えたことが、利用者の増加に結びついていることが分かります。

サービスの利用形態は「在宅」へシフト

 さらに、06年度の介護保険制度改正で行われた「地域密着型サービス」の創設や、12年度の介護保険制度改正で創設された「定期巡回・随時対応型サービス」と「複合型サービス(現在は、看護小規模多機能型居宅介護に改称)」に代表されるサービスの拡大も利用者増に一役買っています。

 介護保険サービスの利用者数を見ると、制度発足時には1か月当たり184万人でしたが、13年度には482万人で、2.6倍に増加しました。

介護サービスを実際に利用者した人の数は、2013年度(平成25年度)の1か月平均で482万人

介護サービスを実際に利用者した人の数は、2013年度(平成25年度)の1か月平均で482万人

 ただし、サービスの内訳を見ると、制度発足時は居宅67.2%、施設32.8%という構成ですが、13年度には居宅74.1%、施設18.5%、地域密着7.3という構成に変化しました。地域密着も「施設から在宅へ」という流れの中で生まれたサービスであり、これを居宅に含めると、8割以上が在宅サービスと考えることもできそうです。

1人当たりの介護費用も増加

 介護費用を押し上げるもう1つのポイントが「1人当たり費用の増加」です。1人の利用者が利用する回数が増加したり、要介護度が重くなったりするなどの理由で、1人当たり費用が増加します。

 制度発足時の「第1号被保険者1人当たり費用」は14万5000円でしたが、13年度は26万6000円で、1.8倍に増加しています。

2013年度(平成25年度)における第1号被保険者1人当たりの介護給付費は26万6000円で、制度発足時の2000年度(平成12年度)に比べて1.84倍になった

2013年度(平成25年度)における第1号被保険者1人当たりの介護給付費は26万6000円で、制度発足時の2000年度(平成12年度)に比べて1.84倍になった

 もっとも「施設から在宅へ」の移行や、介護報酬のマイナス改定などは、1人当たり費用を減少させる方向にシフトさせるものです。

今後、介護報酬はマイナス改定か

 このような状況の中で介護費用は、13年度には9兆1734億円となりました。前年度に比べて4164億円・4.8%の増加となっています。

 介護費用から利用者負担を除いた介護給付費は、13年度には8兆5121億円で、制度発足時の00年度に比べて2.6倍となりました。

介護費用から利用者負担を除いた「介護給付費」は、2013年度(平成25年度)に8兆5121億円となった

介護費用から利用者負担を除いた「介護給付費」は、2013年度(平成25年度)に8兆5121億円となった

 介護給付費をサービス類型別に見ると、1か月当たりでは、▽居宅3614億円(全体の54.1%)▽地域密着型722億円(同10.8%)▽施設2345億円(35.1%)―という状況です。

サービス類型別の介護給付費を見ると、施設サービスの割合が35.1%で、利用者数に比べて多くなっていることが分かる

サービス類型別の介護給付費を見ると、施設サービスの割合が35.1%で、利用者数に比べて多くなっていることが分かる

 先ほどの利用者数と比べて、施設サービスの比率が大きくなっており、施設サービスでは単価(1人当たり費用)が高いことが分かります。

 高齢化が今後も進むことから、介護費用も増加することが見込まれます。しかし、介護費を含めた社会保障費の膨張が、国家財政を圧迫していると指摘される中では、介護費用の伸びを鈍化させる方策が今後も採られることになります。

 高齢者数を減少、あるいは減少幅を抑えることはできません。したがって、介護費用の伸びを鈍化させるために、▽要介護・要支援の認定基準を引き上げるなどして、利用者数の伸びを抑える▽介護報酬のマイナス改定や、在宅シフト促進などによって、1人当たり費用の伸びを抑制する―などの方策がより積極的に検討される可能性があります。

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