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医療費適正化の効果は小さい、コスト削減費用を人材育成などに有効活用を―日医総研

2015.6.16.(火)

 20歳以上の全年齢階層の1人当たり医療費の伸びを今年から抑制しても、2040年にかけて国費の累計節減額は26兆円にとどまり、国家予算や国の負債額に比べてあまりにも小さい―。このような推計が、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)がこのほど公表したワーキングペーパー「将来の人口動態等に基づく医療費推計」から明らかになりました。

 日医総研では、「医療に費やされる国費を『社会全体の生産性・安心感を向上させる投資』と捉え、コスト削減に費やす費用を人材育成などに振り向けるべき」と提言しています。

1人当たり医療費が不変でも、40年度の医療費は45兆円に

 わが国の国民医療費は、12年度時点で39.2兆円です。

 日医総研は、医療費の伸び率が現在のまま推移した場合、40年度には医療費は53.3兆円に膨らむと推計しました。具体的には、年齢階層別の医療費の伸び率が02-12年度の10年間と同じ割合で推移したと仮定し、ここに国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(12年1月推計)を加味して算出しています(推計1)。

2002-2012年度の年齢階層別の1人当たり医療費の伸び率(1年当たり)、全体では2.4%

2002-2012年度の年齢階層別の1人当たり医療費の伸び率(1年当たり)、全体では2.4%

年齢階層別の1人当たり医療費の伸び率が、2002-2012年度の10年間と同じまま推移すると仮定した場合、2040年に医療費は53.2兆円になる見込み

年齢階層別の1人当たり医療費の伸び率が、2002-2012年度の10年間と同じまま推移すると仮定した場合、2040年に医療費は53.2兆円になる見込み

医療費の伸びが現状で推移すると改定したケースで、医療費を(1)0-19歳(2)20-64歳(3)65歳以上―に区分した図

医療費の伸びが現状で推移すると改定したケースで、医療費を(1)0-19歳(2)20-64歳(3)65歳以上―に区分した図

 一方、さまざまな医療費適正化政策によって、20歳以上の全年齢階層で1人当たり医療費が今年以降「増加しない」(伸び率ゼロ)と仮定しても、人口の高齢化によって医療費は40年度には45.2兆円に増加します(推計2)。

仮に20歳以上のすべての年齢階層で、1人当たり医療費が2015年以降一定である(つまり、1人当たりの医療費が伸びない)と仮定する

仮に20歳以上のすべての年齢階層で、1人当たり医療費が2015年以降一定である(つまり、1人当たりの医療費が伸びない)と仮定する

20歳以上の1人当たり医療費が伸びないと仮定すると、人口の高齢化のみが影響して、2040年の医療費は45.2兆円になると推計される

20歳以上の1人当たり医療費が伸びないと仮定すると、人口の高齢化のみが影響して、2040年の医療費は45.2兆円になると推計される

20歳以上の医療費が伸びないと改定したケースで、医療費を(1)0-19歳(2)20-64歳(3)65歳以上―に区分した図

20歳以上の医療費が伸びないと改定したケースで、医療費を(1)0-19歳(2)20-64歳(3)65歳以上―に区分した図

 医療費の国庫負担割合が、12年度時点の25.8%で一定と仮定すると、推計2では、推計1に比べて国庫負担額が節減できることになります。この節減額は、40年時度時点で26兆円と計算できます。

20歳以上の1人当たり医療費が伸びないと仮定した場合、現状のまま推移したケースと比べて、2040年度までに医療費に占める国費は累計で26兆円節減できる

20歳以上の1人当たり医療費が伸びないと仮定した場合、現状のまま推移したケースと比べて、2040年度までに医療費に占める国費は累計で26兆円節減できる

 なお、1人当たり医療費の伸びが「現在よりも小さい」とした場合には、節減額は26兆円よりも小さくなります。

医療費適正化のターゲットは「40-74歳」に

 日医総研は、推計2(1人当たり医療費が伸びないとの仮定)による累計節減額の26兆円について、「現在のわが国の経済規模(GDP)である約489億円、一般会計と特別会計を合わせた国家予算の規模である約200兆円、国家財政の負債総額である約1143兆円と比べて、あまりにも小さい」と指摘します。

 また、医療費を適正化する上で重要とされている「75歳以上の1人当たり医療費医療費を抑制する」政策に対しては、「国民・患者の老後生活への不安をいたずらに煽る」ものであると強調しています。

 その上で、医療費適正化施策を進めるに当たっては、生活習慣病リスクが高まる「40-74歳」をターゲットにし、次のような取り組みによって「1人当たり医療費」の伸びを抑えるべきと提言しています。

▽後発医薬品の使用促進

▽予防医療・健康増進の推進

▽病院外来からかかりつけ医へのシフトの促進

▽高額な医薬品・医療機器に係るコストの制御

 もっとも、同時に「医療の質に関する構造・プセス・アウトカムの指標」を定め、質の低下がないことを確認しながら進める必要があるとも指摘しました。

 さらに日医総研は、医療に投入される国費を「社会全体の生産性・安心感を向上するための投資」ととらえるべきだと指摘し、医療費適正化施策の効果はあまりにも小さいことから、「適正化のための費用を、人材育成などの政策に振り向けるべき」とも提言しています。

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