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若手医師は過疎地や3次救急の病院を忌避、男女別・出身大学別のアプローチを―日医総研

2015.11.10.(火)

 卒後10年未満の若手医師は勤務先の選択に当たって、「年収が高いこと」「過疎地・へき地・離島でないこと」「休日が多いこと」「当直回数が少ないこと」「3次救急でないこと」などを重視している―。このような調査分析結果を日本医師会総合政策研究機構(日医総研)がこのほどまとめました。

 出身大学の公私別、男女別、診療科別などの特徴もあり、日医総研では地方の医師不足解消に向けた効果的なアプローチがとれるのではないかと見ています。

年収や勤務地、救急指定の有無などが、勤務地の選択にどれだけの影響を及ぼしているのかが定量的に把握できた

年収や勤務地、救急指定の有無などが、勤務地の選択にどれだけの影響を及ぼしているのかが定量的に把握できた

過疎地の勤務を選択する確率、大都市圏と比べて15%低い

 医療提供体制の再構築を考える上で、医師の「地域偏在」「診療科偏在」は避けて通ることができないテーマです。

 日医総研は、この問題を解消するための第一歩として「医師が何を重視して勤務地や診療科などを選択しているのか」を調査分析し、このほどワーキングペーパー「勤務先の病院選択において若手医師が考慮する要因の研究」を発表しました。

 調査対象は「卒後10年未満の若手医師」で、彼らが▽年収▽所在地▽主体(大学、国公立、民間)▽病床規模▽休日数▽当直回数▽同じ診療科の当直医師数▽救急(指定なし、1次、2次、3次)―のいずれの項目を重視しているのかをアンケート形式で調べました。

(1)年収(2)所在地(3)運営主体(4)病床規模(5)休日数(6)当直回数(7)同じ診療科の常勤医師数(8)救急指定―のいずれによって勤務地の選択が変わるかを調べた

(1)年収(2)所在地(3)運営主体(4)病床規模(5)休日数(6)当直回数(7)同じ診療科の常勤医師数(8)救急指定―のいずれによって勤務地の選択が変わるかを調べた

 その結果、全般的に見ると「年収が高いこと」「過疎地・へき地・離島でないこと」「休日が多いこと」「当直回数が少ないこと」「3次救急でないこと」などを重視している一方で、「運営主体(大学か国公立かなど)」や「病床数」などは重視していないことが分かりました。

年収や勤務地、救急指定の有無などが、勤務地の選択にどれだけの影響を及ぼしているのかが定量的に把握できた

年収や勤務地、救急指定の有無などが、勤務地の選択にどれだけの影響を及ぼしているのかが定量的に把握できた

 これらにどれだけのインパクトがあるのかを単純に比較することは難しいのですが、「勤務地が過疎地などの場合、大都市圏に比べて選択される確率が15.1%低下する」「勤務地が3次救急であると、救急指定のない場合に比べて選択される確率が5.8%低下する」「年収が100万円高くなると、選択される確率が3.4%高まる」ことなども明らかになっています。

女性医師の確保には、年収増よりも休日増が効果的

 もっとも勤務場所の選択に当たっては、男女別や出身大学別などで特徴もあるようです。

 例えば、救急指定について見てみると、3次救急を忌避する傾向は精神科(選択確率が12.6%低下)、内科(同じく8.3%低下)の医師で高く、逆に小児科(同じく3.9%低下)、外科(同じく5.6%低下)の医師では低くなっています。一方で、当然とも思えますが、救急科に勤務する医師は、3次救急指定病院であることを強く希望しており、救急指定のない病院に比べて26.4%選択確率が高くなります。

 これを男女別に見ると、3次救急指定病院を選択する確率の低下は男性のマイナス4.8%に対し、女性ではマイナス8.2%となっており、女性医師のほうが3次救急を忌避する傾向が高くなっています(インパクトが1.7倍)。

3次救急指定の病院について、診療科別・男女別に忌避するか否かで特徴がある

3次救急指定の病院について、診療科別・男女別に忌避するか否かで特徴がある

 また勤務地について、過疎地などを忌避する傾向は、私大出身者のほうが国公立大出身者よりも高く(選択確率の低下は私大出身者マイナス17.8%、国公立大出身者マイナス13.9%)、現在の勤務地によっても大きな違いがあります(同じく東京勤務者はマイナス23.8%だが、北海道・東北勤務者はマイナス6.0%)。

過疎地であることが勤務場所の選択にどれほどの影響があるのか、出身大学や現在の勤務地で差がある

過疎地であることが勤務場所の選択にどれほどの影響があるのか、出身大学や現在の勤務地で差がある

 一方、年収を重視する傾向は、男性のほうが女性よりも強いことも分かりました(年収100万円増による選択確率の上昇は男性3.9%、女性2.1%)。

男女別に見ると、年収増や当直回数が、勤務場所選択に差があることが分かった

男女別に見ると、年収増や当直回数が、勤務場所選択に差があることが分かった

 こうした状況を踏まえて日医総研は、次のような政策を検討するで、医師の偏在などを是正できるのではないかと提案しています。

▽私大出身者をターゲットに、地方での勤務のインセンティブ(例えば手厚い年収)を設ける(理由:私大出身者には大都市圏志向が強く、過疎地などでは休日日数などでのインセンティブ付与は非現実的なため)

▽女性医師について当直回数を顕著に減らす、あるいは当直なしにする(理由:女性医師は当直回数の多さを忌避する傾向にある一方で、年収増を志向する傾向が小さいため)

▽医師の居住地を地方の中核・中小都市に置き、そこから過疎地などの病院へ輸送する仕組み(タクシーやハイヤー会社との連携)を設ける(理由:東京以外に勤務する医師は、勤務地が地方の中核・中小都市であることを志向する傾向があるため)

 一方で、東京勤務の若手医師は、勤務地が過疎地などであれば選択確率が23.8%と著しく低下します。これを年収増で補おうとすれば800万円の増加(100万円増につきプラス3.3%という数値から機械的に算出)が必要となり、あまりに非現実的です。

 日医総研は、こうしたデータを用いて、過疎地や3次救急指定病院への勤務者を増加するために、「年収」や「休日」などをどのように手当てしていけばよいか考えてはどうかと訴えています。

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