高齢者への虐待の「兆候」をきめ細かく把握し、早期発見と迅速対応に努めてほしい―厚労省
2016.2.22.(月)
介護施設などにおける高齢者への虐待を防止するために、従事者の研修受講を促進するとともに、初期段階からの迅速な対応を心がけてほしい。また早期発見に向け「虐待事案の兆候をきめ細かく把握する」ことも必要である―。厚生労働省は19日に、通知「平成26年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査』の結果及び養介護施設従事者等による高齢者虐待の状況等を踏まえた対応の強化について」の中で、このように要望しています。
厚労省の調査では、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)や介護老人保健施設、介護療養型医療施設などにおいて、従事者による高齢者虐待が2014年度には300件認められ、前年度に比べて35.7%も増加していることなどが明らかになりました。
また報道されているように、有料老人ホームにおいて介護者が入所者を殺害した容疑で逮捕されるという事件も起きています。
厚労省はこうした事案について「決してあってはならない」ことと強調し、高齢者への虐待が発生した原因の分析や未然防止策の検証、虐待防止に向けた体制整備の充実・強化などに一層取り組むよう、自治体や介護事業所・施設に要望しています。具体的には、次のような取り組みが考えられます。
▽市町村などが、「相談・通報の受付窓口の設置・周知・閉庁時間の対応」「事実確認手順の標準化」「虐待判断・対応ケース会議の運営方法」「関係機関との連携協力体制」「法令に基づく権限行使に関する事務処理体制」などについて幅広く、定期的に検討する
▽虐待防止に向けた研修を積極的に開催・受講する
▽虐待事案の兆候をきめ細かく把握し、できるだけ早期に発見し、初期段階で迅速かつ適切に対応する(市町村において虐待防止対応の体制整備や相談・通報制度の周知を進めることで、高齢者虐待に対する認識が深まり、潜在的な虐待事案(通報されず、また高齢者自身が虐待を認識していないケースもある)を顕在化することができる)
▽情報提供者の属性(家族なのか、施設など職員なのかなど)によって情報の質が異なるので、「情報提供者自身による目撃なのか、推測なのか、誰かからの伝聞情報なのか」を明確にし、情報提供者からの聞き取りにあたっては、情報をできるだけ数値化して確認する(相談・通報から事実確認開始までの期間などを短縮でき、早期対応が可能になる)
厚労省は、「千葉県松戸市における高齢者虐待防止ネットワーク」や「神奈川県横須賀市における高齢者虐待防止事業」「東京都国分寺市における高齢者虐待防止ネットワーク」「新潟県における高齢者虐待防止ネットワーク」といった先進事例を紹介し、地域で参考にしてほしいと呼び掛けています。
このうち松戸市の事業では、地域住民や民生委員、ケアマネジャー、医師などを巻き込んで、虐待の予防、早期発見、早期対応、事例への支援などを行っており、「警察署との連携」や「緊急時には特別養護老人ホーム連絡協議会と連携した要介護高齢者の受け入れ」などを行っている点が特徴です。
また新潟県では、一般の県民を対象とした「ご近所安心見守り隊講座」や介護事業者などを対象とした「高齢者虐待防止サポーター育成事業」などを展開しています。