塩崎厚労相が「介護サービスの確保」「生涯現役社会の実現」を強調―一億総活躍国民会議
2015.11.2.(月)
必要な介護サービス確保のために「在宅・施設サービス整備の充実・加速化」と「介護人材の確保」を進めると同時に、生涯現役社会の実現に向けて「個人・保険者が疾病予防などに取り組む際のインセンティブ強化」や「データヘルスの推進」などに取り組む―。このような方針が、29日に開かれた「一億総活躍国民会議」の初会合で塩崎恭久厚生労働大臣から報告されました。
「一億総活躍国民会議」は、いわゆるアベノミクスの新たな3本の矢である(1)希望を生み出す強い経済(2)夢を紡ぐ子育て支援(3)安心につながる社会保障―の実現に向けた具体的なプランを策定するために設置されました。
29日に初会合が開かれ、塩崎厚労相は(3)の「安心につながる社会保障」の実現に当たって「介護離職ゼロ」と「生涯現役社会の実現」に取り組む考え方を発表しました。
前者の「介護離職ゼロ」では、▽地域包括ケアシステムの構築に向けて必要な介護サービスの確保▽働く家族を支える環境づくり―を行うとともに、「十分に働ける人が、家族の介護のために離職せざるを得ない」という状況を防ぐために、「希望する人が働き続けられる」社会の実現を目指しています。
このため、まず「在宅・施設サービス整備の充実・加速化」を図るとしています。
ところで戦後に、地方から都市部へと集団就職を行った、いわゆる団塊の世代が、2025年にはすべて75歳以上の後期高齢者となります。このため、都市部では急速な高齢化が進むことが分かっています。そこで塩崎厚労相は、特に「都市部を中心とした在宅・施設サービスの整備」に力を入れる方針を明確にしています。
また介護サービスは、いわゆる労働集約型の業務であり、介護を行う人の確保が極めて重要です。しかし、介護業務はいわゆる3K(きつい、危険、汚い)職場であると認識され、労働者の定着が進みません。さらに、アベノミクスの効果として経済が上向く中では、人材が他産業に流れるなど、介護人材の確保はますます厳しい状況にあります。
一方、今後の高齢化による介護ニーズの高まりを考慮したとき、2013年に約171万人である介護人材が、2025年には約248万人が必要になると試算されています。
こうした状況を重く捉え、塩崎厚労相は▽他産業から介護事業への参入促進▽介護職員の処遇改善▽介護職員の資質向上―によって人材を確保するとともに、介護業務の効率化を進めて介護従事者の負担を軽減し、定着を図る方針も強調しています。
このほか、▽介護休業などを取得しやすくするための制度改革や職場環境の整備▽地域包括支援センターなどの相談機能の強化―などを行うことで、「働く家族」を支える環境づくりにも力を入れることを明確にしました。
一方、少子化が進む中で、「人材」の対象は若年者にとどまらず、「高齢者」「疾病を抱えた人」にも広げる必要があります。これは、高齢者などの生活を経済的に支えるだけでなく、「生きがい」を持つことで自律・自立が継続でき、要介護者を減らすことにもなると期待されています。
そこで塩崎厚労相は、▽健康寿命の延伸や経済的自立による「生涯現役社会」の実現▽高齢者、難病患者、障害者を含めた一人ひとりの生活の土台となる「地域」の力の醸成・強化を行うことも打ち出しました。
具体的な取り組みとしては、▽個人・保険者が疾病予防などに取り組む際のインセンティブ強化▽データヘルスの推進―などが掲げられています。