介護サービス21種類のうち19が黒字維持―老健などは収支悪化、経営実調速報
2014.10.3.(金)
施設系や訪問系など21通りの介護保険サービスのうち、19のサービスでは黒字を維持していることが、社会保障審議会(社保審)の介護事業経営調査委員会が実施した調査の速報値で明らかになりました。ただ、地域密着型特別養護老人ホームの収支が3年前の前回調査から大幅に改善したのに対し、介護老人保健施設など従来の介護施設では軒並み悪化するなど、サービス形態によって変動にはばらつきがあります。これらの調査結果は社保審・介護給付費分科会に報告され、15年度介護報酬改定の基礎データとして使われます。
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今回結果がまとまったのは介護事業経営実態調査で、同委員会が3年ごとに実施しています。介護保険サービスを施設系、訪問系、通所系とその他に分けて、毎回3月時点の収支やスタッフの人件費などの推移をまとめたものです。今回は対象になった3万3339の施設・事業所のうち1万6145施設・事業所が有効回答しました(有効回答率48.4%)。
調査結果(速報値)によりますと、給与費などのコストを収入から差し引いた際、黒字になるかどうかを見る「収支差率」は、調査した計21通りのサービスのうち、居宅介護支援(-1.0%)と複合型サービス(-0.5%)を除く19サービスで黒字を維持。また、前回も調査した19サービスのうち、12では収支の改善が認められました。
施設系では、地域密着型特養の収支差率が前回の1.9%に対し、今回は8.0%(6.1ポイント上昇)と大きく改善しました。ただ、収入に占める給与費の割合は57.2%で、前回から1.4ポイントのダウンです。これ以外の施設系サービスでも黒字を維持しましたが、収支差率は軒並み下がっています。中でも老健施設は5.6%で、前回から4.3ポイントと大幅なダウンです。このほかは従来型の特養が8.7%、介護療養型医療施設が8.2%という結果で、それぞれ0.6ポイント、1.5ポイント悪化しました。
また、収入に占めるスタッフの給与費の割合は老健施設が56.5%で、前回の52.2%から4.3ポイントのアップでした。従来型の特養は57.6%(0.1ポイント上昇)、介護療養型医療施設は56.3%(1.1ポイント上昇)という結果で、施設形態による給与格差が縮まりました。
訪問系サービスのうち訪問看護ステーションでは、収支差率が2.7ポイント上昇しましたが、給与費の割合は3.4ポイントのダウンです。その他のサービスでは、特定施設入居者生活介護の収支差率が12.2%で、前回の3.5%から大幅に改善しました。ただ、給与費の割合は49.0%から39.9%と9.1ポイント下がりました。