15年6月、平均在院日数の短縮と病床利用率の上昇を同時に実現―病院報告
2015.10.6.(火)
病院の平均在院日数は前月から短縮したが、あわせて病床利用率も高くなっており、経営的には良い傾向にある―。こういった状況が、5日に厚生労働省が発表した2015年6月分の病院報告から明らかになりました。
平均在院日数の減少は、病床稼働率の低下につながります。このため、在院日数短縮の取り組みと同時に、集患などの稼働率維持・向上に向けた対策をとる必要がありますが、こうした対策がうまく進み始めたと考えることもできそうです。
病院報告は、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を毎月集計するものです。15年6月の状況を見てみましょう。
(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院125万1385人(前月比1万3256人、1.1%増)、外来143万6828人(同17万7251人、14.1%増)で、入院・外来とも増加しました。外来患者の大幅増が目立ちます。診療所の療養病床では入院6539人(同70人、1.1%減)となりました。
このうち病院の一般病床を見てみると、入院患者数は66万5205人で、前月に比べて1万2278人・1.9%増加しました。また、病院の療養病床では、入院患者数は29万2010人で、前月に比べて238人・0.0%とわずかながら増加しています。
(2)の平均在院日数に目を移すと、病院全体では28.1日で、前月から2.9日短縮しました。病床種別に見ると、▽一般病床15.8日(前月比1.6日減)▽療養病床156.2日(同12.7日減)▽介護療養病床304.2日(同24.5日減)▽精神病床256.5日(同27.6日減)▽結核病床66.9日(同1.5日減)―と軒並み短縮しています。また、有床診療所の療養病床も99.0日で、前月に比べて7.1日短縮しています。
在院日数の短縮は、医療費の効率化や、院内感染リスクの解消やADL低下の防止など医療の質の向上につながるため、政府の重要政策の1つに位置付けられています。もちろん疾患の季節変動や患者構成も変化するため、暦月ごとの変動も大きく、長期的な視点で見る必要がありますが、前月から大きく短縮している状況は好ましいと言えます。
ところで平均在院日数の短縮は、患者数の減少、つまり病床利用率の低下、さらには減収に繋がります。このため、地域の医療機関との連携を強化したり、救急患者の受け入れを進めるなどの集患対策や、場合によっては病床規模の縮小や機能転換などの多角的な対策が求められます。
しかし、(3)の月末病床利用率に目を移すと、病院全体では79.1%で、前月に比べて2.2ポイント上昇しています。今年1月(79.9%)から2月(79.5%)にかけて0.4ポイント減、2月から3月(79.3%)にかけて0.2ポイント減、3月から4月(79.1%)にかけて0.2ポイント減、4月から5月(76.9%)にかけて2.2ポイントと、4か月連続して低下していましたが、下げ止まった状況が伺えます。
病院の病床種別に見ると、▽一般病床73.5%(同3.7ポイント上昇)▽療養病床88.5%(同0.3ポイント上昇)▽介護療養病床91.8%(前月から増減なし)▽精神病床86.4%(同0.2ポイント上昇)▽結核病床36.6%(同2.1ポイント上昇)―となっており、すべての種別で上昇していることが分かります。
「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の上昇」が同時に実現できたのは好ましい状況で、今後の推移を見守るとともに、病院における「利用率上昇に向けた取り組み」内容の分析を行う必要がありそうです。
【関連記事】
一般病床の利用率、前月比3.6ポイント減の69.6%―15年5月病院報告
15年4月末の一般病床利用率は79.1%、3か月連続の低下―病院報告
300床病院が在院日数を1日短縮、稼働率維持には1か月36人の新規患者獲得が必要