病院・診療所の訪看、介護報酬「増額」を明記-15年度改定の審議報告案
2014.12.19.(金)
社会保障審議会・介護給付費分科会は19日、2015年度の介護報酬改定に向けたこれまでの審議報告をめぐる議論に入りました。施設や訪問、通所などサービス形態ごとに見直しの方向性を整理したもので、訪問系のサービスでは、病院や診療所による訪問看護の基本報酬の増額を明記しました。また、施設系では介護療養型医療施設がカバーしてきた看取りやターミナルケアなどの機能を維持するため、重篤な身体疾患を持つ認知症の高齢者の受け入れが多いなど、高い機能を持つ施設向けの点数をつくって重点評価します。
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このほか、介護現場での人材不足に配慮するため、現行の「処遇改善加算」を維持するだけでなく、労働環境の改善に取り組んでいる事業所向けに新たな区分をつくり評価を手厚くします。
厚生労働省では、早ければ年明けの次の会合で正式な審議報告を取りまとめたい考えで、15年度の報酬改定をめぐる審議は大詰めの段階を迎えています。ただ、介護職員の処遇改善に介護報酬で対応することには、「処遇改善は元々、事業者の責任。これを国の支援に頼ること自体に無理がある」(阿部泰久委員・日本経済団体連合会常務理事)といった慎重論もあります。
厚労省が19日に提示した審議報告案は、▽報酬改定の基本的な考え方▽基本的な考え方を踏まえた具体的な改定内容▽サービスごとの報酬・基準見直しの基本的な方向▽今後の課題―の4本柱です。
それによりますと、18年度に予定されている診療報酬との同時改定を見据えて15年度には、中-重度の要介護者や認知症高齢者への対応などの強化を図る方向です。病院や診療所による訪問看護の強化もそのための具体策の一つで、高齢化の進展に伴って急増が見込まれるニーズに対応できるようにするため、基本報酬を増額してスタッフの育成を促したり、供給の拡大につなげたりする狙いです。
このほか、中-重度の在宅の要介護者に対応する訪問看護ステーションの体制を評価するため、新たな加算を創設します。厚労省では、「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算」「ターミナルケア加算」がそれぞれ想定している利用者への対応を念頭に置いていて、電話などによる常時対応可能な体制整備などを求めます。
一方、施設系では、介護療養型医療施設がこれまでカバーしてきた医療ニーズや看取りへの対応といった機能を存続させるため、▽重篤な身体疾患か身体合併症がある認知症の高齢者が一定割合以上いる▽一定の医療処置を受けている患者や、ターミナルケアを受けている患者が一定割合以上いる-などの施設を「療養機能強化型介護療養型医療施設」(仮称)として重点評価します=図=。
介護療養型医療施設は17年度末に廃止されることが決まっていて、現在では新設が認められていません。「療養機能強化型介護療養型医療施設」(仮称)の創設は、こうした方針を前提に医療ニーズが高い中-重度の要介護者への対応を促すのが狙いです。
施設系サービスではこのほか、介護老人保健施設による在宅復帰機能を一層強化させるため、理学療法士などのリハビリテーションスタッフの配置を適切に配置している場合に「在宅強化型基本施設サービス費」や「在宅復帰・在宅療養支援機能加算」の評価を手厚くします。