MERS疑い患者は入院措置、患者同居者らには外出自粛を要請―厚労省
2015.6.12.(金)
韓国でMERS(中東呼吸器症候群)が猛威を振るう中、厚生労働省は10日付で、「MERSの国内発生時の対応」について通知しました。
MERSの「疑似症」が疑われる患者は感染症指定医療機関への入院措置を行うとともに、「疑似症」の要件には該当しないものの、MERS患者と濃厚な接触をした人には、14日間の健康観察と外出自粛を求めています。
MERSは、中東へ渡航歴のある症例から発見された新種のコロナウイルスによる感染症です。主な症状は、「重症の肺炎」や「下痢」「腎障害」などで、60歳以上では致死率が高いことが分かっていますが、現時点では治療薬やワクチンは存在せず、集中治療室での管理などの対症療法しかありません。感染源動物としてラクダが深く関与していると言われます。
韓国では、今年に入りMERSが猛威を振るっており、死亡者も発生しています。こうした事態を重く見て、厚労省はMERSの国内発生時の対応をあらためて整理しています。
まず、MERS患者に接触して、「MERS疑似症」の要件に該当する人については入院措置が取られます。
MERS疑似症患者は、次のいずれかに該当し、かつほかの感染症または病院によることが明らかでない人とされました。もっとも、これは現時点の定義で、変更される可能性もあります。
▽38度以上の発熱、せきを伴う急性期呼吸器症状があり、臨床的・放射線学的に肺炎、ARDS(急性呼吸促迫症候群)などの実質性肺病変が疑われ、発症前14日以内にアラビア半島やその周辺諸国に渡航・居住していた人
▽発熱を伴う急性呼吸器症状(軽症含む)があり、発症前14日以内にアラビア半島やその周辺諸国で医療機関を受診・訪問した人、MERS患者との接触歴がある人、またはラクダとの濃厚接触歴(未殺菌乳の喫食など)がある人
(3)発熱または急性呼吸器症状(軽症含む)があり、発症前14日以内に「アラビア半島などの地域か否かを問わず」MERS疑い患者を診察・看護・介護していた人、MERS疑い患者と同居していた人、MERS疑い患者の気道分泌液、体液などの汚染物質に直接触れた人
一方、MERS疑似症の要件に該当しなくても、次のように「MERS患者との接触」がある場合には、健康観察などが求められます。
まず、次の場合には、MERS患者と接触した可能性のある日から14日間、健康観察と外出自粛が要請されます。健康観察は「毎日2回、対応、症状の有無などを都道府県などに報告する」もので、外出自粛は、状況を勘案して「全く外出しない」「公共交通機関を利用しない」「不特定多数の人が利用する場所へ出入りしない」「勤務先に出社しない」「診療に従事しない」などから適切なものが要請されます。
▽MERS患者と同居する人
▽手袋・サージカルマスク・N95マスク・眼の防護具・ガウンなどを装着するなどの必要な感染予防策を講じないでMERS患者の診察、搬送などに従事した人
また、これらに該当しないものの「MERS患者と同じ病棟に滞在する者」や「必要な感染予防策を講じた上で、MERS患者の診察、搬送などに従事した者」には、外出自粛は求められませんが、毎日2回、対応、症状の有無などを都道府県などに報告(健康観察)することが要請されます。
MERS患者への適切な医療提供を確保するため、各都道府県には「MERS患者が発生した都道府県内で入院医療体制が完結するよう、あらかじめ患者の発生を想定して、地域ごとに入院医療機関を確保する」ことが要請されました。
入院医療機関は、特定・第一種・第二種感染症指定医療機関となりますが、原則として「陰圧制御可能な病室」への入院が必要です。
また、MERS患者が発生した場合の「標準的対応フロー」が次のように一部見直されていますので、注意が必要です。
▽MERS患者が疑われる患者が発生した場合、地方衛生研究所によるPCR検査と並行して、国立感染症研究所でもPCR検査を行い、早期に検査結果を確定させる
▽地方衛生研究所のPCR検査結果で陽性が出た時点で、厚労省と都道府県などは「検査結果」「患者の情報」などを公表する
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