難病対策の基本方針、16年度中に代表的な疾病に対する医療提供体制モデル構築―厚労省
2015.8.25.(火)
難病対策に関する基本方針がまとまりました。厚生労働省は9月中に告示が行い、2016年度中をめどに患者の多寡、疾病のタイプなどを踏まえた「具体的なモデルケース」を検討します。
都道府県はこれを踏まえ、今後、地域医療計画の中に「難病に対する医療提供体制」を盛り込んでいくことになります。
難病医療対策は1972年(昭和47年)の「難病対策要綱」から本格化しましたが、法的な背景の構築がなされないままに40年以上が経過してしまいました。このため難病対策の根拠法となる「「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が14年に制定され、15年1月から施行されています。
難病法は、医療費助成の対象となる指定難病の範囲が大幅に拡大するとともに、厚生労働大臣に対して「難病の患者に対する医療等の総合的な推進を図るための基本的な方針」(基本方針)を定めるよう指示しています。これを受け、厚生科学審議会疾病対策部会の下に「難病対策委員会」が設置され、基本方針策定に向けた議論が行われてきました。20日には難病対策委員会と疾病対策部会が相次いで開かれ、基本方針を了承しました。
厚労省は今後、若干の文言修正を行った上で、9月中に基本方針を告示する考えです。
基本方針の柱は次の9本です。
(1)難病患者に対する医療などの推進の基本的な方向
(2)難病患者に対する医療費助成制度
(3)難病患者に対する医療を提供する体制の確保
(4)難病患者に対する医療に関する人材の養成
(5)難病に関する調査および研究
(6)難病患者に対する医療のための医薬品、医療機器および再生医療等製品に関する研究開発の推進
(7)難病患者の療養生活の環境整備
(8)難病患者に対する医療などと難病患者に対する福祉サービスに関する施策、就労支援に関する施策その他の関連施策との連携
(9)その他難病患者に対する医療などの推進
このうち(3)の医療提供体制については、次の2つの体制を整備するとともに、両者の連携を強化することが強調されています。
▽早期に正しい診断ができる体制
▽診断後はより身近な医療機関で適切に医療を受けられる体制
この体制を整備するために、基本方針は「国」「都道府県」「医療機関」に対して具体的な取り組みを方針も示しています。
まず国は、難病の診断・治療の実態を把握した上で、医療機関や診療科間・他分野との連携の在り方などを検討し「具体的なモデルケース」を示す必要があります。厚労省健康局疾病対策課の担当者は「16年度中をめどに、患者の多寡・疾病のタイプなどを踏まえた具体的なモデルケースを検討し、医療提供体制の考え方を明確化する」考えを示しました。
また「国立高度専門医療研究センター、難病の研究班、各分野の学会、大学病院、地域で難病医療の中心となる医療機関」などで構成される難病医療支援ネットワークの構築支援や、「小児期・成人期をそれぞれ担当する医療従事者間の連携を推進するためのモデル事業」(小児慢性期特定疾病児童成人移行期医療支援モデル事業)の実施、「遺伝子診断などの特殊な検査を幅広く実施できる体制」の構築なども国の役割となっています。
都道府県は、国が構築したモデルケースを参考に、難病患者への支援策など「地域の実情に応じた難病に関する医療を提供する体制の確保」に向けた必要事項を地域医療計画に盛り込み、必要な医療提供体制の構築を行うよう努めなければなりません。
このため国は、都道府県に対して「地域医療計画に盛り込むべき事項」を示すことになります。
さらに医療機関は、難病患者に必要な医療を提供することはもちろん、地方公共団体やほかの医療機関とともに、「地域における難病の診断・治療に係る医療提供体制の構築」に協力することが求められます。そこでは、難病に対する知見を高めるとともに、「関係する医療機関や医療従事者と顔の見える関係」を構築し、相互に患者紹介を行うなど連携を強化することが必要となるでしょう。
また、(2)の医療費助成では、15年度中に「指定難病検討委員会」を再開させ、さらなる指定難病の拡大や診断基準などの見直しに向けた検討に着手します。さらに『指定難病患者データベース』を新たに構築することが打ち出されましたが、これは画期的な医薬品の開発などの研究にも活用することが期待されます。このため「データベースの利活用に向けたルール」の策定や、小児慢性特定疾患データベースや、欧米などの希少疾病データベースとの連携も検討課題に挙がっています。
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