社会保障の給付と負担、将来も「現状維持」を望む国民が4割強―13年厚労省調査
2015.8.31.(月)
社会保障の負担水準について、一般国民の4割強が「現状を維持すべき」と考えており、「ある程度の負担増はやむを得ない」と考えている人は2割にとどまることなどが、厚生労働省が28日に公表した2013年度の「社会保障制度改革に関する意識等調査」結果から明らかになりました。
この調査は、社会保障に対する認知度や、給付と負担の水準に対する意識を把握するために、13年7月におよそ1万人の一般国民を対象に行われました。回答者の年齢構成を見ると、70歳以上が23.9%、60-69歳が20.8%、29歳以下が9.1%という具合に、やや高齢者の比率が高くなっています。
まず現在の社会保障負担の水準をどのように感じているのかを見ると、「生活にはあまり影響しないが負担感がある」と感じている人が最も多く50.5%を占めています。次いで、「生活が苦しくなるほど重い」39.1%、「特に負担感はない」6.8%となっています。
負担感については年齢階級によって若干の差があり、50歳代・60歳代では「生活が苦しくなるほど重い」と感じる人が4割を超える一方で、29歳以下・70歳以上では3割強にとどまっています。
また世帯の所得階級別に見ると、やはり低所得層で重い負担となっており、年収400万円未満では5割近くが「生活が苦しくなるほど重い」と感じています。
次に社会保障の給付と負担の水準を、将来どうすべきと考えているかを見てみましょう。
給付水準については、「維持すべき」と考えている人が最も多く48.2%。次いで「ある程度、引き上げるべき」が29.4%、「ある程度引き下げるべき」が7.7%となっています。
年齢階級別に見ると、50歳代で「大幅に引き上げるべき」と考えている人が7.8%おり、ほかの施代よりもやや多く、逆に30歳代では大幅引き上げを求める人は4.9%にとどまるなど、世代により若干の差があります。20歳代・30歳代の若い世代では「ある程度引き下げるべき」と考えている人がやや多くなっています。
負担水準についても、「維持すべき」と考える人が最も多く43.6%。次いで「ある程度減らすべき」が21.8%、「ある程度の負担増はやむを得ない」が20.7%となっています。
年齢階級別にみると、若い世代で負担減を求める意見が多く、29歳以下では26.7%、30歳代では27.0%、40歳代では23.5%が「ある程度減らすべき」と考えていますが、50歳以上では、ある程度の負担減を求める声は2割程度にとどまります。
社会保障給付と負担はセットで考えなければいけません。この点の考えを見ると「給付・負担とも現状維持」が30.0%と最も多くなっており、次いで「給付はある程度引き上げ、負担は現状維持」が10.4%、「給付はある程度引き上げ、ある程度の負担増もやむを得ない」が9.9%となっています。
最も、今後の高齢化を考えると「給付を維持」するためには、相当程度の負担増はやむを得ないと考えられ、また「ある程度の負担増」にとどめる場合には、給付も相当程度引き下げなければなりません。前者については8.3%(ただし負担増はある程度)、後者では1.1%(ただし給付減はある程度)にとどまっています。
社会保障制度は一般国民には難解で、将来をきちんと見通すことは難しいのが実際です。一般国民が社会保障に関する情報をどのように仕入れているのかを調べたところ、次のようなことが明らかになりました。
▽「見かけたときには、興味を持って見るようにしている」が最も多く51.9%、次いで「あまり興味はないが、時々接することはある」が27.5%、「ほとんど接しない」14.8%、「積極的に集めている」4.3%
▽情報の入手先はテレビが最も多く69.7%、次いで新聞が54.2%
▽今後の入手先についてもテレビが最も多く62.7%、次いで新聞が51.7%
こう見ると、一般国民の半数以上は社会保障に関する情報に一定程度の興味を持ち、テレビや新聞から情報収集していることが分かります。にもかかわらず、将来の給付と負担について正しい選択を行えておらず、「より正しく、分かりやすい情報」の提供が喫緊の課題と言えるでしょう。
このほか今般の調査結果から、次のようなことも分かりました。
▽今後充実させる必要があると考える社会保障分野は、「年金」が最も多く64.5%、次いで「高齢者医療・介護」51.7%、「医療保険・医療供給体制」40.6%
▽効率化すべきと考える社会保障分野は、「年金」「高齢者医療・介護」が最も多く41.5%
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