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15年度介護報酬改定、1月9日に基準省令の諮問へ

2014.12.20.(土)

2015年度介護報酬改定に向けた議論が大詰めを迎えつつあります。19日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会では、これまでの議論を整理した「審議報告案」が厚労省から提示されました。

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社会保障審議会・介護給付費分科会(2014.12.19)

2025年には団塊の世代が後期高齢者となることから、これまでの分断された社会保障サービスを整理・統合し、医療・介護・予防・住まい・生活支援を包括的に確保する「地域包括ケアシステム」を構築することが喫緊の課題とされています。15年度の介護報酬改定では、この地域包括ケアシステムの構築に向けて、(1)中-重度の要介護者や認知症高齢者への対応のさらなる強化(2)介護人材確保対策の推進(3)サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築-という3つの柱が立てられました。

審議報告案に対しては、委員からさまざまな指摘があり、厚労省は年明け1月9日を予定している次の会合に修正案を示す考えです。運営基準の見直しに向けて条例を改正しなければならない市町村側の負担に配慮し、この日に運営基準省令に関する部分について諮問が行われる模様です。

各サービスがどのような方向で見直されるのか見ていきましょう。

 

処遇改善加算は継続して上乗せ加算を新設

14年度までの時限措置とされた介護職員処遇改善加算について、「継続し、かつ、さらなる上乗せ加算を新設する」ことが厚労省から提案されています。

新たな「上乗せ加算」では、現在、選択要件(いずれかを満たせばよい)となっている「職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系を整備する」「資質向上のための計画を策定して研修の実施または研修の機会を確保する」という2つの要件をどちらも満たすことなどが求められる見通しで、厚労省は介護職員のさらなる資質向上、雇用管理・労働環境の改善を目指しています。

介護職員処遇改善加算の見直しイメージ

介護職員処遇改善加算の見直しイメージ

また、「介護サービスの中心的な担い手は介護福祉士」との方向性が示されていることを踏まえ、サービス提供体制強化加算に介護福祉士の割合がより高い事業所を評価する区分が新設される見通しです。

両加算は区分支給限度基準額には含まれません。

 

重度者を多く入所させる機能強化型の介護療養を新設

◆介護療養型医療施設

介護保険施設に関しては、介護療養型医療施設の行く方が気になるところです。厚労省は、 「医療ニーズの高い中重度要介護者への対応が重要となる」「看取りやターミナルケアを中心とした長期療養や、喀痰吸引、経管栄養等の医療処置を担う機能は今後も必要である」といった意見が多いことを踏まえて、「療養機能強化型介護療養型医療施設」(仮称)という類型を新たに設けることを提案しています。

療養機能強化型介護療養型医療施設の新設イメージ

療養機能強化型介護療養型医療施設の新設イメージ

具体的には、次の5つの要件を満たした介護療養の基本報酬を高く設定するものです。

●入院患者のうち、「重篤な身体疾患を有する者」と「身体合併症を有する認知症高齢者」が一定割合以上

●入院患者のうち、「一定の医療処置を受けている人」が一定割合以上

●入院患者のうち、「ターミナルケアを受けている患者」が一定割合以上

●生活機能を維持改善するリハビリを行っている

●地域に貢献する活動を行っている

この提案に対して、平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長)や本多伸行委員(健康保健組合連合会理事)は、「介護療養を17年3月末で廃止する方針の下で、新たな評価類型を設け重点評価を行うことは、事実上の介護療養存続を表明すると考えられ、矛盾している」と述べ、反対姿勢を崩していません。

◆介護老人保健施設

在宅復帰を推進するために12年度の改定で導入された「在宅機能強化型」と「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」の報酬が引き上げられる見込みです。

また、利用者が入所した時から退所時期について積極的に相談している施設では在宅復帰率が高い点に着目し、厚労省は「入所前後訪問指導加算」の要件に次の項目が追加されることも提案しています。

●本人・家族とともに「生活機能の具体的な改善目標」を定めるとともに、退所後の生活についても、本人・家族の意向を踏まえ、施設と在宅の双方にわたって切れ目のなく支援するための計画を策定

●計画策定にあたっては、医師、看護職員、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)、ケアマネジャーとった多職種によるカンファレンスを行う

◆介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)

「終の棲み家」と称される特養ホームでは、看取りの強化がますます重要なテーマになっていきます。このため厚労省は、質の高い看取りを推進しようと、「看取り介護加算」の要件に次の項目を追加するとともに、報酬の引き上げを提案しています。

●入所者の日々の変化の記録を医療、介護の多職種が共有することで連携を図り、看取り期の早い段階から入所者・家族らの意向を尊重しながら、看取り介護を実施(入所者らへの説明などを文書で残すことなどが検討されている)

●この記録を使って、入所者・家族らに適宜説明

●看取り介護の体制構築・強化をPDCAサイクルにより推進

看取り介護加算の見直しイメージ

看取り介護加算の見直しイメージ

また、特養ホームでは経営状況が比較的良好な点を考慮し、基本サービス費が引き下げられる見込みです。

さらに、特養ホームでは▽入所期間が長い▽死亡退所が多く、生活の場となっている―といった点に着目し、所得が一定以上(市町村民税課税世帯・第4段階)の多床室の入所者に新たに室料負担を求める方針も示されています。

多床室の利用者負担の見直しイメージ

多床室の利用者負担の見直しイメージ

プライバシーに配慮した多床室について「高めの報酬区分を設定する」ことは提案されていませんが、厚労省老健局の辺見聡高齢者支援課長は、「今後、補助金なとを活用した財政支援を検討することも考えられる」とコメントしています。

 

定期巡回・随時対応、一部を限度基準額外に

定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能型居宅介護では、複数のサービスを包括的に提供することから基本報酬が高く設定されているため、区分支給限度基準額の上限いっぱいになってしまい、ほかのサービスと組み合わせて利用しにくいと言われています。これが定期巡回・随時対応サービスの利用が進まない一因であるとも指摘されます。

包括型サービスの報酬と区分支給限度基準額の関係

包括型サービスの報酬と区分支給限度基準額の関係

定期巡回・随時対応サービスと区分支給限度基準額の関係

定期巡回・随時対応サービスと区分支給限度基準額の関係

このため厚労省は、定期巡回・随時対応サービス、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護に名称が変更される予定です)、小規模多機能型居宅介護について、次のような見直しを提案しています。

●利用者の生活全般に着目し、日ごろから主治医や看護師、ほかの介護事業者など多様な主体と適切に連携するための体制構築を行っていることから、これらの体制整備のコストを「総合マネジメント体制強化加算」(仮称)として基本報酬から便宜的に切り離す

●「総合マネジメント体制強化加算」(仮称)は区分支給限度基準額の対象外とする

●小規模多機能型で新設する予定の「訪問体制強化加算」や、複合型サービスで新設予定の「看護体制強化加算」についても、区分支給限度基準額の対象外とする

このほか、▽定期巡回・随時対応サービスで事業所と同じか隣接する敷地のサービス付き高齢者向け住宅などの居住者では報酬を減額する▽複合型サービスで看護提供体制を評価した基本報酬の減算と加算を設ける▽認知症対応型共同生活介護で宿直職員による夜間加配を新たに評価する」「看取り介護加算の要件を強化し報酬を引き上げる―といった方向性が示されています。

複合型サービス報酬体系の見直しイメージ

複合型サービス報酬体系の見直しイメージ

 

認知症加算をケアマネ基本報酬に包括

居宅介護支援(ケアマネジメント)では、認知症加算と独居高齢者加算を基本報酬に包括します。辺見高齢者支援課長は、包括するにあたっては「財政中立とする」と説明しています。加算を基本報酬に振り向けると算定件数が増えるので、新たな基本報酬は、現在の「基本報酬+加算」よりも低くなると予想されます。

厚労省は当初、福祉用具のみの場合のケアプラン作成について報酬を減額すると提案していましたが、委員からの反対が強く撤回されました。

このほか居宅介護支援に関しては、次のような見直し方向が示されています。

●公平・中立性を確保するために、一部の事業所に偏ったケアプランを作成するケアマネ事業所の「特定事業所集中減算」について、適用要件をの明確化した上で、要件となる割合を現行の90%から引き下げ、対象サービスの限定を除外するという厳格化を行う

●質の高いケアマネジメントを推進するため「特定事業所加算」の人員配置要件を厳しくし、中重度者の利用者割合要件を緩和する

 

同一建物居住者への訪問サービスに減算規定を新設

訪問系サービスでは、共通する注目すべき項目があります。それは、訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応訪問介護、訪問看護、訪問リハについての同一建物減算の強化です。事業所と同じ敷地内にあるサ高住や集合住宅などの入居者にこれらのサービスを行った場合、現在は1か月当たりの利用者が20人以上なら報酬が10%減算されています。厚労省は、利用人数の要件を廃止し、「隣接する敷地内のサ高住等」も減算対象に含めるとしています。別の敷地のサ高住や集合住宅でも利用者数が一定以上の場合には新たに減算することも提案しました。いずれも「移動コストの効率化」を考慮したものです。

◆訪問介護

訪問介護については、新たに「20分未満の身体介護」を時間区分の一つに位置付け、要介護度に関わりなくサービスを受けられるようにしますが、概ね2時間以上の間隔を開けなければなりません。

ただし、定期巡回・随時対応サービスの指定を受けている事業所では、2時間以上の間隔を開けることなく20分未満の訪問介護を提供できます。この場合、利用者は要介護3以上か、「要介護1・2で、認知症などで短時間の身体介護が定期的に必要と認められる」人となります。また、短時間・頻回の訪問介護を定期巡回・随時対応に誘導していくため、20分未満の訪問介護利用者について、1か月当たりの訪問介護費は、定期巡回・随時対応サービスの単位数の範囲内に限定されます。

このほか訪問介護では、▽中-重度者を重点的に受け入れ、人員基準を上回るサービス提供責任者を配置する場合、特定事業所加算で評価する▽ヘルパー2級であるサービス提供責任者の減算割合を引き上げる▽リハ専門職と同行して訪問介護計画を策定する場合、生活機能向上連携加算の対象にする―方向性が示されています。

◆訪問看護

訪問看護では、医療ニーズの高い中重度者への対応を強化するために「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「ターミナルケア加算」のすべてを一定割合以上算定している事業所を、新たな加算で評価する方針です。

この提案は一見、「加算を加算で評価する」ように思えますが、厚労省老健局老人保健課の迫井正深課長は「あくまで体制を評価するもので、二重の加算を設けるものではない」と説明しています。要件となる加算は、いずれも医療ニーズの高い利用者へ質の高い訪問看護を提供する「体制」を評価しており、すべてを満たす場合には「より体制を充実した質の高いサービス提供を行っている」と考えられます。

また、▽病院・診療所による訪問看護の基本報酬を引き上げ▽訪問看護ステーションの理学療法士らによる訪問と、訪問リハの基本報酬の整合性を図るとしています。

 

生活期のリハビリ、生活機能向上を重視する体系に

通所系サービスに目を移しましょう。ここでは「送迎時の居宅内介助等を所要時間に含める」「延長加算の対象範囲を拡大する」「送迎を実施しない場合に減算を行う」ことが共通項目として挙げられます。

◆通所介護

通所介護サービスでは、認知症高齢者や重度者を積極的に受け入れ、介護・看護職員を指定基準よりも多く配置している事業所を加算で評価することや、個別機能訓練加算の算定要件に「居宅を訪問した上で計画を作成すること」を加え、評価を見直すことが提案されています。

さらに、改正介護保険法を含む医療介護総合確保推進法に、小規模通所介護を地域密着サービスに移管するとされたのに関連し、地域密着型通所介護の基本報酬について、管理的経費の実態を考慮した引き下げる予定です。

小規模通所介護の地域密着型サービス等への移行

小規模通所介護の地域密着型サービス等への移行

◆通所リハ

質の高いリハ提供を実施するために、通所リハと訪問リハで次のような提案が行われました。特に生活期のリハビリ体系について、身体機能中心から「活動」「参加」など生活機能を重視する体系に大きく見直されます。

●ケアマネや訪問介護など居宅サービス提供者が参加する「リハビリテーションカンファレンス」の実施・情報共有の仕組みの充実を評価する

●短期集中リハビリテーション実施加算を、早期かつ集中的な介入を行う部分への評価として基本報酬に統合し、見直す

●個別リハビリテーション実施加算を、短期集中リハビリテーション実施加算に統合し、長期間継続される個別リハは基本報酬に包括する

●認知症短期集中リハビリについて、状態に合わせた効果的な方法・介入頻度を選択できる新たな報酬体系を追加する

●生活行為の向上に焦点を合わせた生活行為向上リハビリを評価する新たな報酬体系を導入する

短期集中リハビリテーション実施加算見直しのイメージ

短期集中リハビリテーション実施加算見直しのイメージ

通所・訪問リハビリマネジメント再構築の全体像

通所・訪問リハビリマネジメント再構築の全体像

リハビリ機能の特性を生かしたプログラムの充実

リハビリ機能の特性を生かしたプログラムの充実

 

緊急時の短期入所推進のため加算の要件を緩和

短期入所系サービスでは、緊急時の短期入所を推進するために「緊急短期入所受入加算」の要件緩和と、単位数の引き上げが提案されました。また、12年度改定で導入された「緊急短期入所体制確保加算」は、要件が厳しくあまり利用されていないため廃止される見込みです。

緊急時の空床確保は重要なテーマなため、緊急で止むを得ない場合には、居室以外の静養室での受け入れを可能とすることも提案されています。

一方、30日以上の長期利用者については短期入所生活介護の基本報酬が減額されます。短期入所生活介護では、入所者の回転が速く、利用者管理の手間が煩雑と想定されるため介護老人福祉施設よりも報酬が高く設定されていますが、長期入所者についてはこの必要がないため、その分の減額という意味合いです。

 

特定施設入居者生活介護、重度者へのサービス充実を目指す

特別養護老人ホームの新規入所者が、原則として要介護3以上に15年4月から限定されるのを受け、特定施設入居者生活介護の役割がこれまでより拡大すると見込まれています。そこで厚労省は、「サービス提供体制強化加算」や「認知症専門ケア加算」の新設、「看取り介護加算」の充実を提案しました。

これらは要介護度が比較的高い利用者へのサービスを充実させる狙いですが、一方で、要支援2の利用者向けのサービスでは介護・看護職員の配置基準を現在の3対1から10対1に緩和し、報酬も引き下げてめりはりを付けています。

地域区分については、▽国家公務員または地方公務員の地域手当に準拠▽公務員の地域手当てがない地域については、「その他」(0%)を原則としつつ、隣接地域の状況を踏まえて対応できるようにします。自治体の意見を踏まえた上で、激変を避けるために必要な経過措置が設定される見込みです。

地域区分見直しの方向性

地域区分見直しの方向性