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介護事業所での認知症対応、初の本格横断調査、介護施設での看取り実態も―介護報酬改定検証・研究委

2015.9.14.(月)

 今年(2015年)4月に行われた介護報酬改定の効果を検証するための調査項目が概ねまとまりました。医療ニーズのある中重度の要介護者が在宅生活を送るための看護小規模多機能型(旧、複合型サービス)を自治体がどのように支援しているのか、報酬体系が大きく見直された居宅でのリハビリはどのように変化しているのか、介護保険施設における看取りやターミナルケアの実態はどうなのか、などが多角的な視点から調査されます。

 また、認知症対応の実態調査が、初めて介護サービス横断的に行われます。

9月14日に開催された、「第9回 介護報酬改定検証・研究委員会」(社会保障審議会 介護給付費分科会の下部組織)

9月14日に開催された、「第9回 介護報酬改定検証・研究委員会」(社会保障審議会 介護給付費分科会の下部組織)

15年度の介護報酬改定の効果・影響を調査し、次期改定に活かす

 診療報酬と同様に、介護報酬についても、直近の改定の効果・影響を調査し、その結果を次の改定に反映させるというプロセスが採用されています。効果が出やすい改定内容については早期に、効果が出るまでに時間のかかる項目については間を開けて調べられ、15年度には、効果が早期に現れると考えられる次の7項目の調査を行うことが決まっています。14日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会の「介護報酬改定検証・研究委員会」では、具体的な調査票をもとに議論を行いました。

(1)看護小規模多機能型居宅介護のサービス提供の在り方

(2)中山間地域などにおけるサービス提供の在り方

(3)リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方

(4)介護保険施設などにおける利用者などの医療ニーズへの対応の在り方

(5)居宅介護支援事業所および介護支援専門員の業務などの実態

(6)介護保険サービスにおける認知症高齢者へのサービス提供に関する実態

(7)介護保険サービスにおける質の評価に関する調査研究

 調査項目は膨大ですので、ポイントを絞って内容を見ていきましょう。

各自治体は、看護小規模多機能をどのように支援しているのか

 (1)の看護小規模多機能型は、15年度改定までは複合型サービスと呼ばれていました。医療ニーズのある中重度の要介護者が、在宅での療養生活を送れるように、12年度の介護保険制度改正・報酬改定で定期巡回・随時対応サービスとともに創設された、新しい地域密着型サービスです。

 15年度改定では、より充実したサービスを行っている事業所を高く評価するために、訪問看護サービスが必要な利用者の割合が多い場合の加算(訪問看護体制強化加算)と少ない場合の減算(訪問看護体制減算)を創設したほか、利用促進を図るために区分支給限度基準額に含まれない報酬部分(総合マネジメント体制強化加算)が設けられました。

 今回の調査では、こうした加算・減算の算定状況などを全事業所(218か所程度)の全利用者(4000名程度)を対象に調べます。

 さらに「市区長村からの支援」についても調査を行い、その中から厚労省が好事例をピックアップし、該当市町村に対してヒアリングを実施することとしていま。調査検討組織の委員長を務める福井小紀子委員(日本赤十字看護大学教授)は「自治体の支援内容に深く切り込むために、10自治体程度に絞ってヒアリングを行いたい」と意気込みを述べています。

中山間地域とそれ以外の地域で、サービスの効率性はどう違うのか

 (2)の中山間地域では、利用者が遠方に散在しているケースが多く、サービス提供が非効率になるため加算が設けられています。今般の調査では、「中山間地域」と「それ以外の地域」で、移動コストや稼働率などがどれほど違っているのかという視点に立った調査が行われます。

 この点について調査検討組織の委員長を務める藤井賢一郎委員(上智大学総合人間科学部准教授)は、「現在の中山間地域への加算が実態に合っているかどうか微妙な部分もある。サテライト事業所や基準該当サービスの活用といった中山間地域での工夫があれば、それを広めていきたい」と述べ、サービス提供整備に関する市町村の取り組みも把握していく考えを強調しました。

 松田晋哉委員長(産業医科大学教授)は「市町村の取り組みが、要介護度の改善や維持といったアウトカムに関係しているかどうかが分かるとよい」と助言しています。

介護療養や特養、各施設で看取りをどう実施しているのか

 (4)の介護保険施設における医療ニーズへの対応では、「看取り」に重点を置いた調査が行われます。

 ところで看取りについては、医療と福祉では考え方に若干の差があるようです。福祉では「看取り計画」を作成してケアを行いますが、医療ではあくまで治療が優先であり、看取りを行うに当たって「看取り計画」を作成するケースは稀といいます。このため調査検討組織の委員長を務める今村知明委員(奈良県立医科大学教授)は、「特別養護老人ホームや療養病棟といった施設ごとの特性に合わせて看取りの実態を把握できるよう、調査票を工夫した」ことを説明しました。

 また(3)のリハビリについては、15年度改定で「機能訓練」だけではなく、「活動」と「参加」にも焦点を合わせ、さらに目標設定と達成度を把握し、それをリハビリの内容に還元していく「リハビリマネジメント」を重視するような報酬体系の大きな見直しが行われました。

 今般の調査では、こうした点に鑑みて、リハビリテーション計画の中で「目標とその達成期間」「実施内容と実施時間」「ADL/IADLの変化」「利用者宅への訪問の有無」などを詳しく調べることにしています。

認知症を有する利用者に、各介護サービスはどう対応しているのか

 今般の調査では、介護サービス事業者が認知症にかかっている利用者にどう対応しているのかを横断的に調べることにしています。

 介護保険データベースを活用して、全サービスの全事業所・施設が認知症高齢者にどのようなサービスを提供しており、認知症以外の高齢者へのサービスとどう異なっているのかを調べるほか、1万程度の事業所を対象に「協力医療機関はあるのか、その医療機関は認知症を専門としているか(」「認知症ケアのマニュアルなどは整備されているか」「原疾患は確定しているか」などを詳しく調べます。

 調査検討組織の委員長を務める粟田主一委員(東京都健康長寿医療センター研究部長)は、今般の調査で▽総合的なアセスメントを行っているか▽アセスメント情報を共有し、それに基づいてケアプランを立てているか▽医学的評価をしているか▽個々の利用者の状態に応じたケアをしているか―を把握したいと強調しました。

 このほか(5)のケアマネについては「タイムスタディ」調査を実施し、業務実態を詳細に把握することにしています。ちなみに、ケアマネに対するタイムスタディ調査実施は09年の研究事業以来となります。

 また(7)の「介護の質」については、これまで老人保健施設とケアマネについて行われていた研究内容を通所介護などにも拡大してデータ項目の妥当性などを検証するほか、品川区など「先駆的に介護サービスの質の評価に取り組む自治体」の事業状況検討なども行われます。

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