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GemMed塾 看護モニタリング

病院対象のリート活用GLを7月1日から適用、リート会社に医療法順守など求める―国交省検討会

2015.6.17.(水)

 病院を対象にしたリートの活用に関するガイドラインがまとまりました。病院経営に不当な干渉を行わないよう、リート会社には「病院関係者との信頼構築」や「医療法などの順守」などが求められます。

 またリート会社に、「医療の非営利性などの病院の特性」や「病院開設者以外は経営に関与できない」ことなどを十分に理解した専門家を配置することなども義務付けられています。

 国土交通省と厚生労働省はガイドラインのホームページへの掲載や関係者への通知などを月内に行い、7月1日から運用する考えです。

6月17日に開催された、「第5回 病院等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン検討委員会」

6月17日に開催された、「第5回 病院等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン検討委員会」

病院対象のリート、資金調達手法の選択肢広げる

 「病院を対象にしたリート」は、多くの投資家から募った資金を元に資産運用会社(リート会社)が病院を建設し、それを病院開設者に賃貸・売却することで得た利益を投資家に分配する投資商品のことです。病院側には「資金調達方法の多様化」や、「理事長の連帯保証が不要になる可能性」などのメリットがあり、耐震化整備を進めなければいけない中で一定の需要があると考えられています。既に海外では数多くの活用事例もあります。

病院を対象としたリートのイメージ図、投資家から出資を募り、不動産を病院に賃貸するなどする

病院を対象としたリートのイメージ図、投資家から出資を募り、不動産を病院に賃貸するなどする

病院を対象とするリートの流れ(イメージ図)

病院を対象とするリートの流れ(イメージ図)

海外では、病院を対象とするリートはすでに数多く活用されている

海外では、病院を対象とするリートはすでに数多く活用されている

 政府の成長戦略(日本再興戦略)では、民間資金の活用を図るため、ヘルスケアリートの活用ガイドラインを整備し、普及啓発などを行うことを打ち出しており、国交省では既に▽サービス付高齢者向け住宅▽有料老人ホーム▽認知症高齢者グループホーム-を対象とするヘルスケアリートの活用ガイドラインを策定・公表しました。

 病院を対象とするリートについては、「医療の非営利原則に馴染むのか」といった論点があり、国交省の「病院等を対象とするヘルスケアリートの活用に係るガイドライン検討委員会」で検討が続けられてきました。当初は14年度内にガイドラインをまとめる予定でしたが、関係者間の調整に時間がかかり今回の取りまとめとなったものです。

診療所は対象外、リート会社には専門家を配置

 ガイドラインの中身を見てみましょう。

 まず、対象とする不動産は「病院」の用に供されている不動産(一部が病院である不動産も含む)に限定されており、診療所は対象になりません。

 病院を対象とするリート商品を販売する会社には、医療に関する専門知識を有する者の配置などが求められます。これは、「病院の特性を理解しない者が経営に関与するのではないか」と病院関係者が強く懸念していた点に配慮したものです。具体的には、▽医療の非営利性▽病院は地域医療構想を含む医療計画を順守しなければならないこと▽病院開設者以外が病院経営に関与することはできないこと―などを十分に理解し、病院関係者と調整を行う人間を「重要な使用人」として配置することや、外部から助言を受けられる体制を敷くことなどが求められます。

経営介入避けるため、リート会社に医療法などの順守義務

 ところで、リートへの出資者は「高配当」を期待します。すると、病院経営が思わしくなく、配当が予想を下回った場合などに、「不採算な診療科を閉鎖せよ」などの介入が出るのではないか―。こういった点を、医療関係者は危惧しています。

 ガイドラインでは、こうした心配を払しょくするために、上記の「リート会社への専門家の配置」などのほかに、リート会社に対して「病院関係者との信頼関係の構築」「医療法や関連通知の遵守」なども求めています。

 前者では、▽病院関係者にリートの仕組みを説明し、緊密なコミュニケーションを取ることで信頼関係を構築する▽一方的な賃料の引き上げなどは行わない▽医療法に「地域医療計画達成のために地域連携を図る」ことなどが規定されていることを理解し、都道府県に適切な情報提供を行う―ことなどが例示されました。

 また後者に関しては、「医療の非営利性」に抵触しないよう強く求めており、具体的には「賃借料を医療機関収入の一定割合とする」ことは適当ではない旨を明確にしています。賃料を収入の一定割合とすることは、医療法に抵触する実質的な配当になる可能性が高く、これを明確に否定したものです。

 さらに、国や都道府県に対して、リート商品や運用内容が医療法などに抵触しないかを事前に確認する仕組みや、賃料不払いへの対応などについて次のように規定し、上記の医療関係者の不安払しょくに努めています。

(1)リート会社が病院不動産の取り引きを行う際、医療法などに適合しているか明らかでない場合には、国交省や都道府県、厚労省に事前に相談する

(2)正当な理由なく病院開設者が賃料を支払えなくなった場合などには、リート会社は国交省に連絡する

 (1)について、医療関係者は事前相談の義務化を求めていましたが、リート会社の柔軟な運用にも配慮し「明らかでない場合には相談する」との表現に落ち着きました。相談があった場合、「リート会社→国交省→厚労省→都道府県→都道府県医療審議会→都道府県→厚労省→国交省→リート会社」というルートで、正式な回答がリート会社に伝えられます。ガイドラインでは、運用前にルート構築を行うよう、国交省・厚労省・都道府県に指示しています。

 また、リート会社が事前の相談なしに販売した商品や運用などについても、同様のルートで医療法などへの適合性が判断され、リート会社に伝達されます。

 (2)は、賃料不払いの際のトラブル発生を事前に防止する狙いがあります。国交省はリート会社からの連絡を受けた後に厚労省に報告し、厚労省から都道府県などに対しても連絡が行われます。そこで関係者間による協議が行われ適切な解決策が模索されることになります。

ホームページでリートの仕組みなどを解説

 このガイドラインは、今年7月1日から適用されます。そのため、国交省と厚労省はガイドラインのホームページへの掲載や関係者への通知などを今月中に行います。

 さらに、ガイドラインや「リートそのもの」を周知するために、国交省がホームページで情報提供するほか、病院団体に対する説明会なども積極的に開かれる予定です。

 なお、リート会社が不動産をマスターリース会社などに一括賃貸し、そのマスターリース会社が病院開設者に賃貸する場合でも、リート会社にはこのガイドラインが適用されます。

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