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病院内の高齢者施設「SNW」提唱する日慢協、「目の付け所が素晴らしい」―日病の堺会長

2015.9.28.(月)

 今後、病床の減少・削減が進むと予想される中で、削減した病床を「高齢者の居住施設」(Skilled Nursing Ward:SNW)として活用してはどうかという日本慢性期医療協会の提案について、日本病院会の堺常雄会長は「大胆な提案で、目の付け所が素晴らしい」と一定の評価をしていることを28日の記者会見の席で明らかにしました。

9月28日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

9月28日の定例記者会見に臨んだ、日本病院会の堺常雄会長

日病内の議論を続けるが、「医療の質確保」も可能

 SNWは日本慢性期医療協会の武久洋三会長が提唱しているもので、病院内に60床を限度として認可する「高齢者向けの居住施設」で、施設長には10月から研修が始まる特定看護師のみが就任できるとしています。看護配置は「医療療養病床の半分」となる40対1、介護配置は「介護療養病床と同じ」30対1にする考えで、武久会長は「医師・看護師が常駐しているので、ターミナル・看取りへの対応もしっかり行うことができる」と述べています(関連記事はこちら)。

 このSNW構想は、9日に開かれた「療養病床の在り方等に関する検討会」でも、同協会の池端幸彦副会長から披露されています。

 日病の堺会長は28日の記者会見で、「会員病院の37%が療養病床を設置しており、療養病床の在り方は、日病にとっても大きなテーマである。検討会には、日病からは社会医療法人財団新和会の松本隆利理事長に委員として出席してもらっており、同時に日病内にプロジェクトチームを設置して意見集約を図っている」ことを紹介。

 さらに日慢協の提唱するSNW構想について「大胆で、目の付け所が素晴らしい」と一定の評価を行いました。もっとも日病内でSNWを推進しようという意見集約をするまでには至っておらず、今後、さまざまな角度から検討をしていく予定です。

 SNW構想では、前述のように施設長には特定看護師が就くことになっており「医療・介護の質」を十分に確保できるかという点で懸念を抱く人もいます。この点について堺会長は、「病院を退院し、在宅療養や介護施設へ行く場合には、医師の判断の下ではあるが、ケアの調整などを行うのはケアマネジャーだ。そういった点を踏まえると、特定看護師が施設長であるSNWで医療・介護の質を保つことも可能と考えられる。また急変時などに備えて、地域包括ケア病棟との連携体制を十分に構築しておくことも考えられる」と述べています。

 堺会長は「在宅療養を送っている人、介護施設の入所者が何を求めているのかを議論する必要がある。質の高い介護や療養を行うためには、それなりの投資をする必要があるが、議論の入り口として良い構想ではないかと思っている」とも述べ、今後、日病内で積極的にSNW構想を検討していくことを強調しました。

病院の少子化対策は効果的、財政的支援を求める

 また堺会長は、安倍晋三首相が提唱した「新たな3本の矢」の中に「子育て支援」が盛り込まれたことを高く評価しています。安倍首相は24日に「アベノミクスは第2のステージに移る」ことを述べ、新たな3本の矢として(1)強い経済(2)子育て支援(3)社会保障(介護施設の整備や介護人材の育成、在宅介護の負担軽減など)―の3分野の政策を重点的に推進し、出生率を1.8へ引き上げたい(14年は1.42)との考えを示しています。

 内閣府の調査によれば、一般企業では2011年時点、出産後に60%の女性が退職しています。それに比べ、日本赤十字病院グループでは「出産・育児による退職者は10%にとどまっている」ことが堺会長から紹介されました。

 この背景には、▽産休▽育休▽短時間労働▽施設内保育―などの諸施策をしっかりと準備していることが挙げられますが、そこでは病院側の負担も重く、600床以上の病院では1病院当たり3000-6000万円をかけて、施設内保育などを実施している状況があります。

 堺会長は、こうした負担をしながら少子化対策に力を入れ、その効果も出ていることを強調し、国に対して「何らかの財政的な支援」を求めています。

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