がん対策基本法の改正に向け、がん対策推進協議会が近く提言
2015.9.18.(金)
超党派の国会議員有志で構成される「国会がん患者と家族の会」(議連、代表世話人:尾辻秀久参議院議員・元厚生労働大臣)が、がん対策基本法の改正に向けた検討を進めています。がん対策推進協議会は17日、議連への提言に向けた議論を行いました。
議連は2016年6月にも「がん対策基本法の改正案」を国会に提出する考えで、協議会は近く提言書を提出します。
がん対策基本法は、わが国のがん対策のベースとなるもので、06年6月に成立し、翌07年4月に施行されました。
基本法では、次の3本の基本理念を謳うとともに、厚生労働大臣に対して「がん対策推進基本計画」を策定・改正するよう指示しています。
(1)がんの克服をめざし、がんに関する専門的・学際的・総合的な研究を進め、その成果を普及・活用し、発展させる【研究の推進】
(2)がん患者が、居住する地域にかかわらず、科学的知見に基づく適切な医療をうけられるようにする【均てん化】
(3)がん患者が置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重して治療方法などが選択されるよう、がん医療提供体制を整備する【患者本位の医療提供体制】
さらに、国が進める基本的施策として▽がんの予防・早期発見の推進▽がん医療の均てん化の促進▽がん研究の推進―の3つを掲げています。
基本法制定から間もなく10年が経過します。この間、「がん登録推進法」が制定され、「がん研究10か年戦略」が策定されるなど、がん医療を取り巻く状況が変化していることを受け、今般、超党派の議連で基本法改正が検討されているのです。協議会では、議連に対して法改正に向けた提言を行うこととしています。
17日に開かれた協議会では、委員から改正に向けた意見が述べられました。
桜井なおみ委員(一般社団法人CSRプロジェクト代表理事)は主に「がん患者」の立場に立って、、「がん診療連携拠点病院での標準的治療実施率にも格差がある」ことや「喫煙対策、がん検診が十分に進んでいない」状況を指摘し、既存の基本施策(予防・早期発見、均てん化、研究)を更に推進するよう求めました。さらに、改正法には▽小児がん・希少がん・難治性がん対策▽がん患者の就労を含めた社会的な問題への支援▽がん患者と家族の権利・尊厳を守る対策―を新たに盛り込むことも要望しています。
また難波美智代委員(一般社団法人シンクパール代表理事)も患者の視点から、次の4点を要望しました。
▽がん検診受診率向上のための施策を見直し、強化する
▽マイナンバー制度と連携した検診情報を一元的に管理する
▽女性や若年者のがん対策を検証し、改善する
▽がん情報提供の在り方に関する検討会を設置する
特に「がん情報」については、インターネットや書籍でさまざまな記事や広告が存在しますが、中には不正確や不適切な情報も多く、医学的知識のない患者は混乱し、不利益を被る場面も少なくありません。こうした数多くの情報を評価し検討する場を設けるとともに、国が指導・規制などを行うよう求めています。
一方、堀田知光会長代理(国立がん研究センター理事長)は「基本法には理念や責務を規定するべきで、細かい具体的な施策などは『がん対策推進基本計画』などの中に落とし込むべきではないか」との考えを示しています。
委員から出された意見は、門田守人会長(がん研究会理事・名誉院長)と厚生労働省で整理して「提言書」にまとめ、近く議連に提出。改正法案に反映させる考えです。
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