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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

300床病院が在院日数を1日短縮、稼働率維持には1か月36人の新規患者獲得が必要

2015.8.13.(木)

 300床の病院が在院日数1日短縮による稼働率低下を避けるためには1か月当たり36人、年間では434人の新規患者獲得が必要である―。このような試算を、GHCアソシエイトマネジャーの湯原淳平が行いました。

 湯原は「これだけの新規患者獲得は難しい。平均在院日数は今後も短縮させていく必要があり、ダウンサイジングや、最終的には病院の再編統合も視野に入れる必要があるのではないか」とコメントしています。

平均在院日数の短縮は今後も続く見込み

 厚生労働省は「平均在院日数の短縮」を進めています。その背景に医療費の適正化があることは周知の事実ですが、医療の質や患者のQOLを向上させる狙いもあります。

 わが国の診療報酬体系では、入院料は出来高でもDPCでも「1日当たり」で支払われます。したがって入院期間が長くなれば、逓減制が設けられているとはいえ入院医療費が増加していきます。そのため入院期間の短縮を促すために、入院料の施設基準に定められた平均在院日数の短縮が進められているのです。

 また在院日数の短縮は、院内感染やADL低下を防止することになるため、医療の質が向上することを意味します。さらにDPCのII群の要件である「診療密度」を上げるためには、平均在院日数を短縮することが極めて重要となります(関連記事はこちら)。

 また、さらに、7対1一般病床の施設基準である「重症患者(重症度、医療・看護必要度のA項目2点以上かつB項目3点以上の患者)が15%以上」を維持するためには、軽症患者の退院・転院を支援するなどする必要があり、平均在院日数が必然的に短縮していきます。

 一般病床の平均在院日数を見ると、1996年には32.8日でしたが、2013年には17.2日にまで短縮しています(病院報告より)。ただし諸外国を見ると、急性期病床の平均在院日数はさらに短く、OECD加盟国の平均では7.1日(11年)となっており、今後も平均在院日数の短縮策が進められるものと考えられます。

早急な機能分化が必要、病床削減や再編統合も視野に入れる

 ところで平均在院日数の短縮は、延べ在院日数の減少、つまり病床稼働率低下につながります。

 このため病院としては稼働率を維持するために新規患者の獲得をしなければ経営が厳しくなってしまいます。では、どの程度の新規患者を獲得すれば病床稼働率を維持できるのでしょうか。

 GHCの湯原が試算したところ、「300床の病院が在院日数1日短縮による稼働率低下を避ける為には1か月当たり36人、年間では434人の新規患者獲得が必要」であることが分かりました。

300床病院が在院日数1日短縮による稼働率低下を避けるためには月36人(年434人)の新規患者獲得が必要

300床病院が在院日数1日短縮による稼働率低下を避けるためには月36人(年434人)の新規患者獲得が必要

 ここで留意しなければならないのが、7対1入院基本料を届け出るためには、現在、重症度、医療・看護必要度のA項目2点以上かつB項目3点以上の重症患者を常に15%以上入院させなければいけないという点です。つまり、新規患者は「重症患者」でなければならないのです。

 湯原は「重症な新規患者を獲得するためには、地域の医療機関との連携を進めることや、予防など早期に患者を獲得する方法の模索が必要」と述べますが、前述に示した数の重症新規患者の獲得は「至難の業」でもあると指摘しました。

 このため、新規患者獲得だけではなく「病床機能分化」の必要性を強調しました。機能分化をできるだけ早く進めなければ、他院も患者獲得を進めるため(地域に300床規模の病院が3施設あり、同様の行動をとった場合には、1か月当たり108人の新規患者を獲得しなければならなくなる)、地域での患者獲得競争が激化し、体力のない病院は経営が困難になってしまうのです。

 さらに湯原は、「機能分化の1つの選択肢として病床削減も考えなければならない」「最終的には、病院の再編統合も視野に入れる時代に来ている」と訴えています。

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解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門アソシエイトマネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。
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