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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

定期巡回随時対応サービス、基本報酬の一部を加算化―厚労省提案、普及を後押し

2014.11.20.(木)

社会保障審議会・介護給付費分科会が19日開催され、2015年度介護報酬改定に向けた議論を行いました。この日は、「区分支給限度基準額」「介護職員処遇改善加算」「居宅サービス」などが議題になりました。

2014.11.19医療・介護行政をウォッチ 介護給付費分科会

11月26日に開催予定の次の会合では、「運営基準(省令)案に関する集中討議」を行う予定です。

これまで介護報酬改定においては、「運営基準」と「報酬(単位数)」をセットで諮問・答申していました。しかし、地方分権の推進に伴い「運営基準」の多くが市町村の条例に移管されていることから、この部分については前倒しで改定内容を固める必要があるためです。

加算部分は区分支給限度基準額の対象外に

介護サービスの中には、生活支援など「あれば便利」なものが多いため、利用に歯止めが掛かりにくいと指摘されます。このため介護保険制度では、居宅の利用者が1か月に利用できる公的介護サービスの上限額が要介護度別に定められています(区分支給限度基準額)。

上限額を超えるサービスを利用者が欲する場合には、「上限額までは介護保険を利用し、超過部分は全額自己負担」という“混合介護”が認められています。

ところで、小規模多機能型居宅介護や、2012年度改定で新設された定期巡回随時対応サービスや複合型サービスは、サービスの重要性が指摘されますが、なかなか普及していないのが実際です。

この要因の一つとして、「定期巡回随時対応サービスなどは報酬設定が高く、それだけで区分支給限度基準額いっぱいに近づいてしまう」ことが挙げられています。つまり、定期巡回随時対応サービスなどを利用すると、ほかに福祉用具貸与などを組み合わせた場合に区分支給限度基準額を超過してしまうため、定期巡回随時対応サービスなどの利用に二の足を踏んでしまう状況があるというのです。

そこで厚生労働省はこの日、定期巡回随時対応サービスなどについて、基本報酬の一部を加算に移管し、この加算部分を区分支給限度基準額の対象外としてはどうかと提案しました。具体的な考え方は次のようなものです。

  •  定期巡回随時対応などでは、通常の居宅サービスと異なり「利用者の生活全般に着目し、日ごろから主治医や看護師、ほかの介護事業者などの多様な主体と適切に連携するための体制構築」を行っていることから、これらの体制整備にかかわるコストを「総合マネジメント体制強化加算(仮称)として基本報酬から便宜的に切り離す
  • 「総合マネジメント体制強化加算」(仮称)については、定期巡回随時対応サービスなどの普及促進を図るために、区分支給限度基準額の対象外とする
  •  小規模多機能型居宅介護や複合型サービスで新設が検討されている「訪問体制強化加算」(仮称)や「看護体制強化加算」(仮称)についても、区分支給限度基準額の対象外とする

この提案には明確な反対意見が出ませんでしたので、15年度の報酬改定で見直される可能性が高いと言えるでしょう。

なお、ほかにも「介護福祉士の配置割合がより高い状況を評価するために、『サービス提供体制強化加算』に新区分を設ける」ことや、「特定施設入居者生活介護にも『サービス提供体制強化加算』を新設する」ことなどが提案されています。

介護職員処遇改善加算、次期改定以降も拡大して継続か

この日は、存続するかどうかが注目を集めている「介護職員処遇改善加算」も議題に取り上げられました。

介護職員については、一般的に「労働内容に比べて賃金水準が低く、これが職員の安定確保を阻害している」との指摘があります。そこで政府は、前々回(09年度)の介護報酬改定で、介護職員の処遇を改善するために3%のプラス改定を行いました。しかし、このときのプラス改定は処遇改善を要件としたものではなかったため、介護事業所などの経営は好転しましたが、介護職員の賃金は必ずしも上昇しなかったのです。

そこで、「介護職員処遇改善交付金」(補助金)が09年10月に創設され、いわば「介護職員の賃金上昇等を条件とした補助金支給」が行われました。

この交付金を加算に切り替えたのが、前回(12年度)の改定で設けられた「介護職員処遇改善加算」です。

ただし、この加算は「15年3月31日までの例外的、時限的なもの」と位置付けられました。前回改定では、介護職員の処遇改善策について、「基本報酬を引上げるべき」という事業者側の意見と、「処遇改善にダイレクトに結び付く加算を創設すべき」という従業者側の意見が対立したため、折衷案として「時限的な加算創設」に落ち着いたという経緯があります。

そのため、15年度の改定では、「加算を継続する」のか、それとも規定通り「廃止し、処遇改善については基本サービス費で評価する」のかなど、加算の取り扱いが大きなテーマになっています。

この点について厚労省は、「介護職員処遇改善加算」を継続し、かつさらなる上乗せ加算を新設してはどうかと提案しました。新たな上乗せ加算では、現在は「介護職員処遇改善加算」の選択要件(いずれかを満たせばよい)となっている「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備する」「資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保する」という2つの要件のいずれも満たすことなどが求められ、介護職員のさらなる資質向上、雇用管理・労働環境の改善を目指すものです。

現行の「加算(I)」よりも高い報酬が設定される見通しです。

この提案に対しては、「処遇改善は本来、労使間の交渉で決定されるべきだ。保険料を負担する事業主や従業員の理解は得られない」(本多伸行委員・健康保険組合連合会理事)、「新たな加算を設けるのであれば、少なくとも現行加算は規定通り廃止すべきではないか」(阿部泰久委員・日本経団連常務理事)といった反対意見も介護報酬の支払側から出されましたが、厚労省案を歓迎する意見が大勢を占めています。

12年度改定のときのようにこの加算を時限措置とするかどうかについて、厚労省老健局老人保健課の迫井正深課長は、「委員の意見を踏まえ、これから精査したい」とコメントするにとどめています。

ショートステイの緊急時受け入れ推進へ、厚労省案「静養室でも可能に」

この日は、居宅サービスについてもさまざまな論点(厚労省の提案する15年度改定内容)が示されました。サービスごとに、目立つものをピックアップしましょう。

◎療養通所介護

重度用介護者の送迎・入浴に複数人体制が敷かれている実態(送迎では74.9%、入浴では80.3%)を踏まえ、「個別送迎体制強化加算」(仮称)、「入浴介助体制強化加算」(仮称)の新設が提案されています。

◎短期入所療養介護

算定率の高い「リハビリテーション機能強化加算」を基本サービス費に包括し、この加算の要件の一つである「個別リハビリテーション計画策定」を「個別リハビリテーション実施加算」の要件に位置付けることが提案されました。

◎短期入所生活介護

12年度改定で新設された「緊急短期入所体制確保加算」を廃止する一方で、「緊急短期入所受入加算」の要件緩和・評価引き上げを行うことが提案されました。これらは、緊急時の受け入れを推進するために、短期入所生活介護(ショートステイ)に空床を確保し、さらに実際に緊急時受け入れを行うことを評価する加算です。

12年度改定では「空床がないために緊急時の受け入れができない。まずは空床を確保することが必要」という考え方に沿って「緊急短期入所体制確保加算」が新設されましたが、「空床を5%確保する」という要件が厳しく、利用率は芳しくないのが実際です。

この点について、厚労省老健局振興課の高橋謙司課長は「『緊急短期入所体制確保加算』は廃止するが、空床確保は重要なテーマなので、『緊急やむを得ない場合には、居室以外の静養室での受け入れを可能とする』ことをセットで提案している」と説明しています。

また、短期入所生活介護では「重度要介護者を受け入れ、かつ『看護体制加算(II)』を算定するなど手厚い健康管理・医療連携体制を敷いている事業所を評価する『医療連携強化加算』(仮称)を新設する」「30日を超える長期入所者については、基本報酬を特養ホーム並みに引き下げる」「ADL・IADLの維持・向上を目的として機能訓練を実施している事業所について新たな加算を設ける」ことなどが提案されています。

◎認知症対応型共同生活介護

夜間の支援体制を充実するために、「宿直職員による夜間の加配」を新たに評価してはどうかと提案されています(現在は、夜間における介護職員の加配を評価する「夜間ケア加算」のみ)。さらに「看取り加算の充実(日々の記録を多職種で共有し、利用者・家族への説明を適宜行うことを要件に、報酬を引き上げる)」や「ユニット数標準を3に引き上げ、市町村条例での弾力的運用推進」なども提案されました。

◎認知症対応型通所介護

認知症対応の拠点としての機能を強化するために「定員を1ユニット当たり3人以下」と見直すことなどが提案されています(現在は1事業所当たり3人以下)。

◎居宅介護支援(ケアマネジメント)

厚労省は、福祉用具利用のみのケアプランについて「業務負担が小さい」として、基本報酬の引き下げを提案しました。しかし、多くの委員が「業務負担が小さいといっても1割減程度で、報酬引き下げは好ましくない(齊藤秀樹委員・全国老人クラブ連合会常務理事)」「無理に他のサービスを追加するケースが出るのではないか(東憲太郎・全老健会長)」などと反発しています。

また、「地域に事業所が少ない」といった適切な理由なしに特定の事業所にサービスが90%以上集中する場合の「特定事業所集中減算」について、厚労省は「より公平・中立性を確保すべき」との考えから、対象の拡大(集中率の基準を90%より低くし、全サービスに拡大する)してはどうかと提案しました。

しかし、この提案に対しても鈴木邦彦委員(日医常任理事)らから「質のよいサービスを提供する事業所に集中するのはむしろ当然なのではないか」などの慎重論が出されています。

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