運営会社 GLOBAL HEALTH CONSULTING

現場が気付けば現場は変わる、分析結果を伝える効果的なテクニックとは

2015.9.21.(月)

 重要な改善点を指摘したのに、全く現場が変わらない―。そんな悩みを持たれた病院幹部、診療情報の分析担当の方も多いのではないでしょうか。今回は、「月刊新医療」(2015年9月号)で紹介されている、岩手県立中央病院の事例について共有させていただきます(月刊新医療の詳細はこちら)。

分析結果にがく然

 岩手県立中央病院の望月泉院長が「月刊新医療」に寄稿した「DPCデータを用いた分析―パスの改善とDPC病院II群への取り組み―」で、分析結果をしっかりと現場に伝え、現場を改善していく大変興味深い事例が掲載されています。

 岩手県は、県立病院20ある「県立病院最多地区」。同院は、その中でも中核を担う基幹病院。2015年4月時点で、病床数は685床(一般のみ)、医師数190人、平均在院日数12.2日、病床利用率は約87%、1日あたりに受け入れる救急車は平均16.4台で、年間換算だと約6000台。盛岡医療圏の約半数の救急車を受け入れています。

 DPCの導入は06年6月。その際、(1)クリティカルパスの改善(2)包括算定部分(投薬や検査など)の回数などの見直し(3)入院医療の外来化の推進―の3点に重点を置いた取り組みを進めてきました。外来化の推進に関連して、診療科全体で術前検査は外来で行うこととしてきましたが、循環器科に限ってはこの原則が順守されていませんでした。ベンチマーク分析を行い、このことを知った望月院長は「がく然とした」と述べています。

 さらに、血管拡張剤の使用状況も分析したところ、他病院では「投与なし」が9割を超えるニトロール単剤が全例に投与されており、他病院で周術期の注射請求による抗生剤の投与はほとんど行われていないにもかかわらず、全症例にセファメジンが注射請求され投与されていました。術前に胸部X線の写真撮影が他病院では約1割のところ、同院では8割超ということも分かりました。

院長より診療情報管理士の方が伝わることも

 これだけ分かりやすい改善に向けた分析結果があれば、循環器科の科長を院長室に呼び出し、単にこの数字を見せて、トップダウンで改善を促せば済むようにも思えます。ただ、それでは残りの循環器科の医師にしっかりと伝わらず、クリティカルパスを見直し、改善につながらない可能性もあります。そこで望月院長は、循環器科の医師全員が参加する会議を設置。院長から科長に伝えるのではなく、診療情報管理士が淡々とこの分析結果を説明するという手法を取りました。望月院長は、分析結果の報告を受ける一人として会議に参加している形としました。

 すると、何食わぬ顔で「なるほど」などとしている望月院長の横で、医師たちがざわつき出し、現状のパスを改善する必要があることに気付き始めたといいます。その結果、現在、術前検査は外来で行うようになり、血管拡張剤や周術期の抗生物質も必要な患者のみに投与するパスに改善されています。

 各診療科は専門家集団であり、たとえ院長が改善に向けた意見をしても、「院長は専門家ではない」と押し返されてしまうこともあります。そういうことを未然に防ぐためには、同じ医師ではなく、全く別の立場の人間が淡々とデータを示す方が伝わることもあります。望月院長は、そのことを長年の経験から熟知していたため、あえて今回のような手法を選択したのだと思われます。

 せっかく得た貴重なデータも、伝わらなければ意味がありません。貴重なデータをいかにして現場に伝え、改善につなげていくか―。今回の手法以外にも、さまざまな伝え方はあると思います。以下はGHCのクライアント病院や病院ダッシュボードのユーザー事例の一覧へのリンクとなりますので、ぜひ、ご参考にしてください。

クライアント事例一覧
「病院ダッシュボード」事例一覧

 また、望月院長による詳細な病院改革の事例は以下ですので、ご興味あればこちらも併せてご確認ください。

岩手県中央病院、累損57億円からの大改革―「医療・経営の質」高めたデータ分析