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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

代表的な難病ごとに、医療提供・連携体制のモデルを構築―難病対策委員会

2015.6.17.(水)

 難病対策の基本方針策定に向けた議論が大詰めを迎えています。16日に開かれた厚生科学審議会・疾病対策部会の「難病対策委員会」には、厚生労働省から基本方針の骨子案が示されました。

 そこでは、難病患者への医療提供体制について、これまで示されていた「三次医療圏ごとに、新たな難病医療拠点病院(仮称)を設置する」といった考え方が姿を消し、「医療提供体制の具体的なひな形」という概念が急浮上しました。

 厚労省健康局疾病対策課の担当者は、「7月上旬予定の次回会合で基本方針を取りまとめたい」との考えを表明しています。

6月16日に開催された、「第40回 厚生科学審議会・疾病対策部会・難病対策委員会」

6月16日に開催された、「第40回 厚生科学審議会・疾病対策部会・難病対策委員会」

7月上旬にも基本方針まとめ、8月に告示の予定

 2014年5月に成立した、難病対策の根拠法である「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)は、厚労相に対して「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を定めるよう指示しています。

 これを受けて厚科審の「難病対策委員会」で、基本方針の策定に向けた議論が進められており、今回、骨子案が示されました。骨子案には、次の事項を含めて9つの柱が立てられています。

 厚労省は、7月上旬に開催予定の次回会合で基本方針を取りまとめ、パブリックコメントを経て、8月にも基本方針を告示したい考えです。

(1)難病患者に対する医療などの推進の基本的な方向

(2)難病患者に対する医療費助成制度

(3)難病患者に対する医療提供体制の確保

(4)医療に関する人材の養成

(5)調査・研究

(6)医薬品、医療機器および再生医療等製品に関する研究開発の推進

 (1)の基本方向では、難病が「誰にでも発症する可能性がある」ことを基本認識として、▽難病の克服▽社会参加の機会確保▽地域社会における尊厳を持った生活の継続―ができるよう、関連施策と難病対策を総合的に提供することを強調しました。また、少なくとも「5年」ごとに基本方針を見直すことも明言しています。

疾病によって医療提供・連携の在り方は多様

 (3)の医療提供体制について、厚労省はこれまで▽二次医療圏ごとに難病医療地域基幹病院(仮称)を整備する▽三次医療圏ごとに新たな難病医療拠点病院(仮称)を整備する▽全国レベルで難病医療支援ネットワーク(仮称)を構築する―との考え方を示していました。

前回(5月26日)会合までに示された、難病の医療提供体制のイメージ図。三次医療圏ごとに新たな「難病医療拠点病院」を整備するなどの考え方が示されていた。

前回(5月26日)会合までに示された、難病の医療提供体制のイメージ図。三次医療圏ごとに新たな「難病医療拠点病院」を整備するなどの考え方が示されていた。

 しかし、委員会の議論や専門家からのヒアリングを通して「306となる指定難病だけをとっても、症例数は大きく異なり、疾病の特性も異なる」ことが明らかとなり、がん診療連携拠点病院のような、難病をひとくくりにした「難病医療拠点病院」の設置は時期尚早との意見が強くなってきました。そこで骨子案では、「医療提供体制の具体的なひな形」の検討を進めるという考え方に方針を転換しています。

 この点について、厚労省健康局疾病対策課の担当者は「代表的な疾病ごとに医療提供体制のモデルを構築できないか検討したい」と説明しました。

 モデルの調査・研究を通じて、例えば「神経難病の診療において中核的な機能を果たすためには、どの程度の規模で、専門医がどの程度必要で、患者の具体的な支援体制はこうあるべき」といった姿が見えてくれば、それを「神経難病の拠点病院の指定基準」といった形で規定することができるかもしれません。

 また、難病医療支援のネットワークについても、超希少疾病であれば「専門医がすべての患者を把握し、診断から治療までを一貫して担当する」ことが多くなりますが、希少性が比較的低い疾病では「診断は専門医が行い、治療は地域の医療機関で行う」ことが増えるといったように、疾患によってさまざまなケースがあるようです。

 なお、前回会合で渡辺守参考人(東京医科歯科大学消化器病態学・消化器内科教授)から「潰瘍性大腸炎などの先端治療センターを設置したところ、症例が過度に集中してしまった。現在は、地域に専門医を派遣し、そこが中核となった難病治療のネットワークを構築に向けて動いている」との発表があったように、「拠点病院」を明確にすることのデメリットもあるようです。厚労省の担当者は「軽症患者の逆紹介を行える体制なども重要である」との見解を述べています。

 厚労省は306となる指定難病のうち代表的な疾患を対象に調査・研究を進め、それぞれに「効果的な医療提供体制のモデル(ひな形)」を構築する考えです。

 このほか医療提供体制については、次のような方針が示されました

▽国立高度専門医療研究センター・難病研究班・学会などによる「難病医療支援ネットワーク」の構築に向けて、国も支援を行う

▽小児期に長期にわたる療養を必要とし、生命に危険のある疾病にかかった患者に対する切れ目ない医療・ケアを行うため、国と地方自治体はモデル事業などを実施し、小児期・成人期を担当する医療提供者間の連携を推進する

▽国が遺伝子診断などを実施できる体制の整備を進め、有望な治療薬などを早期に利用できるよう取り組む

「福祉職」「介護職」の人材養成も重要

 (4)の人材養成は、将来の難病医療の基盤を強化するために極めて重要な柱です。骨子案では、▽指定医など難病に携わる医療従事者の養成に努める▽医療従事者は自己研さんに努め、学会などがこれを支援する▽福祉サービス提供者への正しい知識普及を図る▽痰の吸引などができるヘルパーなどの人材を養成する―ことを打ち出しました。

 この点について、葛原茂樹委員(鈴鹿医療短期大学学長)は「日常生活に制限を受けている難病患者に対して、医師ができることは限られている」とし、医療従事者の養成はもちろん、難病に携わる福祉職や介護職の養成も同時に行う必要があると訴えています。

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