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薬局での「薬剤取り違え」や「数量間違い」が5399件―日本医療機能評価機構2014年度調査

2015.11.2.(月)

 2014年の1年間に薬局から報告されたヒヤリ・ハット事例は5399件あり、午前10時~正午までの間で発生する比率が著しく高い。ヒヤリ・ハットの内容としては、「数量間違い」「薬剤取り違え」などが多い―。このような状況が、10月26日に日本医療機能評価機構が公表した「薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業 平成26年 年報」から明らかになりました。

薬局のヒヤリ・ハット、AM10時~12時に集中

 日本医療機能評価機構では、医療安全対策の一環として医療機関で発生した事故やヒヤリ・ハット事例を収集、分析する「医療事故情報収集等事業」を実施しており、2008年度からは薬局を対象としたヒヤリ・ハット事例の収集・分析にも着手しました。

 薬局の調剤業務だけでなく、薬局から医療機関に対して疑義照会を行った結果、薬局で発見されたヒヤリ・ハット事例、さらに一般用医薬品の販売に関する事例など、幅広い事例が調査対象になっています。

 2014年度には、8244軒の調剤薬局から5399軒のヒヤリ・ハット事例が報告されました。歴月別に大きな変動はありませんが、1月と7月にやや報告件数が多くなっていることが分かります。曜日別に見ても、大きな特徴はありません。

 一方、発生時間帯には「午前10時から正午まで」に集中しているという特徴があります。報告された5399件を発生時間帯別に見ると、午前10時から正午までに2044件・37.9%と、実に4割近くのヒヤリ・ハット事例がこの時間帯に発生しているのです。前年度も同様な状況であり、薬局の業務フローなどと突き合わせた分析が必要と言えるでしょう。

調剤薬局におけるヒヤリ・ハット事例の発生は、午前10時~正午の時間帯に集中している

調剤薬局におけるヒヤリ・ハット事例の発生は、午前10時~正午の時間帯に集中している

 報告された5399件のうち85.1%は調剤業務を行う中で生じています。その内訳を見ると、「数量間違い」が最も多く1343件・24.9%、次いで「薬剤取り違え」817件・15.1%、「規格・剤形間違い」705件・13.1%などと続きます。また、「レセコンへの入力ミス」も数多く発生しています。

調剤薬局におけるヒヤリ・ハット事例の中身を見ると、「数量間違い」が圧倒的に多く、ほかに「薬剤取り違え」「規格・剤形間違い」が多くなっている

調剤薬局におけるヒヤリ・ハット事例の中身を見ると、「数量間違い」が圧倒的に多く、ほかに「薬剤取り違え」「規格・剤形間違い」が多くなっている

薬剤取り違えが生じやすい「名称類似」事例を整理

 次にヒヤリ・ハット事例の発生要因を見てみると、「当事者の確認怠り」が最も多く4181件、次いで「勤務状況が繁忙だった」1406件、「医薬品に由来する」892件などが目立ちます(複数回答)。

薬局におけるヒヤリ・ハット事例が発生した要因には、「確認怠り」や「勤務状況が繁忙」といったもののほか、「医薬品に由来する」(名称の類似など)も多い

薬局におけるヒヤリ・ハット事例が発生した要因には、「確認怠り」や「勤務状況が繁忙」といったもののほか、「医薬品に由来する」(名称の類似など)も多い

 仮にこれらを3大要因とすると、「当事者の確認怠り」「勤務状況」と「医薬品由来」とは少し性質が異なります。前者は業務フローの見直し(例えば複数チェックや負担軽減など)で防止・軽減することが可能です。一方、後者の「医薬品由来」は、例えば名称が告示していることなどが背景にあり、医療者側の対応と同時に、製薬メーカーの対応も必要となってきます。

 薬剤取り違え817件のうち、246件は「名称類似」に起因しています。こうした状況を見て機構では、今般、「名称類似に関するヒヤリ・ハット」を特に取り上げて分析しています。

 246件の「名称類似」事例は、処方した医薬品と調剤した医薬品の名称が類似していることを意味し、「頭2文字の一致」していたケースが62件、「頭3文字以上が一致」していたケースが153件、「その他」が31件となっています。

 頭2文字が一致していた事例としては、▽「マグミット」と「マグラックス」7件▽「セフカペンピボキシル塩酸塩」と「セフジトレンピボキシル」6件▽「ムコダイン」と「ムコトロン注」3件▽「セフジニル」と「セフゾン」2件▽「トラネキサム酸」と「トランサミン」2件―などが挙げられます。

 機構では、過去の事例も併せて分析し、「主な薬効が異なる医薬品の組み合わせ」や「成分が異なるハイリスク薬(外用薬を除く)を含む医薬品の組み合わせ」など、患者に与える影響が大きくなる可能性があり、特に注意を要すると考えられる事例を下表のように整理。

頭2文字が一致しているので誤りやすく、かつ重大な副作用が発生する可能性のある医薬品の一覧

頭2文字が一致しているので誤りやすく、かつ重大な副作用が発生する可能性のある医薬品の一覧

 中でも、次の組み合わせは、過去にもヒヤリ・ハット事例として報告されており、医療現場では最大限の注意が必要と言えそうです。

▽「ファムビル」と「ファロム」

▽「プロパジール」と「プロへパール」

▽「ムコダイン」と「ムコスタ」

▽「グルファスト」と「グルベス」

▽「ノボリン」と「ノボラピッド」

 

 また頭3文字が一致していた事例として、▽「アムロジピン」と「アムロジン」15件▽「ロキソニン」と「ロキソプロフェンナトリウム(またはロキソプロフェンNa)」12件▽「ビオフェルミン」と「ビオフェルミンR」6件▽「プレドニゾロン」と「プレドニン」5件▽「ノイロトロピン」と「ノイロビタン」4件▽「リンデロン-V」と「リンデロン-VG」4件―などが目立ちます。

頭3文字が一致しているので誤りやすく、かつ重大な副作用が発生する可能性のある医薬品の一覧

頭3文字が一致しているので誤りやすく、かつ重大な副作用が発生する可能性のある医薬品の一覧

 特に注意を要する組み合わせとしては、次のケースを挙げました。

▽「アスパラ-CA」と「アスパラカリウム」

▽「インタール点眼液」と「インタール点鼻液」

▽「ザジテン点鼻液」と「ザジテン点眼液」

▽「ゾビラックス眼軟膏」と「ゾビラックス軟膏」

▽「ノイロビタン」と「ノイロトロピン」

 

 また「頭●文字の一致」はないものの、名称に類似性があり、かつ誤投与が大きな健康被害を及ぼす可能性があり、特に注意を要する組み合わせとして次のケースも挙げています。

▽「アナフラニール」と「トフラニール」

▽「エクア」と「エックスフォージ」

▽「メトグルコ」と「メチコバール」

▽「アテレック」と「アレロック」

▽「アレロック」と「アムロジン」

▽「ザンタック」と「ザイロリック」

▽「シルニジピン」と「ニフェジピン」

▽「セスデン」と「ゼスラン」

▽「トミロン」と「トロキシン」

▽「ニセルゴリン」と「ニコランジル」

▽「パスタロンソフト軟膏20%」と「ヒルドイドソフト軟膏0.3%」

▽「プルスマリンA」と「プランルカスト」

▽「ペキロンクリーム」と「ベギンクリーム」

▽「ラシックス」と「ラミシール」

▽「リカバリン」と「リリカ」

薬局ヒヤリ6 151026

 もちろん、薬局をはじめとする医療現場でも「医薬品名、剤形、規格と細かく分けて確認し入力する」「医薬品名、規格を一文字ずつ確認する」「指差し、声出し確認をする」「処方内容と調剤された薬を照合し、処方せんにチェックする」などの対応策をとっていますが、製薬メーカー側にも「名称の変更」や「デザインの変更」などの取り組みが求められるかもしれません。

後発品推進の裏で、「後発品の取り違え」も発生

 後発医薬品の使用が進められる中で、薬局が「先発品から後発品への変更」「後発品Aから後発品Bへの変更」「一般名処方された後発品の処方」といった業務を行うケースも増加しています。

 機構では、こうした業務の中で発生しやすいヒヤリ・ハット事例をまとめており、こうした点にも最大限の留意が必要と言えます。

一般名処方されるなどして、後発品を選択した際に、誤った選択をしてしまったケース(その1)

一般名処方されるなどして、後発品を選択した際に、誤った選択をしてしまったケース(その1)

一般名処方されるなどして、後発品を選択した際に、誤った選択をしてしまったケース(その2)

一般名処方されるなどして、後発品を選択した際に、誤った選択をしてしまったケース(その2)

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