介護サービスの1人当たり費用は19万1300円、最高は沖縄の21万2400円―14年度の介護給付費実態調査
2015.8.11.(火)
介護保険受給者1人当たりの費用額は2015年4月時点で19万1300円だが、都道府県別に見ると、最高の沖縄県(21万2400円)と最低の福島県(18万2000点)には1.16倍の格差がある―。このような結果が、厚生労働省が6日に公表した2014年度の「介護給付費実態調査」から明らかになりました。
また実受給者数に比べて、累計受給者数の伸びが大きく、1人が受けるサービスの回数が増加していることも明らかになっています。
この調査には、介護サービスに掛かる給付費の状況を把握し、介護報酬改定などに反映させる狙いがあります。厚労省は毎月、調査結果を公表しており、今回は2014年5月審査分から15年4審査分を年報として集計しています。
集計対象は、都道府県の国民健康保険団体連合会が審査したすべての介護給付費明細書・給付管理票です。
まず受給者の状況を見てみると、14年度の累計受給者数は5968万5500人で、前年度に比べて年度比252万6300人・4.4%増加しました。同一人物を名寄せした実受給者数は588万3000人で、前年度に比べて22万2500人・3.9%の増加となっています。実受給者数よりも累計受給者数の伸びが大きなことから、「1人が受けるサービスの回数」が増加していることが分かります。
サービス種類別の累計受給者数を見ると、次のようになりました。
▽介護予防訪問介護:540万1700人(実受給者数は61万5800人)で、前年度比1.6%増
▽介護予防訪問看護:50万8400人(同7万4100人)で、前年度比15.4%増
▽介護予防通所介護:590万1100人(同73万1100人)で、前年度比10.1%増
▽介護予防通所リハ:161万500人(同19万6600人)で、前年度比5.5%増
▽訪問介護:1156万9200人(同142万300人)で、前年度比2.9%増
▽訪問看護:396万8600人(同52万7900人)で、前年度比7.1%増
▽訪問リハ:91万500人(同12万1200人)で、前年度比4.8%増
▽通所介護:1581万4700人(同184万4500人)で、前年度比6.3%増
▽通所リハ:502万7700人(同59万100人)で、前年度比2.0%増
▽小規模多機能型居宅介護:91万900人(同10万2300人)で、前年度比9.4%増
▽認知症対応型共同生活介護(短期利用以外):70万7900人(同8万7600人)で、前年度から増減なし
▽特養ホーム(介護老人福祉施設):594万100人(同61万9600人)で、前年度比1.9%増
▽老健施設:423万2400人(同53万8500人で)で、前年度比0.8%増
▽介護療養型医療施設:79万1000人(同10万4700人)で、前年度比6.5%減
介護予防サービスや地域密着型サービスの利用が増加している状況がうかがえます。
12年度の介護保険制度改正、介護報酬改定で新設された定期巡回・随時対応サービスは、今回10万6000人(同1万5300人)で前年度比90.8%増、複合型サービス(15年度の介護報酬改定で看護小規模多機能型居宅介護に名称変更)は3万3600人(同4900人)で前年度比99.8%増と、2倍近い伸びを示しています。
1年間継続してサービスを受給した人について、14年4月と15年3月とで要介護度がどう変化したかを見てみると、どの要介護度区分でも変化のない「維持」の割合が最も多く7~9割程度となっています。また、「要支援2」から「要介護4」のすべての区分で、改善(軽度化)よりも悪化(重度化)の割合が高くなっています。「自立支援」を目指す介護保険法の趣旨に則り、介護サービスの質をさらに向上させることが必須です。特に、要介護度の低い区分で「軽度化」の割合が少ないことから「早期の介入」をこれまで以上に進める必要がありそうです。
次に受給者1人当たり費用額は、15年4月審査分で介護予防サービス4万1000円、介護サービス19万1300円となりました。前年と比べて、介護予防サービスでは600円、介護サービスでは1300円増加しています。
これをサービス種類別に見てみると次のようになっています。
▽訪問介護:7万400円(前年比800円増)
▽訪問看護:4万8700円(同2900円増)
▽訪問リハ:3万7900円(同2600円増)
▽通所リハ:8万2900円(同1000円減)
▽短期利用以外の特定施設入居者生活介護:21万4700円(同1300円増)
▽定期巡回・随時対応サービス型:14万7500円(同2300円増)
▽夜間対応型訪問介護:3万1400円(同3100円増)
▽短期利用の地域密着型特定施設入居者生活介護:10万6600円(同7万1700円増)
▽複合型サービス:24万4400円(同1万2100円減)
▽特養ホーム:28万700円(同1100円増)
▽老健施設:29万8000円(同1500円増)
▽介護療養型医療施設:39万3300円(同2100円増)
短期利用の地域密着型特定施設入居者生活介護で、大幅な増加を示した点が気になります。
受給者1人当たり費用額を都道府県別に比較してみると、介護サービスでは、沖縄県が最も高く21万2400円、次いで石川県20万5400円、鳥取県20万4900円となりました。逆に最も低いのは福島県の18万2000円で、最高の沖縄県と最低の福島県の間には1.16倍の格差があります。
サービスの利用状況に目を移すと、次のような状況が分かります。
▽15年4月審査分における居宅サービスの平均利用率は、「要介護5」が最も高く65.4%・要介護度が下がるにつれ利用率も下がるが、要支援1では高くなっている
▽15年4月審査分における訪問介護の内容類型は、要介護度が高くなるにつれ「身体介護」の利用度合いが高くなる(要介護1では65.8%だが、要介護5では86.4%)
▽1年間における施設サービスの単位数は、特養ホームでは「要介護4」「要介護5」の割合が、老健施設では「要介護3」「要介護4」の割合が、介護療養型医療施設では「要介護5」の割合が多い
また施設別の入所(院)期間を見てみると、特養ホームでは1年以上5年未満の人が約半数を占めており、5年以上の入所者も要介護度別に9.0-25.6%いるが、前年度よりも短期化(長期入所者の減少)していることが分かります。
一方、老健施設では要介護度が高くなるにつれて1年以上の割合が多くなっています。
さらに介護療養型医療施設では、「要介護1」「要介護2」では90日未満(3か月未満)の割合が多いが、「要介護4」「要介護5」では、1年以上5年未満の割合が多くなっています(要介護5では7割近くが1年以上)。
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