一般病床の平均在院日数はわずかに延び、病床利用率は若干の増加―病院報告、15年9月分
2016.1.14.(木)
2015年9月には、一般病床の平均在院日数が前月に比べてわずかに延び(0.3日増)、病床の利用率は若干増加した(1.2%増)―。こうした状況が、13日に厚生労働省が発表した2015年9月分の病院報告から明らかになりました(資料はこちら)。
病床利用率の増加は病院の経営上は好ましい状況ですが、平均在院日数の延伸は医療経済・患者のQOLという面から見て決して好ましいことではありません。在院日数を短縮するとともに、利用率を上げるための集患対策などの手法が望まれます。
厚労省は、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を毎月集計し「病院報告」として公表しています。15年9月の状況を見てみましょう。
(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院124万783人(前月比1万5481人、1.2%減)、外来135万2738人(同3万1866人、2.4%増)で、入院は若干の減少、外来は若干の増加となりました。
診療所の療養病床については、入院6395人(同85人、1.3%減)となっています。
病院の一般病床に焦点を合わせると、入院患者数は65万6345人で、前月に比べて1万3102人・2.0%減少しました。また、病院の療養病床では、入院患者数は29万564人で、前月に比べて1315人・0.5%とわずかに減少しています。
(2)の平均在院日数については、病院全体では29.3日で、前月から0.6日延びています。病床種別に見ると、▽一般病床16.5日(前月比0.3日増)▽療養病床164.9日(同0.8日増)▽介護療養病床342.0日(同1.5日増)▽精神病床278.1日(同0.8日増)▽結核病床71.5日(同0.4日増)―とすべてで延びています。有床診療所の療養病床は106.5日で、やはり前月に比べて1.2日延びています。
在院日数の延伸は、医療費の増加、院内感染リスクの高まり、ADLの低下などの弊害があるため、政府は「平均在院日数の短縮」を重要政策の1つに位置付けています。前々月(15年6月)には、全体で2.9日、一般病床で1.6日、療養病床で12.7日と大幅な短縮が見られました(詳細はこちら)。その反動か、前月(15年7月)・前々月には延伸する方向に動いており、その傾向が止まっていません。
平均在院日数の短縮は、延べ患者数の減少、つまり病床利用率の低下、減収に繋がります。このため「利用率を維持するために、平均在院日数を延ばす」という現象も一部に生じることがあります。しかし、前述のとおり平均在院日数の延伸は医療にとって好ましいものではないため、「平均在院日数を短縮しながら、病床利用率を上げていく」ことが重要でしょう。
(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では79.2%で、前月に比べて0.4ポイント上昇しました。
病院の病床種別に見ると、▽一般病床74.0%(前月から1.2ポイント上昇)▽療養病床87.6%(同0.7ポイント低下)▽介護療養病床91.4%(同0.4ポイント低下)▽精神病床86.0%(同0.4ポイント低下)▽結核病床36.4%(同0.6ポイント低下)―となっており、一般病床では上昇、その他の病床では低下していることが分かります。
(2)の結果と合わせると、一般病床については「平均在院日数が延び、病床利用率も上昇」しており、利用率維持のために平均在院日数を延ばした可能性も否定できません。在院日数短縮に向けた取り組みを期待したいところです。
また一般病床以外では「平均在院日数が延びたにもかかわらず、利用率が低下」しており、これは前々月から前月にかけてと同じ状況で、集患が非常に厳しい状況が伺えます。
今後の動向をきちんと見ていく必要がありそうです。
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