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2020 診療報酬改定セミナー 2020 診療報酬改定セミナー 運営会社 GLOBAL HEALTH CONSULTING

GHC湯原が2016年度の「患者数」「在院日数」を大解剖、両者を増やした病院、減らした病院のとるべき戦略は?

2017.2.27.(月)

 病床稼働率が下がると、人員配置は変わらないので総収益は減ってしまいます。このため、病院にとって病床稼働率は重要視しておかなければならない数値の一つです。病床稼働率低下が季節的なものか、突発的なものか、それとも競合病院、制度改定の影響なのかを見極め、病院経営を維持するための対策をたてる必要があります。

 「今年の夏は病床稼働率が予想外に低い。冬になって回復してきたものの、理由がわからない。」昨年(2016年)は、このような言葉を全国の病院で頻繁に耳にしました。2016年度診療報酬改定における重症患者割合の経過措置が切れる10月以降の影響について、冬期の稼働率を含めて検証するには2月後半が最適です。新年度になれば新入職員の対応をしなければならず、旧年度の振り返りを行う時間を確保することができないからです。

 では、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンにデータをご提出いただいている病院について、実際に症例数(患者数)と在院日数がどう変化したのか見てみましょう。

【データ期間】15年4月~12月、16年4月~12月
【対象病院】上記期間両方にデータ提出のある511病院(DPC導入病院)

オリンピックの影響はあったのか?

 まず、前年同月と比べた患者数の動向を見てみましょう。「夏のリオデジャネイロオリンピックを自宅でテレビを見ている高齢者が多かったために、体調不良を起こしにくかったのではないか」という噂も聞かれました。7対1、10対1一般病棟入院基本料を届け出ている病院の平均在院日数は15日程度であることから、この噂が事実であったならば9月の退院患者数が減っているはずです。しかし、数字を見ると9月の退院患者数は増え、10月に入ってからの落ち込みが大きくなっています。また季節的には農繁期の影響も考えにくい状況です。

 急性期に限らず各病院では、診療報酬改定の度に、在宅復帰を中心とした制度改正対応を進めており、在院(在所)日数の短縮と、それに伴う稼働率低下の影響を意識した動きは確実に起こっています。そのため、これまでと患者動向が変わってしまった可能性もありますが、詳細は急性期病院のデータからだけでは分析ができません。

 そこで、各病院では地域連携データ分析を進めると共に、連携病院・施設との連携強化をより強固なものにするほかありません。

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症例数は増えたものの稼働率が厳しい大規模病院

 次に、病床規模別に患者数と平均在院日数、病床稼働率の関係がどうなっているのかを見てみると、次のような状況になっています。

  • 200床未満:患者数微増。平均在院日数を伸ばす戦略で稼働率増加。
  • 200床以上300床未満:患者数微増。平均在院日数を0.17日短縮するも稼働に影響なし。
  • 300床以上400床未満:患者数大幅増加。平均在院日数を0.18日短縮
  • 400床以上300床未満:患者数増加。平均在院日数0.15日短縮も延べ在院日数増加。
  • 500床以上:患者数大幅増加。延べ在院日数大幅減少。

 200床以上の病院で平均在院日数が短縮していますが、診療報酬制度の影響や、病床稼働低下を補うために入院ハードルを下げた可能性もあります。さらに、疾患別受け入れ患者数を見るなどの分析を行う必要があります。

 また300床以上400床未満、500床以上では延べ在院日数が減少して稼働が低下する一方で、400床以上500床未満で稼働率(延べ在院日数)が高くなり明暗が分かれています。これまでと異なる戦略(DPC外病棟の導入)を取った病院が増えてきたとも考えられます。こちらもさらなるに検証が必要です。

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 実際に症例数増減と延在院日数増減を横並びにしてみると、500床以上の病院では症例数が増加した施設が最も多いにも関わらず、延在院日数が増加した施設が最も少ないことがわかります。

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状況に応じた戦略立案が病院の危機を救う

 こうした状況を踏まえた上で、各病院が、その立ち位置によってどのような戦略をとることができるかを考えてみましょう。症例数および在院日数増減による戦略の一例を考えてみます。各病院の置かれた詳細な状況によっても違いがでますので、あくまで一例としてご参考にしてください。

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◆右上の象限
 症例数、在院日数ともに増え、最も望ましい状況です。この象限に入っている病院数も多く、2016年度診療報酬改定の影響はあるかもしれませんが、全ての病院が対応することはできない「稼働率減少」には見舞われていないことがわかります。この象限に位置している病院であれば、在院日数短縮を行い、1日単価を上げることも可能です。クリティカルパスの見直しで診療内容を効率化し、さらに医業利益を増やすことを目指すべきでしょう。

◆右下の象限
 症例数は増えたものの、病床稼働率が下がっている病院です。その理由としては、▽想定以上に在院日数が短縮してしまった▽軽症の患者が多く集まってしまった―ことなどが考えられます。7対1入院基本料の施設基準を満たすために「在院日数短縮で重症度を維持せざるを得ない」ことと、「病床稼働率が低下してしまう」ことのバランスを考慮し、院内転棟を念頭に入れた病床管理戦略が必要となります。

◆左上の象限
 症例数は減ったものの、在院日数が伸びたことで病床稼働率が上昇した病院です。重症な患者に限定して入院誘導するようになり、在院日数が長くなったということであれば問題ありませんが、症例数が減り、単純に在院日数を伸ばしたということであれば、医療・看護必要度の項目変更が行われた場合に、一気に重症度基準が満たせなくなる可能性があります。地域における必要病床数を見極めた病床機能の見直し、地域連携の強化が必要です。

◆左下の象限
 症例数が減り、在院日数も減っている病院です。地域における発生患者数に比べて自院が持つ病床数が多すぎるか、地域における患者獲得競争に負けていることを意味しています。医業収益が落ち込んでいるため、新しい投資をすることができません。早急に現状を可視化し、病床数そのものを含め、地域における役割・機能の見直しを進めなければ、今後の診療報酬改定を乗り切ることは難しいといえます。

解説を担当したコンサルタント 湯原 淳平(ゆはら・じゅんぺい)

yuhara 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。看護師、保健師。
神戸市看護大学卒業。聖路加国際病院看護師、衆議院議員秘書を経て、入社。社会保障制度全般解説、看護必要度分析、病床戦略支援、地域包括ケア病棟・回リハ病棟運用支援などを得意とする。長崎原爆病院(事例紹介はこちら)、新潟県立新発田病院(事例紹介はこちら)など多数の医療機関のコンサルティングを行う。「週刊ダイヤモンド」(掲載報告はこちらこちら)、「日本経済新聞」(掲載報告はこちら)などへのコメント、取材協力多数。